異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

<シミルボン>再投稿 連載「放克犬のおすすめポピュラー音楽本」 第5回くめどもつきないP-Funkの魅力を紹介その1

『P‐ファンク・・・って何だ!?』とお決まりのご挨拶である。
 えー、これは大してP-Funkファミリーともいえない(まあ一緒に仕事はしていたが)ファンクグループ“ザップ”のロジャー・トラウトマンのソロデビュー作につけられた謎の日本タイトルである(原題The Many Facets of Roger)。
 このように説明するとなんとも味気ないものだが、とにかくいろいろ出鱈目なタイトルがつけられていた時代である。
 閑話休題
 P-Funkってなんだろう。P-Funkについて詳しい丸屋九兵衛氏によると「ジャンルであり、クルーであり、率いる音楽集団の俗称でもある」(放克犬のブログ参照)とはなはだ定義に困る。
 この丸屋九兵衛氏備えている知識の広さと深さと独特だが的確な切り口で、放克犬一押しの人物なのだがこれまた別の話になってしまう。
なにはともあれP-Funkである。
 一般的にはパーラメントファンカデリックというほぼメンバー同じのファンクグループによる音楽やそのメンバー、そこにブーツィー・コリンズ主導のバンドやソロが入る、まずはそういったところだろう(ただブーツィーがまた付き合いの多い人物でコラボが多いので厄介だったりするが・・・)。
 パーラメントの前進パーラメンツの結成が1955年で中心人物ジョージ・クリントンはまだ現役なので(76歳を超えた今もツアーを行っている!)、その活動はなんと60年以上に及ぶ。
 P-Funkのユニークさはこのジョージ・クリントンの個性にあることは誰も否定しないだろう。
 いわば街のバーバーショップに集う仲間を取り仕切る親分。ところがこの人、歌は巧くないし楽器もできないし楽譜も読めない。ただし人集めの才能とアイディアには人並み外れたものがあり、特にユニークなのはSF趣味。
スタートレックやアウターリミッツが好きだった彼はそこにブラックミュージック文化を融合させ独自の世界を切り開いていった。
 ワンマンであったがめ金銭問題などで大所帯のメンバーから離脱者が出て、1980年代に一時失速するがその先駆性がヒップホップ世代に再評価され、90年代以降に伝説的人物としての位置を確立したのだった。また華やかなスター性のある伝説的ベース・プレイヤーのブーツィー、ポピュラー音楽のみならずクラシックにも造詣が深くなおかつクレイジーさあふれるキーボードプレイヤーのバーニー・ウォーレル、早逝は惜しまれがP-Funk史上最高のヴォーカリストのグレン・ゴインズ、綺羅星のごとく輝くエディ・ヘイゼルにマイケル・ハンプトンといった凄腕ギタリストたち・・・とメンバーを見れば人集めの能力にも才覚を発揮したことがわかる。
 優れたミュージシャンによるロックとブラックミュージックをベースにしたジャンルレスの音楽が荒唐無稽なSFストーリーと共に展開されるという前代未聞の世界が作り出された。
 そしてこの何とも変わったセンスの音楽、ヨーロッパや日本で大いにうけた。
 そのため日本でも優れたP-Funk紹介本が出ている。
 それが河内依子『P-FUNK』である。
 著者はP-Funkのアルバムで解説を多く手掛け、長年レビューも書かれているP-Funk情報収集には欠かせないお馴染みの方である。
膨大な数のメンバー(総勢50人ほど)による歴史をふまえ、関連アルバムのレビュー、サンプリング状況まで丁寧にフォローされている。
 長年の地道な音源や資料のフォロー、幾多のインタビューからいろいろな謎を解き明かしてくれる。
 ビジネス面含めP-Funkの歴史が立体的に俯瞰できる。
 これからP-Funkを聴いてみたい!という人に是非入手して欲しい一冊だ。
個人的にはこの本でジューニー・モリッソンの貢献が大きいことを知った。
 もう一冊紹介しておこう。
 リッキー・ビンセント『FUNK』である。
 こちらは合衆国の本国人、1960年代からのファンクの流れを踏まえての流れを知ることができる。
 序文にジョージ・クリントン、第5章はまるまるP-Funkの項である。
 合わせてP-Funkの世界を深めるのに大いに役立つ。(2017年8月20日