異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

丸屋九兵衛トークイベント6月は<BLACK MUSIC MONTH 2022>!!

お馴染み丸屋九兵衛さんのトークイベント。
今回は<BLACK MUSIC MONTH 2022>。
本人の紹介文をそのまま引用しよう。

”6月は黒人音楽月間だ。
1979年6月、南部をレプリゼントするジミー・カーター大統領時代に"Black Music Month"として始まったこの祝祭期間。
2009年にはバラク・オバマ大統領によって"African-American Music Appreciation Month"と改称された。「アフリカ系アメリカ人の音楽に感謝する月」だ。なぜなら「不平等と戦いながらアメリカ社会の自由を守り、歌を通じて信念を表現してきたのが、アフリカ系の音楽だから」。
そして、遠く東アジアに生きる私たちも、彼らの音楽に刺激され、勇気づけられてきた部分が少なからずあるのではないか。

ブラック・ミュージックに助けられた日本人の一人が、黒人音楽専門誌『ブラック・ミュージック・リヴュー』を編集することで社会人になれた丸屋九兵衛(QB Maruya)である。
そのQBが6月1日から30日までの期間にお届けするオンラインイベント・シリーズ。
それが【BLACK MUSIC MONTH 2022】with QB Maruyaだ!”

ということで多方面に豊富な知識と独自の切り口を見せ、最早何の専門家だったのか分からなくなっている丸屋氏だが、元々は上記の様に黒人音楽雑誌の編集者で本業であった。ということで、一つ一つのイベントの紹介文も実に熱かった
①〜思い出したい歌がある〜【4GOTTEN RELMZ】忘却の彼方を超えて、ネオ・ソウルの90年代へ
 90年代ネオ・ソウルの王道自体をまだ十分聴いていないので、王道以外の部分を中心に紹介するこのイベントは個人的に少々ディープなマニアックなところの強いものだったが、”ネオ・ソウル”周辺とされる音楽にも文化的背景の多面性があることが良くわかる内容だった。一方、音楽が優れているだけで残れるわけではない、非常にシビアな世界であることも感じられた(音楽活動を止めてしまうアーティストたちの多さたるや)。沢山ユニークなアーティストを知ったが、特に印象に残ったのはTeri Moïseの”Canal 2000”。 ハイチ系米国人なのでフレンチ・ファンク。ケベックで一番売れたという話も面白い。若くして亡くなったのが惜しまれる。
youtu.be
もう一曲、これは大御所になってしまうが、Issac HayesのSting”Fragile”カヴァー。イントロが長くてなんの曲か全然わからないという、らしさがたまらない(笑)。
www.youtube.com

②【Soul Food Assassins vol.26】黒人音楽概論。「なぜ歌詞で他人の悪口を言うのか」問題&その他の謎について
 ヒップホップで揶揄系での他アーティスト言及パターンがあるのはもちろん、その前から曲で他のアーティストを言及したりする文化はあったのだな。黒人音楽が(奴隷制度の歴史を背景にした)コミュニティの音楽だからというのが丸屋分析。Maxwellのコンサートで、その時に亡くなった日本人有名人(観客からすると場違い)の写真の話は文化の違いをよくあらわしているなと感じた。ヒップホップはドキュメントというよりリアリティショウ、客演カルチャーで自分の名前を名乗るようになった、ブラックミュージックは徒党カルチャーというのはなるほど。あとJBは曲で自分の名前を元々言っているのもらしいな。ファンクとヒップホップの違いなど、いつもながらヒップホップの解説がわかりやすく(いつまでたっても明るくならない身としては)助かる。ちなみに丸屋さんはマーヴェルではなくDC派だそうだ(笑)。
③【Soul Food Assassins vol.27】プロデューサー横暴録! 地獄の試聴会からバルコニー吊るしまで
 米ブラックミュージック界でのプロデューサーの独特な存在感やそれにまつわる強烈な逸話が沢山出てきてインパクトがあった。大きな権力を握った人々が起こすあれこれには笑えるものや洒落にならないヘヴィなものがあって、人間のさまざまな面に想いを馳せてしまう。その中で(一部横暴さを感じさせつつ)Ahmet ErtegunやClive Davisの優れた仕事ぶり、本来は音楽専門家ではない経歴ながら、音楽的センスの素晴らしさでポピュラー音楽史に名を残す、どこか運命的な流れに心を動かされた。Ahmet Ertegunが作曲家としで偉大だったのはびっくりした。
④【Soul Food Assassins vol.28】切なくも愛しい未発表アルバムの世界。封印された作品たちの足跡を辿る
 まずはDiana Rossのあの名盤「Diana」がディスコバッシングの影響でスピードアップされたバージョンだったとは!不覚にも知らず驚かされ、早速そのオリジナルヴァージョンのある2003年のデラックス盤を聴く。いやー例えばUpside Downなんかは、大分違って感じられる。これだと大ヒットしていなかったかもしれないのか。その他大リーグとポピュラー音楽に関する本の紹介もあってこれも購入(早速読み始めたがすごく面白い)。

それにしてもスポーツ関連情報も逃さず押さえる丸屋氏恐るべし。そして『グリンプス』への言及もあって、SFファンとしても大満足。

全体に音楽ビジネスのシビアさと偶然性に左右される歴史の不思議さが印象深い。
⑤【Soul Food Assassins vol.29】再び、映画と音楽が出会うとき。ソウル/R&B/ヒップホップ・ムーヴィーの伝説は続く
 1年前の【Soul Food Assassins vol.22】の続編ともいえる内容で、今回は実在の人物に関する映画。ヒップホップ・ムーヴィー&ブラック・ムーヴィーはまだまだ有名作品についてもフォローできていない状況なのだが、面白そうなものからダメそうなものまで、いろいろな作品があることを知る。また映画周辺の逸話も楽しい。派手な割に持続力に欠けるスヌープとB級っぽさの中に筋の通った行動を見せるマスター・Pという個性の違いもまた味わい深い。コロナもろもろで劇場も行かなくなってしまっているのだが、今後実現が期待されるカーティス・メイフィールドボブ・マーリーそしてジョージ・クリントン(!)の伝記映画が公開された観に行きたいなあ。