異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。

2021年9月に読んだ本と読書会など

 なんとなく数年来(苦笑)たまっていた雑誌などを消化することが多いです。雑誌は全部読むのは大変なので、創作などそこそこ読んだものという感じ(それから、感想も随分前に読んだものが結構含まれてる)。
◇群像 2019年1月号
 ○フィクション
「命日」瀬戸内寂聴
 無論著名な作家だが、小説を読むのは初めて。明らかに自伝的な内容で、それを別な人物の視点で書かれている形式。短いこともあるが、意外とすんなり読ませる。とても100歳近い人の作品とは思えないね。ちょっと羨ましい。
「返信を、待っていた」笙野頼子
 身近な日常をベースに、現代をリアルタイムで描写していく形式。社会の背景に潜む欺瞞を余さずとらえる眼差し、そして舌鋒は鋭い。
「鏡」日和聡子
 日常的なシチュエーションだが、不安と期待が交錯している心理描写が巧みに描かれている。
「21ピース日曜日の人々<付録と補遺>」高橋弘希
 断章形式で、少女の不穏な日々の冒頭から、どんな結末になるのかと思いきや、意外とそちらがエスカレートしていくわけでもなく。うーむ何か読み落としているのかな。
「夜神楽の子供」小山田浩子
 地方と都市部の落差、純和的な伝統文化から過去への回帰とともにシームレスに非日常的な世界に入る。
「星に仄めかされて」(新連載)多和田葉子
 やはり独特な言語感覚のある人で、エッセイ含め、ユニークな作家であることがよくわかる。非日常的な設定の作品が多いらしいこともSF好きとしては惹かれる。
 ○ノンフィクション
『献灯使』全米図書賞翻訳部門受賞記念のエッセイ3本。英文学者や翻訳家が並ぶのは当然かもしれないが、多和田葉子のテキストをとらえるには重要なことであろう。
・檻の中のライオン 阿部公彦
 多和田自身に言及しながら、多和田文学の一筋縄ではいかない魅力を解説。つれしょんに訳語があったとは!
・死より詩をー多和田葉子の文章 都甲幸治
 言葉の<意味>が偏重され、直線的な論理に傾倒していく危うさを指摘し、抵抗する多和田文学の評価をする。
・パフォームする言葉たち 小澤英実
 多和田文学の持つ身体性を解説し、翻訳者の訳業についても触れている。
 ◎野間文芸賞野間文芸新人賞関連
・随筆 『草薙の剣』ー六人の主人公と七番目の男 橋本治
 受賞記念随筆。時代を分析する論考には陰りの見えていた橋本治だが、小説は読んでみてもいいのかなと思った。桃尻娘や源氏・平家(の一部)ぐらいしか読んでいないので。
・対談 小説世界をつくり出す架空の言葉たち 金子薫✖️高橋源一郎
 金子薫のことは全く知らなかったが、本人からディック、高橋源一郎から作品との比較で『この狂乱するサーカス』の話が出てて興味が出てくる。
他 大澤真幸の連載ドストエフスキー作品と資本主義などの分析があり興味深かった(作品自体ほとんど読んでないが)。
・ミステリマガジン 2015年 11 月号
 冒険・スパイ小説特集。様々な作家が思いのたけを披露していて、全くうといジャンルだったがなかなか面白かった。あと積んである『戦場のコックたち』深緑野分のインタビューが載っていて、読まなくてはと思ったり。
○フィクション
ガリンペイロ」船戸与一
 ブラジルで一攫千金を夢見る日本人の男。運命をかけ大きな影にでるが。初めて読むがやはり人気作家、面白かった。
「ベンツに乗った商人」ジョン・ル・カレ
 東独で亡くなった父を西側で埋葬して欲しいという遺言があったと連絡を受けた息子。遺体を引き取りに長い道のりを向かう。良質なミステリだか、いわゆる冒険小説に入るのかなこれ。
「夜の追撃戦」C・S・フォレスター
 第二次大戦を舞台にした海洋軍略もの。これはイメージする典型的な冒険小説だな。
SFマガジン 2004年5月号
 コニー・ウィリス特集。
「最後のウィネベーゴ」コニー・ウィリス
 同名の短編集も長年読み途中で、表題作までたどり着いていなかったが、本作を今回読んでみて、なるほどこんな話だったのか。ウィリスの犬愛が泣けるね。ウィルス感染による第二波、第三波といった用語が既に取り入られて、感性の鋭さを感じさせる。
白亜紀後期にて」コニー・ウィリス
 学園コメディ。恐竜の研究をしている古生物学科が、合理化の対象でひと騒ぎが起こるといういかにも現代的でここにもウィリスのセンスの確かさをみる。
・インタビュウ 死の真実を語る作家
<ローカス>誌2003年1月号初出
 死に対してのウィリスの考え方などがわかる。不死を買える財力を手にした金持ちの話というハクスリーAfter a Summer Dies the Swanは面白そうだな。
「生家の裏庭」ジェイムズ・P・ブレイロック
 訳者中村融による解説で、スチームパンクの作家とされてしまった不幸が指摘されている。本編はカリフォルニアを舞台にしたファンタシーを得意とする一面を現した作品というとのこと。やや願望充足的な側面はあるが、ディテールの書き込みが深みを与えている心地よい作品。父子の物語であるところがアメリカらしいかな。
文學界 2021年9月号
 ○フィクション
「少々を埋める」桜庭一樹
 作者が本作にたいする鴻巣友季子氏の文芸時評での言及に強い意を唱えたため騒動になった一作。まあそれはともかく、現在の中年女性を取り巻くあれこれがうまく表現されているように思う。レズニック「キリンヤガ」が引用されていろのは、共同体と女性抑圧といったものかテーマになっているためのようだ。(「キリンヤガ」探したけど見つかんねええ(苦笑)
武装市民」筒井康隆
 作者の従来の文体からあまり変わっていない印象の作品。小品でとりあえずの感想としては可もなく不可もなく。
「忸怩たる神」絲山秋子
 神が人の姿になって旅をしている短編。架空の土地名とかのんびりとした交流とか温かな空気感がある。
 ○ノンフィクション
・リレーエッセイ 私の身体を生きる 
連載第七回 私は小さくない 千早茜
 身長が高くないことによる世の中での扱いについての苛立ちが記されている。自分も身長が低い方なので、内容に共感するし、ましてや女性ではなおのことだろうと思う。近年著者は多少なりとも解放されたようで、素直に喜ばしく感じた。
阿部和重『ブラック・チェンバー・ミュージック』の謎 蓮實重彦/樋口恭介
 2つの評論が載っている。阿部和重はほとんど未読なのだが、ちょうど文學界2019年10月号の阿部和重小特集を読んでいたのもあって、読みたくなってきた。現代を様々な語りと重層的な構成による虚構でとらえ直すというのが面白そうだなと。
・「アルフレッド・ヒッチコック試論」阿部和重
 若い頃の評論をなるべくそのまま発表したということだが、『ブラック・チェンバー・ミュージック』とも関わるという一筋縄ではいかないところがある。階段とヒッチコックという切り口の評論としても多くの作品を解析したそれなりにボリュームのあるもので、読み応え十分(元々の映画の方も大分忘れてしまってるが)。
・新芥川賞作家関連
 新芥川賞作家、石沢麻衣・李琴峰のエッセイおよび作品に対する評論が載っている(倉本さおり、鴻巣友季子)。作品は未読だが、エッセイがいずれも外国文学が言及されていて興味がそそられる。特に李琴峰の台湾でも文学賞はとったものの成功にまではいたらず、日本語では初の単著が刊行できたという経歴や漢詩の部分とか、文学の持つ多面的な魅力を感じさせる。
文學界 2021年9月号
○フィクション
「少々を埋める」桜庭一樹
 作者が本作にたいする鴻巣友季子氏の文芸時評での言及に強い意を唱えたため騒動になった一作。まあそれはともかく、現在の中年女性を取り巻くあれこれがうまく表現されているように思う。レズニック「キリンヤガ」が引用されていろのは、共同体と女性抑圧といったものかテーマになっているためのようだ。
武装市民」筒井康隆
 作者の従来の文体からあまり変わっていない印象の作品。小品でとりあえずの感想としては可もなく不可もなく。
「忸怩たる神」絲山秋子
 神が人の姿になって旅をしている短編。架空の土地名とかのんびりとした交流とか温かな空気感がある。
○ノンフィクション
・リレーエッセイ 私の身体を生きる 
連載第七回 私は小さくない 千早茜
 身長が高くないことによる世の中での扱いについての苛立ちが記されている。自分も身長が低い方なので、内容に共感するし、ましてや女性ではなおのことだろうと思う。近年著者は多少なりとも解放されたようで、素直に喜ばしく感じた。
阿部和重『ブラック・チェンバー・ミュージック』の謎 蓮實重彦/樋口恭介
 2つの評論が載っている。阿部和重はほとんど未読なのだが、ちょうど文學界2019年10月号の阿部和重小特集を読んでいたのもあって、読みたくなってきた。現代を様々な語りと重層的な構成による虚構でとらえ直すというのが面白そうだなと。
・「アルフレッド・ヒッチコック試論」阿部和重
 若い頃の評論をなるべくそのまま発表したということだが、『ブラック・チェンバー・ミュージック』とも関わるという一筋縄ではいかないところがある。階段とヒッチコックという切り口の評論としても多くの作品を解析したそれなりにボリュームのあるもので、読み応え十分(元々の映画の方も大分忘れてしまってるが)。
・新芥川賞作家関連
 新芥川賞作家、石沢麻衣・李琴峰のエッセイおよび作品に対する評論が載っている(倉本さおり、鴻巣友季子)。作品は未読だが、エッセイがいずれも外国文学が言及されていて興味がそそられる。特に李琴峰の台湾でも文学賞はとったものの成功にまではいたらず、日本語では初の単著が刊行できたという経歴や漢詩の部分とか、文学の持つ多面的な魅力を感じさせる。
◆『三体Ⅲ 死神永生』上・下 劉慈欣
 最初どんな話だったっけ??となるぐらい次々と思いがけない方向に展開する第三部。そしてスケールが極大なところまで広がる。全体に、壮大なスケールの世界とごくごく小さな個人の運命や思いを対比が実にうまい。その対比の妙を演出するためによく考えると無茶な話になっているのだが、そこを膨大な情報量とイメージ喚起力でなんとなく納得させてしまう劉慈欣恐るべし。そして極大と極小が出会うダイナミズムがSFの魅力であり、そのツボを押さえていることが最大の魅力だろう。で、この本がお題の名古屋読書会にも参加予定です。

 さて読書会といえば、若島正先生の読書会にお邪魔している。ナボコフ短篇読書会「移動祝祭日」で、日本語テキストの作品社『ナボコフ全短篇』 が下敷き。翻訳読みで参加できるのだ。たしか元々は大学でのゼミといった形がベース。それを2018年から全国に拡大し、巡回していったもの。若島先生の大ファンとしては、なかなか近所に来ないのでもどかしく思っていたが、ついに第6回目の読書会が東京に来たので参加。各回でお題の短篇を選ぶ発題者がいて、概要やポイントを説明してくれるのだが、なんとこの回は佐藤亜紀先生。終了後の「金魚坂」での懇親会含め、実に楽しかった。本格的な文学関連の読書会はほぼ初めて、またメンバーもプロの方が大勢というものだったが、そこは昔からの習性で(笑)、好奇心に任せて突撃しました。いやそんな大げさな話ではなく、一般読者もまた普通に参加していて、プロの方もフランクにいろいろ教えてくれるのですよ。しかしこのコロナ禍。どうなるかと思いきや、オンライン読書会に変貌。逆に参加しやすくなり、以後も参加。ということなのだが、本来触れなければならない濃い中身に関するまとめは・・・少々難題なのでとりあえず、備忘録的に日程と印象に残った視点をちょっとだけ。
・2019年11/16 第6回「レオナルド」(東京) 亡命人社会での体験が反映か。冒頭徐々に舞台や小道具が組み立てられるような表現の面白さ。
・2020年9/12 第7回「北の果ての国」(オンライン) オルフェイスもの。魂の抜けた、骨抜きのファルテル。
・2020年12/5 第8回「ランス」(オンライン) 火星が舞台?(二のところだったと朧げな記憶)。望遠鏡小説。登山とナボコフ。若島先生から「ナボコフ としては『こっちに帰ってくる』珍しいもの。『透明な対象』との重なり。ロマンティックサイエンスで、ラヴクラフトとの共通性」
・2021年3/20 第9回「けんか」(オンライン) 19世紀の小説とは違う、モダニズム的な側面。人間を機械のようなものとしてみる(素材として扱う)。
・2021年9/18 第11回「フィアルタの春」(オンライン) 湿潤な空気感のフィアルタとニーナの共通性。サーカスのイメージが次第に迫ってきてラストにつながる。チェーホフ「犬を連れた奥さん」との関連。
実は調子に乗って、原文を扱う読書会にも参加したのだった(苦笑)。
・2021年3/21 Gene Wolfe読書会 課題作品"The Tree Is My Hat" 翻訳の「木はわが帽子」のタイトルの意味がわからなかったもので。これも自分で読んだだけではわからないほどに奥行きのある作品だったなあ。正直なところ筋を確認するのがやっとといった体たらくだったが、いろいろ得るところは大きかった。タイトルの意味もつかめたし。オンラインありがたい。