異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

メモ書き(Babylon Sistersを聴いて)

 もう何度聴いたかわからない、スティーリー・ダンの”Babylon Sisters”がレゲエだったことに、気づいたのはつい昨年のことだった。
 で、また遅ればせながら、タイトルもラスタファリアンっぽい用語だと気づく。
 なんとも気だるい曲調にそこはかとないドラッグ(cotton candy)とエロティシズム(タイトルに加え、love's not a game for threeってねえ)の退廃を匂わせる歌詞(as he watches his bridges downでpoint of no returnとくる)、いかにも当時の米西海岸といった感じ。
 なのだが、そう見せかけて、ラスタファリアン文化への憧憬だったりしないかな。
 まあ曲者だからな、ン十年経ってもあれこれ考えさせられるわ。
※Sunday in T.J.という歌詞のT.J.については、ロサンゼルスにほど近いTiajuana(ティフアナ)ではないかと書いてある掲示板があった。→
https://www.songfacts.com/facts/steely-dan/babylon-sisters

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メジャーリーグの想い出

 なんだか今日も横浜軍はひどい試合をしたようで。

 ともかく投手力を整えないとまともな試合はできないし、勝ち星も増えないよね。

 それはともかく今回はメジャーリーグの話。

 メジャーリーグの情報、今では簡単に入手できるが、以前はそうでもなかった。

 なので、気まぐれなたちであることもあり、ずっと熱心に情報を追ってきたわけでもない。

 しかしまあまあ昔からの事は知っている。

 その原点は子ども時代。小学1年生の時に父の仕事でニューヨークに行っていたことにある。応援していたのはヤンキースではなく、メッツであった。

 今でもメッツ贔屓なのは、その流れだ。

 ちなみに日本と学校のスケジュールがずれているので、アメリカの小学1年生を過ごしたという事が、日本の学校の期間は(つまり日本にいなかった時期は)小学1年生の夏から小学2年生の夏前までという事になる。

 となると(年がばれるが)、1973年の夏から1974年の夏前くらい。

 今は便利なもので、昔の情報も(ジャンルによっては)入手しやすい。

 すると、なぜヤンキースではなくメッツのファンになったか少しわかった。

 これまで考えていた最大の理由は球場の立地。

 これは家族でも話題にしていた記憶があるのだが、ヤンキー・スタジアムは治安のよろしくないところにあり、きれいな公園内(フラッシング・メドウ・パーク)にあったメッツの球場シェイ・スタジアムは行き易かったというのが一つ。

 シェイ・スタジアムは、外国人が住み易く自分たちも住んでいたクイーンズにある。近いということでもある。

 ちなみに今回ちゃんと確認したらヤンキー・スタジアムはブロンクス。それは行けないわ・・・(新しい方もブロンクスなんだけど、そうした雰囲気はかなり変えたんじゃないかなと思う)。

 しかし、よく調べたら、それだけではなかった。

 実は当時のヤンキースはあまり強くなかったのだよね。低迷期。

 ワンマンで悪名をとどろかせたスタインブレイナーが、1973年1月に買収。

 そこからビリー・マーチンを監督にして、二人の何とも言えない奇妙な関係が続くことになる(チームは強くなるが、二人はたびたび衝突し、何度も解任したり就任させたりした)。

 だからまだヤンキースは再建期だったのね(1965-75年が冬の時代とされているようだ)。

  一方メッツは当時、創立ようやく10年経った新米チーム。ただ1969年にミラクル・メッツでワールドシリーズ制覇。その後は5割程度だが、フレッシュな印象があったはずだ。

 日本のwikiでの簡単な調べだが、驚くなかれ、その辺りの時期は、観客動員でメッツがヤンキースの倍である(まあ、数年後ビリー・マーチンの手腕と大型補強でまた強くなると、あっさりメッツは置いてきぼりをくらうのだが)。

 そうしたちょっと珍しい時代にニューヨークに居たことで、影響を受けるものなんだね。巡り合わせというのはなかなか面白いものだ。

 ちなみに当時好きだったのはフェリックス・ミヤーン旧ブログで話題にしたことがあるが、長打力のない安打製造機型のプエルトリカン内野手である(その後、奇しくも横浜大洋ホエールズにやってくることになる)。

 もちろん当ブログ主は、長年ホエールズベイスターズファンなんかをやっている人間だから、王道のものに惹かれない質なのは認めるが、これにも少し理由がある。

 実はメジャーリーグ通の知り合いによると、メッツは歴史的に投手型のチームで(今もデグロームがNo.1のスターだ)、ミヤーンでも野手ではそこそこのヒーローだったのだ。野手のように常時出ている人の方がなんとなく印象に残るし、自分がチビだったこともあり、大柄なパワーヒッターより小柄で機敏な選手が好きだったんだよね。

 最後に昨年実家を整理したら出てきた当時のサインボール。当時の主力投手ジョン・マトラック(Jon Matlack)の名前があるのでやはりメッツのだなあと思って、この向きで撮影した。ところが、今回よく見ると、その下で逆向きになってるのが、昨年亡くなった殿堂入り大エーストム・シーバー(Tom Seaver)なんじゃないかという気がしてきた(笑)。なかなかのお宝(?)かもね。

 

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さて今後のベイスターズ

 例によってダメなときしか更新しないベイスターズネタ(苦笑)。
 まあ、いいときは特にいうことはないのでね。
 交流戦になってちょっといい感じではあった。
 完全に終わったかと思っていたので、そこは見込み違い。失礼いたしました。
 しかし結局打線と献身的に投げてる救援陣でなんとか頑張っているといったギリギリの状態なのよね。
 まず普通に考えて、チーム防御率酷過ぎで話にならないでしょう。
 とりあえず救援陣は置いておいて、先発陣の充実が不可欠なんだが、平良がトミージョン手術で離脱、もしかしたらの期待をかけていたピープルズが連続KOで早々の降板、相変わらず先発は全然足りない状態。
 さらに2軍で待機している、ということでもない感じなのよね、先発候補はいても1回序盤に失敗した連中ばっか。
 ということで、楽観的にいってもしばらく先発が整うことはなさそうだし、そのうち救援陣も疲労で崩壊しそう。いくら風向きが変わっても、上位進出は無理なんじゃないのかなあ。
 目標は100敗回避、あわよくば最下位脱出といったあたりか。
 打線が好調なら100敗回避はいけるんじゃないかな(投げやり)。
 オフもいろいろ大変そうだなあ。
 本来は野手の補強をしないといけないのだが、投手で手一杯になって、しばらく厳しいシーズンが続きそう。
 いやあよく監督なんて職業をやるよな、とついつい思ってしまうのだった。

 

丸屋九兵衛トークイベント 万物評論家のゴールデンウィーク

ゴールデンウィークは大分過ぎてしまいましたねえ(苦笑)。
また備忘録的に。
・【Q-B-CONTINUED vol.55】史上最強の赤字映画たち。可笑しくて、やがて愛しきハリウッド迷作リスト
 赤字の規模の大きさに頭がクラクラするが、新しく知る作品が多くて面白かった。ただ野次馬的には赤字で会社がどうなったかの話も聞きたかったなあ。
・【Q-B-CONTINUED vol.56】#StopAsianHate 世界に生きるアジア系移民。エイジャン・ディアスポラの物語
 沢山の知らない人が登場し、情報量がさばききれなかったというのが本年のところだが、多様なルーツのエイジアンが様々な分野で活躍しているのだなあ。
ポピュラー文化等で活躍する人々を紹介したこの本はとりあえず面白そうだ。
・【Q-B-CONTINUED vol.57】メーガン妃に捧ぐダーティ・ロイヤル・スキャンダルズ! 21世紀の王室、現代君主たちの真実
 王室といってもほんとうにいろいろなんだなあ。さすが丸屋さん、これからの社会を考える上でも手掛かりになるね。積んでる『ダイヤモンド・エイジ』(丸屋さんの予想する社会が描かれているという)を読まないとな。
・【Q-B-CONTINUED vol.58】ゴジラvsコングに至る道。素晴らしき特撮映画の世界
 特撮映画(TV含む)の歴史。意外にも丸屋さんイベントではストレートな特撮特集は初めてかも。とにかくいろんなものがあるのだなあというのが一番の感想。日本の特撮もので少なそうな人形アニメーションとか。しかしまあ(やはりだけど)いわゆるメジャーな特撮シリーズもちゃんと観てるのねえ。観た上で敢えてメジャー系は(気に入ったものしか)扱わないのが丸屋流ね。

2021年5月に読んだ本

 体調の方は横ばいですね。
 正直いろいろ困ったことになりました。
 それはともかく読んだ本について。
                                                       『変愛小説集2』
 1の方は未読。まあ野生のチアリーダーの作品が読みたくて購入(笑)。
「彼氏島」ステイシー・リクター
 いい男をとっかえひっかえできる夢のような島に漂着した女性。願望充足的妄想が日常性と陳腐さをともない笑いを誘う。
スペシャリスト」アリソン・スミス
 体(というかこれは局部だろう)に<荒涼として広大で何もない>場を抱えてしまった主人公。序盤のややユーモア含みのテイストが終盤になり、今度は日常の呪縛から逃走するような展開となる。多様な読み方ができそうな作品。
「妹」ミランダ・ジュライ
 妹を紹介するといわれたが、なかなか会えない。ちょっとしたシチュエーションから思いがけない展開。読者を惹きつけていく技巧があり、初読になるが、人気があるのがよくわかる。
「私が西部にやって来て、そこの住人になったわけ」アリソン・ベイカ
 かれこれ10年ほど<野生のチアリーダー>小説の存在を耳にして、さらに入手してからももう何年も経ったが、ようやく読了。伝説のような存在である<野生のチアリーダー>を求める者たちの西部劇っぽいハードな前半から、後半はじんわり胸に迫る熱い展開となる。意外なことに、いい話だったのである(笑)。
「道にて」スティーヴン・ディクソン
 女を連れて歩き続けている男の独白という形式で、早々に少し変なことがわかる。小品だがこれも不気味な味が良い。
ヴードゥー・ハート」スコット・スナイダー
 恋人と愛し合いながらも関係を壊したくなる衝動を覚える男。二人の生活する家の近くに女性受刑者の収容所があり、そこを覗いているという変わった設定が<変愛>要素だが、どちらかというと王道的な普通小説。傑作。
「ミルドレッド」レナード・マイケルズ
 短い作品で、男女の会話の中に暴力的・抑圧的だったりあるいは非日常的だったりする要素が取り込まれ、違和感を生じさせている。
「マネキン」ポール・グレノン
 ある日、妻が木でできたマネキンだと気づいた男。どことなくマコーマックやエヴンソンを思わせる。ただ解説にあるwoodenの意味(無表情の、虚ろな、生気のない)を考えるともう少し二人よりは現実的な風刺要素が強いのかもしれない。
「『人類学・その他一○○の物語』より」ダン・ローズ
 キイワードに従い断章形式で語り手と女性の関係が描かれるややナンセンス風味のある作品。語り手も女性もどこか箍のゆるんだ人物ばかりでところどころ声を出して笑った。
「歯好症(デンタフィリア)」ジュリア・スラヴィン
 体じゅうに歯が生える病気に罹った彼女と語り手の関係が描かれる。一つ前のダン・ローズの作品と違い、奇妙な出来事の中にも二人の心の交流が描かれる、しんみりとした味わい。
「シュワルツさんのために」ジョージ・ソーンダーズ
 脳科学技術が進展した未来を舞台に、妻を失い絶望した男に起こった出来事をつづる、SFの範疇といえる作品。ソーンダーズはたぶん初読。SF要素としがない男の日常とのコントラストが効果を生んでいて楽しめた。他も読んでみたくなる。
                                                      『ナイトランド・クォータリー 新創刊準備号 幻獣』
 2014年12/11発行、新創刊準備号。巻末には2012年3月〜2013年9月のナイトランド第1号〜第7号の紹介あり。準備号で少し短めの頁数だが、内容は充実。
○フィクション
「白澤の死」立原透耶
 中華神話系キャラクターによるマーダーミステリーとは見事なセンス。面白かった。
「驚異の部屋」石神茉莉
 父の残した秘密の部屋。ウンダーカマーがモチーフというのが魅惑的で、ラストも鮮やか。
「血の城」間瀬純子
 架空の国の姫と宦官の運命を描く。耽美的でグロテスクな世界を現出させていて読み応えあり。
「聖アントワーヌの変奏」井上雅彦
 ショートショート三作のオムニバス。小松左京のストレートなオマージュはじめ、短い中に三作三様の幻獣のヴァリエーションはさすが。
・藤原ヨウコウ幻想絵巻 「ダゴン」H・P・ラヴクラフト
植草昌実による新訳と解説。解説もあり、ラヴクラフトの描こうとしたものがわかる。
○ノンフィクション
・幻獣ブックガイド 植草昌実
 通りいっぺんな内容になっておらず、知らない本も多く、大変参考になった。
・幻獣的オブジェたち〜マンタム、大田翔、林美登里り
 幻獣に魅せられたアーティストが多いことがよく分かり、楽しい。
アメリカの「幻獣」たち〜恐竜、インディアン、海賊 徳岡正肇
 特異な国アメリカと幻獣という切り口でなかなか新鮮だったが、タイトルの恐竜については写真はあるものの言及は最後のまとめの部分のみ?
『ナイトランド・クォータリー vol.14 怪物聚合〜モンスターコレクション』
 モンスター特集。
○フィクション
「副葬品」ジェマ・ファイルズ
遺跡発掘もので、メンバーが女性のみという設定はフェミニズム的な視点でホラーを見直すという近年の動きを感じさせる。
「空腹」スティーヴ・ラスニック・テム
 本誌によく登場する作家だが、これも母-息子関係を背景にした手触りがよく出てるホラー。
「生き残ったもの」ジャック・ロンドン
 マンモスということでUMAものとなるが、ジャック・ロンドンのセンスもなかなか楽しいな。
「侵入者たち」リサ・タトル
 不気味な生き物で夫婦に入った亀裂。小動物を題材にして男女を反転させるなど、ウィリス「わが愛しき娘たちよ」(1985年)に呼応したかのような作品。リサ・タトルはどれも面白いね。
「エジプトの雀蜂」アルジャーノン・ブラックウッド
 シンプルな筋立てだが、主人公の心理に重点が置かれ怪奇ものというよりラストで巧みに収束する技巧的な一般小説の味わい。こんなのも書いてるんだな。
「ラメトリー湖の怪物」ウォードン・アラン・カーティス
 予備知識なく読み始めたおかげで、中盤からの展開に吃驚。1899年にしてこの発想。乱歩の記憶に残ったのも当然だ。
「少年探偵リチャード・リドル<フランス密偵事件>」キム・ニューマン
 怪奇系少年探偵ものの枠組みながら現代的な視点から描かれており、その点が巧い。
「迷い風」<一休どくろ譚> 朝松健
一休のキャラクターが楽しい。安定した面白さ。
「空き家対策課」伊東麻紀
人口減少にともなう空き家問題と怪奇現象をうまく結びつけた現代ホラー。不気味な中にちょっとやるせなさが漂うところがいい。
○ノンフィクション
・Night Land Gallery 太田翔 身近な異世界からの訪問者 沙月樹京
 不気味でいてどこか愛嬌のある怪物たちをモチーフにしたアート作品群。これは実物を是非見てみたいなあ。 
・他人の密会(1) パルミジャニーノ、美少年の怪物 柏木静
 美少年をめぐる耽美的意匠。最後、パルミジャニーノの行く末の無情に嘆息。
・STRANGE STORIESー奇妙な味の古典をと求めて
(11)・・・・・・銀仮面作者の奇妙な味 安田均
今回はヒュー・ウォルポール。『銀の仮面』は傑作短編集だけど、たぶんそれしか読んでない。他も読んでみたくなる。
・『幻獣辞典』と<怪物>をめぐる解釈学 岡和田晃
 <怪物>の他者性という的確な指摘に首肯。言及されているのがアヴラム・デイヴィットスン「ゴーレム」というのには意表をつかれたが、文脈で納得。
他インタビュー、エッセイ、作品紹介も面白かった。
※2021年6/6追記 本自体は未読だが、毎日新聞5/29日書評欄の若島正『過ぎにし夏、マーズ ・ヒルで』(エリザベス・ハンド)評が素晴らしい。虚構が読者に呼び起こす真実について、これまでも鮮やかな解析を繰り広げてきた氏らしい美しい評論だ。5月付なので、ここに追記しておく。