~オールスターキャストでお届けする最後まで予測不可能なゲーム小説~
十月の終わり万聖節前夜(ハロウィーン)に繰り広げられる、≪開く者(オープナー)≫と≪閉じる者(クローザー)≫によるゲーム。
参加者はいずれも御主人(マスター)と使い魔(コンパニオン)のコンビ。使い魔は動物の形態をしている。
主人公というか(人ではないので)主役はスナッフ、御主人ジャックの番犬(ウォッチドッグ)である。他に猫であるグレイモーク(御主人はジル)、フクロウのナイトウィンド(御主人はモリスとマッカブ)、黒蛇のクイックライム(御主人はラストフ)、蝙蝠のニードル(御主人は伯爵)、ネズミのブーボー(御主人は博士(グッドドクター)、白ワタリガラスのテケラ(御主人は司祭)・・・。重要な役に名探偵とそのコンパニオンもいる。
ただ全体として人間の方は、出てこないとか完全に脇役というほどでもないのだが、基本的にはコンパニオンの方がメインである。ゲームの内容は漠然としているのだが、どうやら禍々しい異世界とつながろうとする勢力(オープナー)とそれを防ごうとする勢力(クローザー)にわかれて戦うことになる。面白いのは誰がどちら側か最後までわからないのだ。
突然だがトランプのゲームにナポレオンというのがあるのをご存じだろうか。基本的には5人でプレイするのだが、ナポレオン(いわゆる親)とその副官対残りの3人の2チームでどちらが絵札を多くとるか勝負する。ポイントは副官が誰か表明しないことだ。
つまり最後まで勝負がどうなっているか誰が誰を欺いているのかわからないゲームなのである。
中学の頃だったかなあ、学年で随分流行っていた。それに近いのが本書の楽しさだ。
こちらのレビューでは多少控えめに書いたが(それでも勘の良い方はおわかりかもしれない)、有名キャラクター勢揃いで、どちらかというと怖さより賑やかな楽しさが前面に立っている小説である。
(本書の背表紙や帯の紹介はやや説明多めになっている。ただこうした幻想小説に馴染みのない読者には説明が必要とも思われ、説明過ぎではないほどよい説明の塩梅についてはなかなか難しいものがある)
ゼラズニイには人類の命運をかけてユニコーンとチェスの勝負を挑む「ユニコーン・ヴァリエーション」もあり(『モーフィー時計の午前零時』収録)、また本書にはゲームにあたっての心がけへの言及もあり、並々ならぬゲームへの情熱が感じられる。
謎の死体が登場してミステリ要素も加わり実にサーヴィス精神にあふれている。
また本書は同じく竹書房文庫から出た『猫は宇宙で丸くなる』に続く動物もののSF/ファンタジーともいえる。
この路線で引き続き読者を楽しませて欲しいと期待している。(2017年12月30日)