異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

群像2014年2月号 岸本佐知子編“変愛小説集”

 

群像 2014年 02月号 [雑誌]

群像 2014年 02月号 [雑誌]

実は評判の『変愛小説集』の方は気になっていたけど(二冊とも)未読で、日本版の特集があったのでいい機会なのでこちらから読んでみることにした。(特集短篇の感想のみです)
「形見」川上弘美 工場で働く夫と子供たちに囲まれた平穏な日々、という描写から意外な話になる。さすがだなあ。
「韋駄天どこまでも」多和田葉子 ちょっとした言葉遊びをフックに軽やかに疾走する感じの小説。
「藁の夫」本谷有希子 タイトル通りの話(笑) この世界にはいろんなもので出来た夫がいるのかもしれないな。
「トリプル」村田沙耶香 二人組ではない三人組による恋愛関係が若者に広まった世界の青春小説でその性と心理が鮮やかに描写されている。
「ほくろ毛」吉田知子 今日も公園のカラスと目が合った。日常が少しずつ奇妙に揺らいでいく感じがいいなあ。
「逆毛のトメ」深堀骨 人造美女の活躍するスチーム&スプラッターパンク。もちろん著者流だが。
「天使たちの野合」木下古栗 飲み会の待ち合わせで女性に声かけられたが人違いであった。飲み会になっても、相変わらずその女性が誰かを待ってるのにきづいた。二作続いてなんじゃこりゃ(笑)。唖然呆然これも愛?
「カウンターイルミネーション」安藤モモ子 未開の地で未知の部族を求める男の話。特集短篇の中では愛の対象は普通であるが、濃密な描写が素晴らしく読み応え十分。
「梯子の上から世界は何度だって生まれ変わる」吉田篤弘 主人公は消えた電球をとりかえる<電球交換士>と不思議な女性とが出会う。これまた何とも表現しようがない作品だな。なんとなくオノヨーコのアートを連想。
「男鹿」小池昌代 靴がモチーフになっている。そういえば童話をはじめ靴の登場するものは多くフェティッシュな素材として普遍的に訴えかけてくるものがあると思われ、本作でも十二分に生かされている。
「クエルボ」星野智幸 退職後ぶらぶらと過ごす男性がカラスに餌を与えることを思いつく。これもカラスが出てくるけどまさかそこが終着点とは!
「ニューヨーク、ニューヨーク」津島佑子 最後にこれを並べたのか。個性的な作品の並ぶ中で、居心地の悪そうな少年と彼の母親と話す中年男性というシチュエーションで大体その関係が見えてくるオーソドックスな作品をここで持ってくることによって、胸に迫るものがあった。やられた。

 どれも面白かった。これ書き下ろしなのね。編者と作家のコラボレーションの素晴らしさにすっかり酔わされました。