異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

『クリスマス・キャロル』ディケンズとドクター・フー ニュー・ジェネレーション“クリスマス・キャロル“

クリスマス・キャロル (新潮文庫)


 (本作とSFドラマ“ドクター・フー ニュー・ジェネレーション”の内容に触れていますのでご注意を)

 AXNミステリーでやっていた“ドクター・フー ニュー・ジェネレーション”14話中の第13、14話を観残していたので録画したやつを続けて観た。これググると11代目ドクターの話はこの後も続いていて謎が全然解明されていなかった(最後に本編の放送予定のない予告編まで流れた(笑)おいおい~)。でまあ展開的には第13話で一つのクライマックスを迎えるんだが、孤独な少女時代のエイミーの心の支えとなっていたドクターがいつまでも共にあるということがしっかり描かれているところが素晴らしいね。周囲には妄想と思われる夢の中のヒーローが(子供時代の)エイミーに語りかけるシーンがハイライトで、まさに「デス博士の島その他の物語」を彷彿させるシーン。製作者サイドの非日常的なフィクションに対する理解を感じさせて、うれしかった。(ただ続きはもちろん気になるんだが、購入しても視聴スピードが遅いからいつになったら最後までたどり着けるか不安でなかなかねーと無邪気な子供の心が遠のいてしまう・・・・(苦笑)
 で14話はクリスマス・スペシャルらしくエイミーたちも登場するものの基本的に1話完結もの。タイトルは‘クリスマス・キャロル’で、その名の通りディケンズ作品オマージュだった。とはいえ、大元の方もなんとなくあらすじを知っているだけで映画や舞台なども観たことがなくあらすじすら大まかにしか知らない。ただ家に積んであったのでちょっと読んでみた。ドクター・フーのは全面的に重ね合わせられているわけではないのね。ただ共通部分はいろいろあった。
 まずドクター・フークリスマス・キャロル’はケチで頑固な金持ちサーディクが雲をあやつる技術で権力を握る星にエイミーたち4000人が乗る宇宙船が不時着しそうとなるがサーディクに協力を拒まれさあ大変という話。ドクターがタイムマシンでサーディクの少年時代に干渉して人間らしい心を取り戻してもらおうとする。
 一方ディケンズの方は(知っている人には当たり前かもしれませんね)、やはりケチで頑固な金持ちスクルージが主人公。亡くなった相棒のマーレイの亡霊が現れ、これからスクルージの元に三人の幽霊が来るという。マーレイが生前行えず後悔した善行について知ってほしいというのだ。三人の幽霊にともなわれ、過去・現在・未来を見ることによってスクルージは貧しい人達への態度を改めるというのが大きな筋。人情ものや恋愛もので幽霊が出てくるのをあまりホラーとかファンタジーとかいわずに一般的なフィクションとして自然に受け止められていることが多いが、その源流はこの辺りかもなあ。悪役のはずの改心前のスクルージがマーレイに亡霊が(実際には順番に一人ずつ来る幽霊が)まとめて来てくれないものかとこぼす効率主義的(?)なところとかその一方で恐がりだったりするところとか、そこはかとないユーモアがあるところや幽霊のちょっとした不気味な描写などが見事。
 ドクター・フーの方は父親の代から冷凍睡眠技術で眠る人々の家族からお金を巻き上げているサーディクにドクターの過去への干渉で冷凍睡眠者の一人美しい娘アビゲイルと少年時代のサーディクにロマンスが発生することが改心のきっかけとなる。ロマンス自体はないディケンズとは全然違うわけだが、幽霊状態でホログラムとして現れるエイミーなどは原作をふまえてだろう。またディケンズでは中盤クリスマスに音楽を楽しむ人々の姿がスクルージの心をとらえるエピソードがあるのだが、ドクター・フーの方でもアビゲイルの歌声が暴れるサメをなだめ終盤のピンチを解決する鍵になるのも共通している。やはりクリスマスに音楽は欠かせないものなんだなあ。ちなみにアビゲイル役のキャサリン・ジェンキンスはクラシック系の非常に有名な歌手のようで(疎いので知らなかった)歌も本人のようだ。空を飛ぶ魚のイメージを中心とした映像もファンタジー感があって楽しい回だった。