異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

2014-01-01から1年間の記事一覧

『売女の人殺し』 ロベルト・ボラーニョ

久々のバーチャル世界旅行(まだ一応あきらめてないシリーズ(笑) チリ生まれでクーデターに遭遇するなどメキシコやヨーロッパを放浪した作家。今回初読。特に面白かったものに○。 「目玉のシルバ」○ 中南米からヨーロッパを転々とする主人公は同じく転々と…

『全滅領域』<サザン・リーチ>1 ジェフ・ヴァンダミア

ジェフ・ヴァンダミアの名を初めて知ったのはSFマガジン2004年6月号のスプロールフィクション特集Ⅱだったと思う。このスプロール・フィクション、保守化していく主流派に対しジャンルを越境し革新を図っていく伴流<スリップストリーム>文学をギブスンのス…

第26回SFマガジン読者賞に投票

第26回SFマガジン読者賞投票した。 来年からSFマガジン隔月になるということで、ちょっと今回は区切りとしてなるべく読み切り作品を読んで投票してみることにした(もちろん誰に頼まれた訳でもないが(笑) なにはともあれ期限が近付いたのでとりあえず投函。気…

『白き日旅立てば不死』 荒巻義雄

ご覧のように古書の方を読んでの感想です。「ある晴れた日のウィーンは森の中にたたずむ」の長篇版という認識だったが、大分印象が違う。「ある晴れた~」は主人公と宿命の女ソフィーとの関係がルーレットによる確率性に翻弄され幻想的に歪んでいくウィーン…

映画『ホビット 決戦のゆくえ』『インターステラー』

2本観てきた。 (以下どちらも内容に触れるので未見の方はご注意を)『ホビット 決戦のゆくえ』 ホビット3部作のいよいよ完結編。『ロード・オブ・ザ・リング』3部作からずっと観る者を魅了し続けてくれたピーター・ジャクソン監督有難う!(感想終わっちゃった…

『みずは無間』 六冬和生

復活したSF作家の登竜門ハヤカワSFコンテスト第1回の大賞受賞作。 平凡な理系大学生である雨野透の人格が転写されたAIを搭載した無人探査機が宇宙を旅していく話。寂しい宇宙空間でまれに起こる他のAIとのコンタクトや退屈しのぎに行った一人遊びが気が遠く…

『向井豊昭傑作集 飛ぶくしゃみ』向井豊昭著 岡和田晃編

新進気鋭の評論家として多方面でに活躍の場を広げている岡和田晃さんとは当ブログ主は以前からやり取りをさせていただいておりSF関係のイベントなどでもお会いしているが、その岡和田さんが再評価に尽力をされているのが向井豊昭である。本書はその著作の一…

SFマガジン 2015年1月号

もう2015年の号か。来年から隔月化だそうで、購入しない時期もあったが初めて買ってから30年以上、毎月出ていたものが隔月になるの事には理由に関わらず寂しいもので、ちょっとショックを受けている。まあそれだけ時代も変わったということなのだろう。 特集…

『ジョン・バーリコーン 酒と冒険の自伝的物語』 ジャック・ロンドン

ジャック・ロンドン初読だが、これはなかなか困った本だ。 著名な作家にも関わらずろくに経歴も知らなかったのだが、かなり破天荒な人生を送った上に40歳で自殺しているようで、本書は自伝でありそういう意味では起伏に富んだ生涯がよく現れていて、個人的に…

<R.A.ラファティ生誕100年祭 一期一宴>@Cafe Live Wire に参加してきた

去る11月7日ラファティのトークイベントがあったの参加してきた。いつもながら備忘録的に簡易レポート。(ラファティは近年ようやく少しずつ楽しめるようになったかなーというブログ主なので、いつもよりさらに間違いがあるかも知れず悪しからず)。また話の順…

『新生』 瀬名秀明

同じ未来を舞台にしており、互いに関連がある連作短篇集。小松左京「岬にて」「虚無回廊」がモチーフということだが、前者は内容を思い出せず後者は未読でその部分はよく分かっていない感想になる。「新生」 震災後間もなく海外に発掘調査に行く研究者が一人…

『聚楽 太閤の錬金窟(グロッタ)』 宇月原晴明

元々あまり歴史に強くないのだが、NHKの軍師官兵衛を観ていてその頃の人物関係に多少知識がついてきて、あの時代を背景にした小説が前より楽しめそうだなあと思っていたら古書市で山田風太郎『妖説太閤記』とこの本が並んでいて、いそいそと購入。「秀吉の天…

『イースターワインに到着』 R・A・ラファティ

30年はいかないけど20年ぐらいは積んでいたかもしれない。 名うてのSF読み巧者の方々からラファティ凄い凄いといわれ、少しずつ翻訳が出てつき合ううちに遅い歩みながら良さがだんだん分かってきたというブログ主。ついに11月7日にはLive Wireでの生誕百年祝…

『罪と罰』 ドストエフスキー

たまには文学の古典を読もうのコーナー。 「鋭敏な頭脳をもつ貧しい大学生ラスコーリニコフは、一つの微細な罪悪は百の善行に償われるという理論のもとに、強欲非道な高利貸の老婆を殺害し、その財産を有効に転用しようと企てるが、偶然その場に来合せたその…

『ロボット刑事』全2巻 石ノ森章太郎

科学捜査が大嫌いな古株刑事の芝は特捜班としてロボット刑事Kと組まされるはめになる。当初はKを毛嫌いしていた芝だが、渋々ながらその実力を認めざるを得なくなる。やがて次々に訪れる殺人ロボットとKの間に人類の安全をおびやかす大きな謎が・・・。 TVド…

SFマガジン 2014年12月号<R・A・ラファティ 生誕100年記念特集>

予想をはるかに上回る大充実の特集だったので書影も大きくしてみた(笑) 誰でも楽しめるめちゃくちゃ面白い『九百人のお祖母さん』や名作短篇で不動のユーモアSF作家の位置を築きあげた一方で、人を人とも思わぬ残酷さと底知れぬ深淵さと放り投げた様な印象…

『フィーメール・マン』 ジョアンナ・ラス

フィーメール・マン (1981年) (サンリオSF文庫)=フィーメール・マン 数年前に初読、久しぶりに再読。 基本的には並行世界ものと言えるだろうか。ラジカルに男性原理を糾弾する内容でSF史に残る作品だが、その強烈なメッセージ性以前にニューウェーヴSFの時代…

『スニーカー』<ナイトヴィジョン> モダンホラーセレクション

1990年5月31日発行と書かれている。原書は1988年、NIGHT VISIONS 5とありググるとDark Harvest Booksから12まで出ているアンソロジー・シリーズだったんだね。基本3人の作家で作品数もバラバラという思いきったというかユルいところがちょっとユニークで、ハ…

『郵便局と蛇』 A・E・コッパード

郵便局と蛇: A・E・コッパード短篇集 (ちくま文庫)作者: A.E.コッパード,Alfred Edgar Coppard,西崎憲出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2014/09/10メディア: 文庫この商品を含むブログ (4件) を見る 独特な味わいで短篇小説の愛好家などの支持を集める幻想…

SFマガジン2014年 11月号<30年目のサイバーパンク>

ちょっと読書意欲が下がっており、リハビリを兼ねて雑誌短篇を読んでみた。S-Fマガジン 2014年 11月号 [雑誌]著者 : 早川書房発売日 : 2014-09-25ブクログでレビューを見る»特集”30年目のサーバーパンク”の短篇だけ読んでの感想。「パパの楽園」ウォルター・…

SFファン交流会゛徹底解剖! サンリオSF文庫”に参加してきた

毎月行われているSFファンの集まりSFファン交流会。プロの方々や様々な読書好きの方々が中身の濃いお話をフランクにたっぷりしていただける楽しい場で、時々参加させていただいている(若い方も結構多い)。今回は『サンリオSF文庫総解説』(以下『総解説』)が…

ありがとう、新橋文化

新橋の高架下にあった名画座新橋文化劇場が去る8月31日に閉館した。勤務先に近いこともあり、熱心な利用者ではなかったものの時々通った。特にここ1年ほどは(薄々気がついていたが閉館が決まっていたことも影響して)白黒映画など簡単には劇場で観られない渋…

『後宮楽園球場』 石川博品

イスラム帝国を模したと思しき架空の国の後宮に選りすぐりの美少女たちが皇帝の寵愛を争う野球リーグがある。覚え目出度き者は出世しあわよくば閨を共にする幸いに預かることも出来るのだ。そんな後宮に皇帝・冥滅(メイフメツ)への復讐を誓った一人の少年・…

<ヴァロットン展>@三菱一号館美術館

展覧会の<貞節なシュザンヌ>のポスターが印象的で観たいなー、と思っていたら先日テレビ東京の「美の巨人たち」に<ボール>が取り上げられていて番組も面白かったので観てきた。 → http://mimt.jp/vallotton/midokoro.html 近年俄かに注目度の高まった謎…

『残念な日々』 ディミトリ・フェルフルスト

ベルギーの作家による自伝的連作短篇集。 母親はとうに家を飛び出し、祖母と飲んだくれてばかりいる父親と右に同じく叔父たちに囲まれ暮らす少年の「残念な日々」のお話。 それぞれ単独の短篇として成立してはいるが基本的には一つの長篇と言えるだろう。(以…

『悪魔の涎・追い求める男』コルタサル短篇集

名前は前から知っていたが、読むのは初めて。特に面白かったものに○「続いている公園」切れ味の鋭いショートショート。 「パリにいる若い女性に宛てた手紙」○ 本当は君のアパートに越したくなかったんだ、という私信から始まる驚愕の兎小説。金井美恵子の「…

『砂男/クレスペル顧問官』 ホフマン

「砂男」 子供の頃に出会った怖ろしい砂男が大人になってまた近くにやってきた。寝しなに現れる砂男の伝説は古くから知られまたメタリカの傑作「エンター・サンドマン」にも登場し現代でも広く知られているが、本作は望遠鏡・実験器具・自動人形といった当時…

『アルベマス』 フィリップ・K・ディック

先日の『ヴァリス』でも話題に出ていた、いわば別ヴァージョンの『ヴァリス』。死後発見されたということで、本人としては納得できなかったものなのだろう。 フィル・ディックが主人公の一人ではあるが、話の中心はもう一人の主人公であるニコラス・ブレイデ…

『ヴァリス[新訳版]』 フィリップ・K・ディック

ヴァリス〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)作者: フィリップ・K・ディック,山形浩生出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2014/05/09メディア: 文庫この商品を含むブログ (14件) を見る さて『ヴァリス[新訳版]』の自分の感想も書いておくか。 周囲の人々の死をき…

<新訳「ヴァリス」三部作記念トーク>@Cafe Live Wire に参加してきた

ヴァリス〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)作者: フィリップ・K・ディック,山形浩生出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2014/05/09メディア: 文庫この商品を含むブログ (15件) を見る 次から次へとコアな読書系トークショーを仕掛けてくるCafe Live Wire。 先日のS…