異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

<シミルボン>再投稿 連載「放克犬のおすすめポピュラー音楽本」 第7回『リズムがみえる』

リズムがみえる

リズムがみえる

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 クラウドファンディングで世界の様々な本を翻訳出版していくサウザンブックスからの本である。
そのプロジェクトのホームページはこちら
 奴隷の時代から始まる500年におよぶ黒人音楽の歴史が<奴隷歌>から<ヒップホップ>までジャンル別に、美しい絵や詩とコンパクトな年表つきでリズミカルにわかりやすく紹介される。
 カラフルな絵を眺めるだけでも楽しいし、一方音楽と重要な史実が並べて記載されているので、黒人音楽ファンにも発見があるだろう。
 本書のあとがきで金原氏はジャズとブルーズを愛したカート・ヴォネガットのエッセイ集『国のない男』の「わたしが死んだら。墓碑銘はこう刻んでほしい。『彼にとって、神が存在することの証明は音楽ひとつで十分であった』」という言葉を引用し、黒人音楽の重要性を指摘、さらに本書の素晴らしさに「黒人音楽の歴史を黒人の歴史とからめてダイナミックに描いているところ」を挙げている。 改めて感じさせるのは音楽(特にリズム)そして美術というのがアフリカ系アメリカ人の文化の根幹に深く関わる大きな要素であるということだ。
 それを考えるとその歴史がこのような本の形で表現されたというのは必然的なことだろう。
 上記のホームページにあるようにこのプロジェクトは金原瑞人氏が本屋で偶然見つけたのがきっかけというが、面白いことに著者のトヨミ・アイガスは日系でもあるという不思議な縁を感じさせる。
 自らの作品だけではなく元々編集者で関わった著作も多く高く評価をされているようで、多文化的な出自も含め幅広くその活動が注目されるところだ。
 絵の方を担当したミシェル・ウッドも既に多くの賞を受賞していて活躍しているようだ。こちらがホームページ。
 デザイン性が高く鮮やかな色彩と温かみのある画風は本書の重要な要素であるリズムを必ずや多くの人々に届けることになるだろう。
 本書にはちょっとしたおまけの楽しみもある。
 著者紹介のところに書かれているのだが、ミシェル・ウッドはすべてシーンにミッシーという女の子を描きこんでいる。
 探してみるとちょっとわからないものもあって、結構難しい。
 多少ヒントも書かれて意外なところにいたりするので、本書を手にした方は是非挑戦してほしい。
 ささやかながら支援をさせていただいた身として、個人的に小躍りしたいほど嬉しかったのは<ファンク>の章の絵がなんとP-Funkだったことだ。
 今から思うと、クラウドファンディングで監修にあたったピーター・バラカン氏が本書を紹介する動画でちらっと映っていたのだが全く気づいておらず、後から「支援して(成功して)ホントに良かった~」という気分になったのだ。
まあ絵になりやすい連中ということなのだろうが(笑)、本の製作者のセンスが嬉しい。
 本書にはゴスペルだけをフィーチャーした“I SEE THE RHYTHM OF GOSPEL”という続編もあるとのこと。
 こちらの翻訳も期待したい。(2018年9月28日)