異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

2018年11月から12月に観た映画、展覧会、イベントなど

そういえば11月あたりから観た映画をつけてなかった・・・。(「ボヘミアン・ラプソディ」<アラン・ロブ=グリエ レトロスペクティブ>以外)
「メアリーの総て」(Mary Shelley)(2017年)
 メアリー・シェリー本人とフランケンシュタイン創作の話は、バイロン、パーシーらとの怪談談義はじめ史実自体が現実離れしてるためか抑えめな演出で手堅くきた感じ。どちらかというと印象の薄かった妹クレアやポリドリが話に組みこまれたのは史実の研究が進んだからだろうか。
 観てから12/22にはSFファン交流会「祝!フランケンシュタイン生誕200年 ゴシックからスチームパンクへ」に参加。市川純さん(英文学研究者)、 刹多楡希さん(フランケンシュタイン研究者) 、 日暮雅通さん(翻訳家)、 北原尚彦さん(作家)というメンバー。近年の流れも面白いが、個人的には「メアリの総て」を観たばかりだったので、前半のメアリ―・シェリー周辺の実際の話が一番面白かった。自殺する異父姉ファニー・イムレイが描かれていないとか、スコットランドではパーシーに出会っていないとか(母メアリー・ウルストンクラフトの複雑な面をあまり打ち出すわけにはいかず、ファニー・イムレイは消去されたのではないかという話)。興味が出て『マチルダ』『メアリ―・シェリー研究』を購入してしまった(いつ読めるのか・・・)。
※その後ツイッターなどで映画の史実との違いが取りざたされているようだが、いちおうそれなりに真面目につくられた伝記映画が存在して間口が広がったのは良いことではないかと思った(それでも気が済まない人たちが多いだろうことも想像できる。なにしろ関わっている重要人物が多すぎるので。その分これからも研究成果を期待できる対象であるともいえそうだ)
ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯」(Pat Garret and Billy the Kid)(1973年)(TV録画視聴) 
 なんとサム・ペキンパーの作品でボブ・ディランが出ていた(恥ずかしながらKnockin' on Heaven's Doorが生まれたことも知らなかった・・・)。出来はまあ普通ぐらい。若いディランはカッコいいが映画ではちょっと浮いてるような感もあった。
「猿人ジョー・ヤング」(Mighty Joe Young)(1949年)(TV録画視聴)
 要はキング・コングのスタッフによるゴリラもの)。アフリカから連れてきたゴリラにショーをさせる人たちがさほど悪役にならない、派手なクライマックスとそこへの流れは強引、と現在観ると粗はいろいろあるがハリーハウゼンのゴリラはさすがに良い。
「暁の挑戦」(1971年)(TV録画視聴)
 「暁の挑戦」観た。工業地帯として成長していく大正時代の川崎で実際に起こった庶民・ヤクザ・警察や市の対立をヤクザ映画の要素を取り入れながら映画化。庶民目線が良い力作だが、渋めなので埋もれていたらしい。幼稚園から小学低学年までは川崎市に住んでいたのでその意味でも非常に興味深かった。悪役の渡哲也が(当然かもしれないが)カッコいい。実際の事件はいろいろと複雑そう → 
鶴見騒擾事件 - Wikipedia

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ 」(Captain America : Civil War)(2016年)(TV録画視聴)
 アメコミ映画も最近なかなか追えず、観始めてからアベンジャー/エイジ・オブ・ウルトロンまだだったことに気づいた (インフィニティ・ウォーも未見・・・)。 まずまず面白かったけどスカーレットやアントマンの能力なんかは強力過ぎて、話散らからないようにするのこれから難しそうね(と思ったら、公開予定の「アベンジャーズ/エンドゲーム」映画宣伝では「2019年、アベンジャーズが終わる―」とうたってたね。熱心なファンというわけじゃないけど、なんらかの形で一区切りつけた方が良い気はする)
ラ・ラ・ランド」(La La Land)(2016年)(TV録画視聴)
 非常にキレイな映画で、演出もしゃれてる。今更だが映画界の流れを変えるヒットになっているのだろう。黄金期のミュージカル映画に明るくないせいかこういうショービジネスものなら「オール・ザット・ジャズ」(All That Jazz 1979年)の狂った感じの方に惹かれるな(ここのところ「オール・ザット・ジャズ」何度も引き合いに出すかたちになってしまったが、年末にこれを観て頭にしょっちゅう浮かぶようになったのがきっかけ。あまりミュージカル映画を知らないので他に浮かばないこともあるが(苦笑)。ブレードランナーハリソン・フォードは踊れた記憶がないが、2049のライアン・ゴズリングは踊れないといけないから今の俳優さんの方が大変なのかな(バンドやってるから歌は歌えるんだな)。

他TVドラマ
AXNミステリー「メグレ警視(Maigret)」(「メグレ罠を張る (Maigret Sets a Trap)」シーズン1、エピソード1)(2016年)
 Mr.ビーンローワン・アトキンソンがあまりに渋い演技をしているCMを見かけたので(笑)。英国版ということになり当然英語。。ビーン(あるいはジョニー・イングリッシュ)に気難しい双子がいたかのように別人と化して実に渋い。歩き方や立ち姿は(手が長いのかな)なんとなくビーンなのはご愛嬌。面白かった。
BS日テレ・チャンネル銀河「オスマン帝国外伝~愛と欲望のハレム~」(原題Muhteşem Yüzyıl ムフテシェム・ユズユル)
シーズン1、シーズン2(2011年)
 11月頃に一番力を入れて観ていたのがこれ。なにしろ長い。シーズン1で日本版は本来の1話を2分割して計48話、BS日テレで観たのだが1話60分だった。シーズン2にいたっては日本版79話で、こちらはチャンネル銀河で1話70分以上あった気がする(この時間の違いはなんなんだろう)。まず西欧視点ではない本格歴史ドラマであることにしびれる。西欧がオスマン帝国にビビっているのだ。これはなかなか新鮮。どうしても西欧以外は周辺の野蛮な異人として描かれやすいからねえ。正直、話の展開とかは斬新というわけでもなくベタだったりくどかったりでシーズン2終わってもちょっと話が進んだ程度(苦笑)。ただそれでも面白いんだよね。しっかり予算が使われた作品で衣装などが豪華で(戦闘のシーンはもう一つなものの)人員はたっぷりで文化面の描写が充実。全員エゴむき出しというのも素晴らしく、平均年齢の若めの俳優陣がハイテンションに攻めてる感じもよい。その俳優さんたちも多様な出自でそれもいろいろ興味を惹かれる。いつかブログでまとめて取り上げたいと思ってる。とりあえずシーズン3あたりまでは観たい気がするが、放送はどうなるのかなあ。

ムンク展―共鳴する魂の叫び」@東京都美術館
 かなり混雑していた。油彩の名作もいいけど、木版がよかったなあ。なんというかより表現が柔らかくなって温かみを感じる。ムンクといえば『ナイトランド・クォータリー vol.1吸血鬼変奏曲』の樋口ヒロユキ「魔の図像学」(1)でムンクの《吸血鬼》が取り上げられていて、画家の複雑な女性観が現れていることを知ることができた。(ムンクは同じモチーフを何度も書くので《吸血鬼》も何枚かあるのだが)実際に観た印象はなんだか丸っこくてかわいらしいのだった。その辺、激しい現実の痛みと本人の見た世界との一様ではない関係性がしみじみと思われるのであった。
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