順調に消化しています(笑)
『2001年宇宙の旅』(1968年)
毎回感心させられるねえ猿の演技、というのはともかくとして。いわずとしれた映画史上に燦然と輝く名画、だがあらためてどんな内容かといえば割合説明しにくいような。人類の待ち受ける未来を科学技術の進歩そして地球外の知的生命体との関わりという面から描いたといったあたりか。しかし説明を極力排除した表現は、物語や意味性という解釈を断ち映像体験という側面を際立たせる。おそらく巨額な費用を使ったシリアスなSF映画というのは1968年当時珍しく、全く新しいものと受け止められていたと思うし、後半の有名なスターゲートの抽象的な映像は同時代のサイケデリックな要素を感じさせる。この映画が嚆矢となり大作のSF映画が全く珍しくなくなった現代でも、その映像体験に古びた印象はほとんどない。様々な技術の進歩した今でもスターゲートのシーンはやはり興奮させられるが、むしろより古びそうな宇宙空間の無重力の表現、物体の軌道による重力の表現が初見と変わらす美しいことに驚かされる。キューブリックの比類のない映像感覚によるところが大きいのだろう。
『時計じかけのオレンジ』(1971年)
映画評論家の町山智浩氏が『<映画の見方>がわかる本』で本作品を「『2001年宇宙の旅』では一度も映らない、地上の実態を描いた映画」と評されていたが、まさしく前作である『2001年~』から一転して暴力的な若者が傍若無人にふるまう悪夢のようなロンドンが描かれる。『2001年~』では比較的抑えたトーンの前半の映像とスターゲートのコントラストが鮮やかだったが、本作品では装飾品などがカラフルでこれまた全く古くなくて現代的なのに気づかされる。
しかしマルコム・マクダウェルは結局これが代表作なのかねえ。
『バリー・リンドン』(1975年)
初見。上の2つの後に18世紀を舞台にした歴史劇がくるとはキューブリックのファンは驚いただろうね。実際観始めてすぐはらしくない作品だなと感じていた。しかし戦争によるむなしい大量の死、人間のエゴイズムなど一貫したテーマを、自然光や蝋燭を使い徹底してその時代の映像というものを構築しようとする執念ともいうべき美意識が凄い。古典絵画のような作品である。