実は体調不良が続き読書もさっぱり(大病というわけではありません)。
ということで場つなぎ投稿。
SFマガジン2025年2月号で発表される「2025オールタイム・ベストSF」の投票結果を公開。
簡単に概略だけ説明すると、投票が行われるのは
1.国内長篇ベスト5 2.国内短篇ベスト5 3.国内作家ベスト5
4.海外長篇ベスト5 5.海外短篇ベスト5 6.海外作家ベスト5
の6部門。
集計は1位10点、2位9点、3位8点、4位7点、5位6点とし、各得点数の総計で順位をつける。
(10/15締め切り済)
1.国内長篇ベスト5
1位『日本アパッチ族』小松左京
2位『ハーモニー』伊藤計劃
3位≪廃園の天使≫シリーズ 飛浩隆
4位『マインドイーター』水見稜
5位『妻の帝国』佐藤哲也
2.国内短篇ベスト5
1位『五色の舟』津原泰水
2位『X電車で行こう』山野浩一
3位『遠近法』山尾悠子
4位『赤い酒場を訪れたまえ』半村良
5位『平成3年5月2日,後天性免疫不全症候群にて急逝された明寺伸彦博士,並びに,』石黒達昌
3.国内作家ベスト5
1位 山野浩一
2位 山尾悠子
3位 伊藤計劃
4位 飛浩隆
5位 鈴木いづみ
4.海外長篇ベスト5
1位『ソラリス』スタニスワフ・レム
2位『高い城の男』フィリップ・K・ディック
3位『結晶世界』J・G・バラード
4位『闇の左手』アーシュラ・K・ル・グィン
5位『双生児』クリストファー・プリースト
5.海外短篇ベスト5
1位『デス博士の島その他の物語』ジーン・ウルフ
2位『しあわせの理由』グレッグ・イーガン
3位『息吹』テッド・チャン
4位『時は準宝石の螺旋のように』サミュエル・R・ディレイニー
5位『接続された女』ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
6.海外作家ベスト5
1位 サミュエル・R・ディレイニー
2位 ジーン・ウルフ
3位 アーシュラ・K・ル・グィン
4位 スタニスワフ・レム
5位 トマス・M・ディッシュ
となった。
2014年以来10年ぶりとなったが、あまり変わらず。進歩がないなと思いつつ、自分を飾るような年でもない。とにかくこんなもんです。
今回の気分としては、その後の影響を重視したという感じ。もちろんあくまで「当ブログ犬が重要と思う」SFの潮流に大きく影響を与えた作品、という視点。
国内部門では、近年の岡和田晃さんの研究(THの連載である評伝「山野浩一とその時代」、山野浩一作品の再刊における解説群)から、より山野浩一の日本SF史での重要性が明らかになり、その分第一世代の著名作家たちの限界も時代と共に見えつつあることを考慮した。その意味では山野浩一と山尾悠子が特異的な位置にあると思う。そうなると安部公房をどう位置付けるかがポイントとなる気がしているのだが、残念ながら今回はそこまでの読書が追いつかなかった。こうした視点を踏まえて、第一世代本流の小松左京が1位でよいのか最後まで迷ったが、諷刺文学と科学小説の融合という文学実験のいち早い試みが日本SF誕生とリンクしているのではないかという従来の考えを変えるにはいたらず、結局前回と変わらず1位とした。諷刺文学としてのSFという意味で佐藤哲也作品も挙げた。
『赤い酒場を訪れたまえ』はたしかに半村良作品の中では傑出したものとはいい難いのは事実だが、虐げられたものに目を向ける一連の作品群の原点となるものとして挙げた。想像しえないのものを想像しようという水見稜の挑戦には敬意を表し、現代においても科学と生命に真摯に対峙するというオーソドックスなアプローチからこれだけスペキュラティヴな作品をつくることができるのだということを示した石黒達昌にも投票した。(作家部門は結局ファン投票なので単に好きな人に入れただけ)
海外部門、どう考えても1位『ソラリス』なのはさておき。SFジャンルを超え<改変歴史>という視点を(シンプルな歴史シミュレーションという概念以上のものとして)広く定着させた『高い城の男』を挙げた。国内作品よりは海外作品を読んできた10年と思うが、結局同じような作品ばかりになっていることについては感性の衰えかもしれず少々自分に幻滅を感じてもいる。
『デス博士の島その他の物語』はいろいろ考え最終的に素直な気持ちに従い1位に。やはりこの作品には、フィクションというものをなぜ人々が必要としているかが書かれているからである。ディレイニーは今回は『時は準宝石の螺旋のように』を選んだ。内輪の用語でダブルミーニングを多用するブラックミュージックの文化を、暗号SFとして表現するというという先駆性は特筆すべきものがある。ティプトリーもポップスターを扱いサイバーパンクを予見ということで(意外性皆無だが)『接続された女』を挙げた。
あとはおまけ。今回の投票で追加の質問と答え。
・〈SFマガジン〉 でいちばん印象に残っている号(あるいは作品名、特集名)を教えてください。
答え: 2002年5月号 アンソロジー特集
・〈SFマガジン〉を定期購読されている方は、何年何月号からお読みいただいていますか。
答え: 最初に購入したのは1980年5月号。1998年ごろから定期購読に近い状況
・あなたとSFとの出会いは?(最初に読んだ作品など)
答え:中学受験準備の国語テストで出題された星新一
・好きなSFの映画、コミック、アニメ、ドラマ、ゲームなど
答え:ブレードランナー マタンゴ タイム・アフター・タイム
・登場してもらいたい作家名など、〈SFマガジン〉へのご要望があればお書きください。
答え:アフロフューチャリズム アラン・ムーア 改変歴史SF SF詩 ジェンダーSF ホラーSF スリップストリーム
あと過去のオールタイムベストSFの記事も出しておくか。
SFマガジン関連。
まずは旧ブログの2006年版について。
funkenstein0.hatenablog.jp
2014年版に関する記事3つ。
funkenstein.hatenablog.com
funkenstein.hatenablog.com
funkenstein.hatenablog.com
おまけのおまけ。本の雑誌版オールタイムベストの読了度調査。2009年なんだけどまだリンク先生きているね。エライ!
funkenstein0.hatenablog.jp