異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

イマジカBSキューブリック特集から『スパルタカス』『恐怖と欲望』

イマジカBSを観るようになったが、総力特集「キューブリック全部。」で長編全13作をやるようだ。未見の作品を中心に出来るだけ多く観ようかなあと思っている。

スパルタカス[復元版]』
 1960年の作品。ローマ時代の剣闘士ということで背景の時代は違えど「グラディエーター」への影響があるのは何となく分かる。映像やストーリーなど全体にオーソドックスなつくり(1959年作で題材も似ている『ベンハー』に近い印象。素人なのでよく分からないが機材や撮影方法などのせいなのだろうか)。キューブリックらしい斬新なカットといったような部分は目立たず(むしろ後述のアマチュア時代の『恐怖と欲望』には垣間見られる)、むしろ危険性のため現代では行われないと思われる肉弾戦の格闘シーンや人海戦術によるスケールの大きな合戦シーンなどは見応え十分。劇場で観たい感じ。奴隷であるスパルタカスは文盲であることが作品中でも示されているが、科学的思考や詩への関心が高いリベラル的人物として理想化されているのも作られた時代を反映しているようで興味深い。
 他、スパルタカスの格闘相手黒人剣闘士ドラバ役のウディ・ストロードは端正なマスクと見事な肉体美を誇り黒人俳優の草分け的人物であったようだ。アフリカンアメリカンとして初のNFL選手の一人だったらしく、まさにアフリカンアメリカン史において歴史的な役割を果たした人といえそうだ。
 クラッススが入浴し奴隷アントナイナスに体を洗わせるシーンは(意味深なカキとカタツムリについての台詞も含め)どうもアヤしい感じがしたが、実際そういう理由で初公開時には削除されていたらしいのでそちら方面の方々は要チェック(笑)

『恐怖と欲望』
 1953年の作品で(本人は封印した))自主制作のもので処女作にあたるらしい。敵地に取り残された兵士たちが相手の将軍を見つけ、死と引き換えに功を成すべきか悩むといった内容。アマチュアだけに平板な場面も多いが所々に目を引くシャープな映像がみられ、戦時の非人間性への冷徹な眼差しや虚無的な描写などはなかなかよい。謎めいた独白は何かの引用なのか気になる。