異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

2023年7月に読んだ本と怪奇幻想読書会

 諸般の事情で読んだ本はちょっとだけ。
◆『ピンポン』パク・ミンギュ
 世界の命運を握るピンポンの試合にいじめられっ子二人が挑む!というフォーマットは魅力的なのだが、枝葉の部分にどうものれない部分があって個人的には今ひとつだった。パク・ミンギュは面白く読んできたので、どこかで再読しようと思う。(シミルボンに書いた『三美スーパースターズ最後のファンクラブ』の感想)

shimirubon.jp
※追記 『ピンポン』は再読だったかもしれない。が、前の記憶がない...。
SFマガジン 1989年2月号
 随分古い号で、創刊29周年記念特大号。
 「青をこころに、一、二、と数えよ」コードウェイナー・スミス
 既読。
「機械の誤算」フレッド・セイバーヘイゲン
 たぶん<バーサーカー>シリーズを読むのは初めてなんじゃないかなと思うが、よく出来たSFミステリで楽しめた。
「ココドの戦士」ジャック・ヴァンス
 既読。
「謎の略奪団」ポール・アンダースン
 いかにも50年代らしいスペース・オペラというフォーマットだが終盤のちょっとした展開に古典ミステリ(執事もの)のノリが入っている洒脱さが人気の所以なのかも。それにしてもグレッグ・ベアの妻はポール・アンダースンの娘だったのか。
「第四の専門知識」ラリイ・ニーヴン
 ハードSFとファンタジーで活躍した作家で、これはもちろんファーストコンタクトもののSF。だが、科学的な部分は正直なところ表面のみで、どちらかというと魔術っぽい効果のある薬が話のメインでファンタジーの側の顔が出ているかな。話としてはよくまとまった娯楽作だが、1971年作らしく、ジェンダー的な部分の古さがいかんともしがたい面がある。それがポール・アンダースンの時代より言い訳めいた部分が加わり、かえって目立つことになっている面もあったりする。
「花か種か」草上仁
 作者らしい手練れの青春物。時代や地域が特定されない、どこかの部族社会のイニシエーションが題材で、こうしたものの系譜を少し考えてみたくなった。まあ特定できない舞台設定ではあっても、時代を感じさせる古めの価値観を感じさせたりはするが。
「最期の日」東野司
 作者の作品はほとんど読んでいないかなあ。近未来の病院、高齢者の危篤状況には迅速に家族が面会できる仕組みが出来上がっていたが。情緒的な描写から、未来の技術が当たり前とされていた風景が変わっていく様子を描く、SFとしてはメインロードの作品。ただ、この家族関係や構成が掲載時と様変わりしていて、ややもっさりとした印象を覚えてしまう。
「痩せても狼」神林長平
 初期ぐらいしか読んでいないので、こうした普通のユーモアも書いていたんだなという印象。故郷の惑星に帰郷したちょっとしたワルの二人組が金銭問題で富裕になった幼馴染に会いに行く話。これも古めかしいフォーマットの人情物の箱から全く出ていないし、SFアイディアの方も目を引かれるものはない。
「青白き橋」内藤淳一郎
 ハードSF。橋元淳一郎の別名義。今でも科学・教育方面で活躍しているようだ、ハードSFと同時代らしい電脳ハードボイルドっぽい雰囲気が合わさっている作品。ちょっと60年代の政治運動あたりのイメージも加わっているかな?さすがに科学描写には迫力があり、その方面の読者の支持は集めるのかもしれない(が、ネットでほとんど言及がないのでよくわからない)。一方、一応無性の異星人に対する偏見がテーマになっているものの、女性キャラクターは感情的だったり古い定型のもので、全体的に性意識は保守的(作者の関心はどうやら生命体として無性生殖と有性生殖のどちらが生存戦略に有利かということにあるよう。その反面、性意識が人類をどう変化させていくかには関心がないようである)。その意味では70年代のティプトリーより後退しているのは残念。
 それにしても見事なまでに女性キャラクターの類型化された作品が並ぶ。(男性作家ばかりというのも大きな原因ではあろう。本号には大原まり子作品が唯一掲載されているが、続きもののようなので今回は読んでいない)。

 またまた怪奇幻想読書会に参加。
kimyo.blog50.fc2.com
<朦朧法>とも表現されるようにはっきりと物事が描かれないため、とらえづらいところもある作家だが、低い視座や間接的に事実を書く手法、理解不能の存在としての女性などなど多様な読み方が話し合われ、非常に楽しかった。 kazuouさん毎回ありがとうございます!