異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

2024年5月に読んだ本や視聴したトークショー

 相変わらず低調。ただ月の後半は『デス博士の島その他の物語』再読にはまっていたけど(感想はそのうちに)。
◆『大宇宙の魔女』C.L.ムーア
 後で出た全短編の方をちゃんと読むつもりなので、まずは旧版の方をざっと流し読み。宇宙の無宿者ノースウェスト・スミスが遭遇する幻想的な出来事を描くシリーズ。セクシャルなエピソードが目立つのがこのシリーズの特徴のようだが、1930年代の怪奇幻想風味が強く漂うのが今ちょうどよい塩梅になっている。それにしても(今更だが)松本零士のイラストはぴったりだね。あと「真紅の夢」の原題はScarlet Dreamと知り、これは「緋色の夢」の方が感じがでるよなと思って新版を見たらそうなっていて、フフフそうですよねーってなった。
◆『スラン』A.E.ヴァンヴォクト

 1940年の作品でミュータントテーマの嚆矢ともされる。孤独な少年が世界を探すというタイプの小説ということでは、後のクラーク『都市と星』(1953年)とは科学性という点だけではなく随分洗練度が違う。複雑なプロットと評されるが、単に構築性が低いのではないかと疑う面も多々ある。科学性云々もとやかくいうタイプの作家ではないとはこれまで読んだ作品からも知っていたが、ところどころよく分からない表現もよくあった(浅倉久志訳にも関わらず)。おそらくこれは本人の資質だろう。しかし多々ある瑕瑾にも関わらず、ゴシックの系譜でもなく、ウェスタン小説の焼き直してもない、異様な熱気に満ちた筆致には独自のジャンルが生み出される大きな渦の様なものが感じられる。その大きな渦は50年代に黄金期を迎える。(結局映画の途中までしか観られていないけど、昔「地球へ」が影響を受けていたという話は的外れで、全然違う話だな。それならミュータントものは全て『スラン』の影響下になってしまう)
 さて配信でトークショーも観た。もう配信は終わってしまったのだが。
https://bbarchive240420a.peatix.com/
 5/21に配信終了なので、滑り込み気味に視聴。結構な割合で神島大輔さんのフィリップ・K・ディックトークでちょっと意表をつかれた。SF系イベントでも大活躍できるのでは。ボルヘスの話も面白かったなあ。

 引き続き長澤i唯史先生の指輪物語講義を聴講。
www.asahiculture.com
 当時のラジオや録音技術などメディアの発達が内容に現れているというのは目から鱗。あとゴクリ語が小説内で変化しているという精緻さにも驚愕。繰り返しになるがほんとうに毎回示唆に富んでいる。