異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

『醜聞の作法』佐藤亜紀

醜聞の作法 (講談社文庫)

醜聞の作法 (講談社文庫)

「ある侯爵が、美しい養女を放蕩三昧の金持ちに輿入れさせようと企んだ。縁談に反対の侯爵夫人は、誹謗文をパリ中に流布させ、相手を貶めるという策を仕掛ける。貧乏弁護士、ルフォンは高額報酬の誘惑に勝てず誹謗文の代筆を引き受けた。18世紀フランス文学の様々な要素を、簡潔な書簡体形式で精妙に鏤めた傑作。」

 とある侯爵が養女の輿入れを図るもその恋人と侯爵夫人の妨害を受ける。その武器は誹謗文(パンフレット)。それは18世紀版twitterかはたまたフランス瓦版かさてお立会い。
 書簡形式で綴られる軽やかな文体で、いつの世も変わらぬ人間模様が描かれ大部ではないこともあり、楽しく読める。しかし一見軽妙ではあっても、書簡形式のため、終盤に書き手により登場人物たちの状況が塗りかえられるというメタフィクショナルな仕掛けが面白い。さらには渡邊利道氏による明晰かつコンパクトな解説は、本作品の時代背景の持つ深い意味や著者の企みなど様々な妙味を味わう手掛かりを与えてくれる。その辺りはこちらこちらで歴史に明るくないブログ主にも興味深い内容だった。こうした人間の生々しい欲望みたいなものがフランス革命に至るエネルギーの元となったのではないか、というのが非常に面白いなあ。ちょっとこの時代に詳しくなりたいね。