異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん

2018年11月に読んだ本

オスマン帝国 イスラム世界の「柔らかい専制」』鈴木董
 当ブログ主が現在最もはまっているのがTVドラマ「オスマン帝国外伝」なのだが、おかげでオスマン帝国自体にも興味が出てきた。で、丸屋九兵衛さんの選書フェアで並んでいた本書を読んでみた。奴隷上がりでも大帝の寵愛さえあれば出世できるという劇的な時代の背景がよくわかり面白かった。「オスマン帝国外伝」帝国の内部争いといったが描写が多くそのせいで衰退したのかなと思ったが、必ずしもそういうわけでもないようでちょっと安心した(笑)。
『iPhuck 10』ペレーヴィン
 疫病の広がりで直接の性交渉が禁止された未来、性行為を媒介する技術が進歩していた(その一つがタイトルであるiPhuck10=アイファック)。そんな中事件記録を小説にしながら記録していくロボット刑事ポルフィーリィがキュレーターのマーラとアートシーンの調査をしていく。しかしこのコンビ一筋縄ではいかない、お互いに腹に一物を抱える複雑な関係である。そして現実のロシアのアートシーンを素材にしながら、近未来のガジェットによる性行為技術革新の奇想的アイディア(と駄洒落)が飛び交う中、ポルフィーリィとマーラはお互いに記述の書き換え合戦を繰り返すというメタフィクショナルな展開を呈し虚実が定かではなくなり、そこにマーラの元カノも登場してさらに混沌を深める。ロシアの現代アートシーンが扱われるので少々わかりにくさがあるが、その点も含めかなりユニークな作品であることは間違いない。
『キス・キス』、『王女マメーリア』、ミステリマガジン2016年9月号
 ミステリマガジンの分はシミルボンに投稿。kazuouさん主催の怪奇幻想読書会の課題図書を読んだ。『キス・キス』は再読だが、ほとんど忘れていたのでそちらも新鮮に読んだ(苦笑)。飛行士としても優秀だったダールは小説も天才的にうまい人で、ユニークな着想と意地悪とユーモアの絶妙に合わさったセンスと巧みな筆さばきでワンアンドオンリーの個性を発揮している。やや少年じみたところもある悪意が童話にも生かされているところ、短編の尺もぴたりとはまっているところなどが今回よくわかった。それにしても夫婦のいらついたやり取りがあまりに見事でどうもそこは実体験ぽい気配がするがコワいので深追いしないことにしよう(笑)。
『トム・ハザードの止まらない時間』マット・ヘイグ
 普通の人より年をとるのが遅い人物というシンプルなアイディアから、個人の内面に焦点を当てどちらかというと静かな物語に仕上げ成功している。フィッツジェラルドが登場するが(設定こそ違え)「ベンジャミン・バトン」を連想させる。こういう小説を読むといかに書くかが重要だということがよくわかる。アイディアは目新しいわけではなく精密度が高いわけでもないし、筋立て自体もオーソドックス。しかし作者の書きたいものがきちんと表現されているいい作品なのだよね。