異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

2021年7月に観た映画やTV番組など

 
・追憶(1973)
 1944年〜50年代のNYーハリウッドを舞台にした恋愛映画。バーブラ・ストライサンドは日本では(おそらく一部の世代以外には)あまり人気がない印象があって、自分も正直惹かれたことはない。ただNHKBSでこの作品が放送されていたので、ふと思い立ち録画視聴。本国での評価と差があるアーティストには文化の差がよく出たりするよね。政治運動に没頭していく女性像に、本人のユダヤの出自が重ね合わされているだろうことがわかる。彼女の位置づけは、おそらく歌手・舞台女優としての評価とユダヤ系であることからくる政治意識の高さもあってのリスペクトもあったのではないかと思う。日本でとらえがたいのもまあ仕方ないかな。さて作品そのものは恋愛ものに当時学生政治運動の文化などが織り込まれ、しっかりとしたつくりの作品だ。懸命なあまり少々鬱陶しい感じもある女性とソフトで保守的な振り回され気味の男性に存在感があり、バーブラ・ストライサンドロバート・レッドフォード共にハマり役だ。(一部だが)NYものの系譜としても個人的にはうれしい。ただまあ古きなんたらというか、政治的真面目さもホワイトウォッシュ枠内の限界を感じてしまう。またバーブラ自身の考え方を知るには、女性差別を扱いユダヤ系文化がテーマになっているらしい、監督・主演した『愛のイエントル』(原題Yentl)(原作はアイザック・シンガー)を観た方が良いのだろう。なかなか入手困難だけどね。
・ジュース(1992)
 2pacの映画デビュー作。ケチな盗みをするスラムの仲間たちが、銃を手に入れ、強盗を企てる。店主をちょっと脅す程度の計画だったが、射殺してしまい、彼らの人生が狂い始める。2pacは、一丁の銃を手にしたことで歪んだ内面が顕在化する若者を好演。主役のQが、2pacに食われたのはやむを得まい。途中2pacが感化される白黒映画はWhite Heat(1949)ぽい。
・間違えられた男(1956)
 強盗に間違えられ、警察に拘留された男の話。調べてみると1950-60年代前半は有名作品がズラリと並ぶ、いわばヒッチコックが油が乗り切っていた時代。ストーリーはシンプルで、むしろカメラワークや音楽で主人公演じるヘンリー・フォンダの高まる不安感が巧みに表現されている作品。実際の事件を扱っているらしく、ラストの文字解説で何とか衝撃を薄めようとしているが、映画の不幸な結末自体は事実が反映されているようだ。https://en.m.wikipedia.org/wiki/The_Wrong_Man  
・ダイヤルMを廻せ!(1954)
 これ倒叙型ミステリーなのね。再見だが、60年以上前とは思えないシャープさだな。謎解きの見せ方のトリッキーぶりとかシンプルな人間関係とか、刑事コロンボの良いお手本といった感じ。今だと映画でこのシンプルさはさすがにないと思うので、TVドラマの方に影響を与えているといえそう。
・NHKBS ダークサイサイドミステリー「“ヒトラーの予言者”謎の霊能力者ハヌッセンの野望」
 佐藤亜紀先生が出ているということで録画視聴。なるほど悪漢やら有象無象の人物を描く先生が出演されるのもうなづける題材だ。権力にすり寄ろうとした自己愛の強い、いかがわしい人物。いやー面白かった。怪物じみた人物がいくらでも出てくるなこの界隈。恐ろしいともいえるが。佐藤先生のシャープな分析も流石。