~掛け値いっさいなし!「自由で型破り」を地でいった男の人生をコミックで紹介~ 最近遅ればせながらレゲエ/タブ・ミュージックの面白さに気づいてiTunesなどで聴き、その影響力の大きさに驚かされている(遅えな)。
そんな中でセルジュ・ゲンズブールもやっていたことに気づく(というか忘れていた)。
いやーそういえば幅広い音楽をやってきたし時代的に当然だよな。
2015年といえばゲンズブール没後ほぼ四半世紀。
そんな時代でも人気が衰えていないのだ。
セルジュ・ゲンズブールは不思議な人物である。
20世紀後半のポピュラー音楽が大きな変革と拡大がおこった時代だが、強い影響力を有したのはやはり英語圏の英米の音楽であり、フランスを拠点にフランス語の曲を中心に活動したゲンズブールはあくまでも傍流に位置する。
しかしそのポップな楽曲と型にはまらない生き方で、ロック以降の世代の強い支持を集めてきた。
一方で煽情的とも受けとられるセンセーショナルな表現は派手な女性遍歴もあって、一部の音楽ファンの神経の逆撫でする要素があった。
ウクライナ出身のユダヤ系の両親はロシア革命からの内線からフランスに移住、パリで生まれた彼は画家を志すも挫折。
デビュー時既に30歳を迎える年であり、数年後には60年代のポップ~ロックンロールの波がフランスにもおとずれ、シャンソンの流れを受け継いでいた彼hは早くも“時代遅れ”の存在となる。
しかし自由な彼の個性に時代の変化はむしろ幸い、やがて世界的な名声を得ることになる。
型破りなあまり信じがたい様なエピソードの数々、浮き沈みの大きい経歴、関係する女性たちのラインナップの華麗さ(バルドー、バーキン、フランス・ギャルなどなど)となると普通の形式でバイオグラフィーをつづるとどうしても偏りを生じるか現実離れしたものとなりかねない。
そこでこのコミック形式、実にうまくはまっている。
特に良かったのは古典志向の画学生であった彼がキュビズムによって教育内容が変わり情熱を失っていくところがコミックの利点が存分に生かされているところが素晴らしかった。
是非ご一読をおすすめしたい。
思えばゲンズブールの傑作伝記映画『ゲンスブールと女たち』もまた怪物のようなキャラクターが狂言回し的に登場する非現実的な手法の加わった一風変わった伝記映画で、こうした非日常性のある存在でそこが大きな魅力のアーティストだ。
(そういえば映画でジャマイカのシーンがあったようだが、それも本稿を書きながら思い出した。
記憶の劣化ひどい(苦笑)
巻末にはヒップホップも含めた現在の音楽シーンでのゲンズブールの影響を紹介したアップトゥデイトなガイドを訳者が記しているのもありがたい。
※追記 上記の映画『ゲンスブールと女たち』の感想を書いた自分のブログを再確認して、監督ジョアン・スファーもまたバンドデシネ作家だったことを思い出した。
画家であったこともこうした作家たちに愛されるセンスを持っていたのかなあと思ったり。(2019年2月10日)