というわけで先週行ってきた。
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ギンズバーグの詩をテーマに現代音楽の巨匠フィリップ・グラスにパンクの女王パティ・スミスがコラボレーション、翻訳に村上春樹・柴田元幸が加わるという豪華な顔合わせ(とはいえフィリップ・グラスに関しては詳しくないのだが・・・)。ステージの後ろに大きなプロジェクターがあり訳詩が出される。合間にはそこにギンズバーグのいろんな写真が映し出されるようになっている。基本構成はピアノと時に加わるアコースティックギターと朗読・歌とごくごくシンプルである。
最近は便利な時代なのでyoutubeにこの公演と同じ構成の動画やギンズバーグの朗読の動画がアップされている。
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先に書いてしまうと全く同じではないが、この動画の内容をベースにした公演である。ギンズバーグの詩の間にパティ自身の詩や曲とフィリップ・グラスの曲が挟まれるという構成になっている
英語の詩も朗読も初めてなのでその辺りをチェックしてから行った。また(前回のブログでも触れたが)新潮6月号のギンズバーグの訳詩も読んでおいた。
オープニングアクトとしてピアノのジェシー・スミス(パティ・スミスの娘)とチベットの音楽家テンジン・チョーギャル。「チベット死者の書」をテーマにした曲などだったようだ。もちろんギンズバーグがチベット仏教に傾倒していたということへの言及もあり、トリビュートの要素もあるのだろう。パンフレットにダムニエン(dranyen)とあるどことなく三線を思わせる弦楽器が印象的だった。
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ジェシー・スミスはパティの競演をたびたび行っているようで、youtubeでも見ることができる。
そしてパティ・スミスとフィリップ・グラスが登場。
パンフレットに従い朗読された詩を羅列すると(すいませんセットリストをまとめる習慣がないのでちゃんとしたセットリストが書けない代わりです悪しからず)、
・NOTES TO THE FUTURE 未来へのノート(パティ・スミス)
・WICHITA VORTEX SUTRA ウィチタ渦巻きスートラ(ギンズバーグ)
・THE BLUE THANGKA ブルー・タンカ(パティ・スミス)
・SUNFLOWER SUTRA ひまわりスートラ(ギンズバーグ)
・ON CREMATION OF CHÖGYAM TRUNGPA VIDYADHARA 賢者チョギャム・トゥルンパの火葬に臨んで(ギンズバーグ)
・MAGIV PSALM 魔法の聖歌(ギンズバーグ)
・FOOTNOTE TO HOWL 「吠える」への脚注(ギンズバーグ)
実は一番盛り上がるのは最後のパティ・スミスの曲People Have the Powerである。シンプルで力強いメッセージの曲は"Use Your Voice!"の呼びかけと共に胸に飛び込んでくるものがあってコンサートの締めくくりにふさわしいものだ。パティの言葉には凛とした強さと自由さがあり心を解きほぐしてくれるような開放感がある。このストレートな個性はロックの良さとシンクロしていると思う。
ギンズバーグ自身の朗読は例えば同じフィリップ・グラスの伴奏によるものでも、パティのものとは少し違った印象がある。
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もう少し内向的で繊細なところがある気がする。どちらがいいということではなく、パティの朗読はギンズバーグの詩の中にある世界の人々に訴えかけるような力を引き出すものがある。それは一種のロックらしさと思われるが、それでいてけっして押しつけがましくならないのがパティの個性であり、この素晴らしいコラボレーションの妙ということだろう。
言葉の持つ力、というものを実感できる大変素晴らしい公演だった。関係の皆さんに感謝したい。