異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

2023年11月に読んだ本とオンラインで聞いたイベント

 低調が続いております。
◆『流れよわが涙、と警官は言った』フィリップ・K・ディック 長ーいこと積んであった課題本(の一つ)を読了。近未来社会でLAでIDを失ってしまった有名タレントが警察に追われる。シンプルな逃亡劇で、後半内省的な要素が次第に深まっていく。ワッツ地区に関する言及が度々あるのはディックの経歴もあるのだろうか。で、まだ読了していないが、こちらにも手を出す。 すると1972年から10年住んだフラートンはワッツに結構近いことにも気づく。ワッツといえばワッツ暴動で、(今年完全版が出た)かのワッツタックスも連想されるわけで、黒人問題に対するディックのスタンスがやはり気になってくるのだよね。当ブログ犬が以前から関心を持っている『逆まわりの世界』と同じくパーソナル(かつ晩年のような神学的要素まではいたらない)なタイプの作品で共通点が多い気がしている(で、本作が1974年で、『逆まわりー』が1967年)。
funkenstein.hatenablog.com

SFマガジン2020年12月号
 中国SF特集 科幻世界✖️SFマガジン
○フィクション
「生存実験」王普康(ワン・ジンカン]
 鉄でできた若博ママに育てられた六十人の子どもたち。十歳になったある日、外の世界で生きる"生存実験"を受けなければならないとママにいわれる。オーソドックスだが、子どもたちが適応していこうとする様子がよく描かれていて面白かった。
「地下室の富豪」查杉(チャー・シャン)
 ハッキングで世界が塗り替えられるというショートショートで、つまらなくはないが既視感のあるタイプのもの。
「我らの科幻世界」宝樹(バオ・シュー)
 実際の中国SF作家たちをなぞり、中国SF史をさらうような流れで、シンプルで豪快なアイディアをかませた作品。中盤のシリアスな展開からのラストには読者としてはうまくやられた感あり。
「人生」劉慈欣
 いちおう特集外扱いっぽいが。母親の記憶を受け継ぐ胎児をつくる実験の結果。つまらなくはないが、小品なのでアイディアそのままといった作品。
 特集では「科幻世界」副主編姚海軍からのメッセージや中国SFブックガイドなどもあった。
「女童観音」篠たまき
 いつとも知らぬ(昭和初期くらい?)生き神様とお付きの者たちが暮らす湯治場が描かれる。レトロで残酷耽美な世界がなかなか良い。『人喰観音』のスピンオフ作品ということでそちらも気になる。
○ノンフィクション(拾い読み)
・「SFの射程距離」
 <企画:AI✖️SFプロジェクト>ということで、AI研究者に聞くというインタビューのシリーズ。ヒューマン・メディアコミュニケーションデザインが専門の米澤朋子氏へのインタビュー。最先端の研究とご自身のフィクションとの付き合あの話など面白く読めた。
・NOVEL&SHORT STORY REVIEW 鳴庭真人
 米SF情報だが、陰謀論SFの話が面白かった。あと≪ワイルド・カード≫はまだ続いてるんだな(失礼、翻訳でも全くの未読です)。
(第八回ハヤカワSFコンテストに関しても載っていますが、こちらも読んでいません)

 
 それから長澤唯史先生の指輪物語講義は2回目。
www.asahiculture.com
 古英語の話が非常に面白い。(当然ながら)民族の移動、支配被支配など複雑な歴史が言語には反映されることがよくわかるし、だからこそ、「新しい言葉をつくる」そして「文学をつくる」ことが「世界を創造する」ことなのだなあ。

 あとはゆっくり(過ぎ?)消化の『大奥』12-14まで。NHKの方も再開して、最近の数回は観た。NHK版もしっかりしたつくりになっているけど、諸行無常の趣はやはり原作の方が勝るかな。とにかくどのエピソードもすごいね。

※2023年12/31追記
 そういえば11/11SFファン交流会「ドードー鳥とSF鳥」聴いた(出演 川端裕人さん+八代嘉美)。

www.din.or.jp
 ドードー発掘調査の場にも同行したという川端裕人さんのお話が大変面白かった。再生計画の方はSF視点ならではの発想の飛躍だが、発掘で明らかになるのが生物学から文化史的な分野まで広がること、また絶滅していてもモーリシャス島のアイデンティティになっている点など様々な点で興味がそそられた。