異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん

丸屋九兵衛さんP-Funk関連トークまとめ(前半)

 あーもう10月になっちゃった。遅れたけど書くよ!
 7/15ジョージ・クリントン自伝『ファンクはつらいよ』発売を記念して、監修にあたった(カラフルな栞を4本もつけただけの仕事との噂があるものの、その4色はGeorgeの以前のカラフルな髪型に合わせた色で赤緑色盲らしいGeorgeのために赤と緑が入っていないというGeorge愛あふれる)丸屋九兵衛さんが、8月3日下北沢B&B(以下、B&B)で「雑学王・丸屋九兵衛が語るポップカルチャーとしてのジョージ・クリントン」、8月18日BIBLIOPHILIC & bookunion 新宿(以下union)で「丸屋九兵衛とギヴ・アップ・ザ・ファンクするパーラメント/ファンカデリックな一夜」と連続してトークショーを行い、いずれも参加したので時期が少しずれたが恒例の備忘録まとめ。内容は重なるところがあることや他の事情から合わせたまとめにすることにした。一部丸屋さんが9月10日ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフルに出演した「みんな大好き"Pファンク"特集」がよくまとまっていてようつべにもあるので→ https://www.youtube.com/watch?v=eDpW3UsHbTI ここを中心に導入にしてみた。例によって※印は当ブログ主の感想、間違いなどご指摘いただければありがたいです(そういうわけでいつものまとめにも増していろいろ混ざったものになっています)。

 この自伝、予期せぬ(!)ベストセラーNY Timesブックレビューで「本年度の音楽系書籍のベストの一つ」と評された(本国での発売日は2014年10月21日のようだ)ようにかなり話題になった一冊。当ブログでも紹介したが、話をかなり<盛っている>んじゃないかなというのもこの本の面白さで、「(自らを美化するのではなく)面白い方へ転がるのなら多少話を作ってもいいかな」みたいなノリがよいと丸屋さん・宇多丸さんがいわれていた。数年前丸屋さんのインタビューで出なかったSamuel R. Delaneyの名が記されているのは、実は「丸屋さんがジョージに教えたのでは!」(宇多丸さん)という話も。
 さてP-Funk、そもそも説明が難しい。ジャンルであり、クルーであり、率いる音楽集団の俗称でもある。主にはParliamentFunkadelicの二大バンドがまずは中心。で、ややこしいことにこの二つのグループ、メンバーがほとんど同じ。さらにはBootsy's Rubber BandやThe Brides of Dr. Funkensteinなどなどいろんなグループがあり、メンバーのソロ活動も含まれる。総勢(おそらく)50人ぐらい、さらにはメンバーのプロデュース作も入れるとより裾野が広がってしまう有様(そうなると人数3桁いく)。西海岸Hip hopの連中が音楽だけでなく精神的にも大きく影響を受けているのを始め、ヒット曲がほとんどないにも関わらず、根強いファンが多い(UK、フランス、ドイツ、日本等)。長い楽曲・展開なし・コテコテグチョグチョ(←宇多丸氏)というその音楽の人気の秘密について、丸屋さんはストーリー性にあるのではないかと指摘。P-Funkは全盛時代を通じて、SF的諷刺的なストーリーに基づくコンセプト・アルバムを発表し続けたおそらく唯一のグループ、とのこと。そこには正義側のStarchildやその黒幕Dr. Funkensteinや悪役Sir NoseなどのさまざまなキャラクターやBop Gunなどのガジェットが沢山登場する。悪役Sir Noseは踊らないファンキーじゃない、いわば野暮天(by宇多丸氏)なのだが、人気が出てしまいいつの間にか人気キャラになってしまうといった面白さもある。「音楽・ストーリーなどスケールがとにかく大きく、そこになぜか『宇宙的な宗教としてのFunkを崇め奉る」といった要素がある(自伝で「コンセプトはゲットーのスター・トレック」と記している)。コミカルなのもポイントでそこに出てくる戦いは、タケちゃんマンVSブラックデビルレベル(笑)。ステージにも宇宙船が登場(アポロ風、アルバムジャケットとは違っていた(笑)。扮装も変わっていて、ピラミッド型の人やオムツ一枚の人(※Gary Shider! R.I.P.)や花嫁姿のむくつけき黒人男性(その後Larry Blackmon、Dennis Rodmanらが継承)など。
 P-Funkの全盛時代は基本的に1975~80年、その時代はマニアしか聴いていなかった(その時代の日本ブラックミュージックファンはソウル指向・歌もの中心だったため)。90年代に再評価されたものの当時日本音楽評論の世界の英語力はpoor(Hip hopでもそうだったらしい)。折角Bootzilla(ブーツィラ)とBootsy自らゴジラの化身となってくれたにも関わらず、「ブーツィーランド」と勘違いしていた評論家がいたほどで丸屋さんから「渋澤龍彦の<ドラコニア>か!」とのツッコミ(笑)(※ちなみに当ブログ主はBootsyの知名度に割に<ブーツィラ>の語呂合わせに反応している人が少なかった時代をなんとなく覚えているが、ざっくり<ブジラ>の表記を言い出す関係者がいてもよかったのではと思っていた。不正確ではあるがゴジラのパロディとしてはわかりやすいということで。<ブーツィジラ>という表記もあった記憶があるが、ダジャレとしてわかりにくかったように思われた)。(※以下の部分はラジオでの話ではなくトークショーで出た話)ブラックミュージックレビュー(BMR)などの雑誌は最新の音楽紹介が中心だったので、ややP-Funkの活動が低下していた時期にはミュージック・マガジンレコード・コレクターズが再評価の役割を果たしていた。しかしP-Funk特集号の表記には間違いが多く、名のある音楽評論家もStar ChildとDr. Funkensteinを混同していたり、Sir Noseが改心してFunk化し自分のルーツのFunknessに気づくというエジプトネタのアルバム"Trombipulation"に頓珍漢なレビューがついているなど問題もあったようだ。(※この辺りの時代背景は非常によくわかる。ただその辺りを個人的にきちんと正確にP-Funk情報を深めることができなかったのは悔いが残っているのでファン側ではあるものの少々耳が痛くもある)。結局再評価が進んだのはParliament"Mothership Connection (Star Child)"をサンプリングした西海岸勢Dr. Dreの"Let Me Ride"のヒットから。

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元ネタParliament"Mothership Connection (Star Child)"
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(この辺は全て上記のウィークエンドシャッフルからなのだが、丸屋さんが「マザーシップをインパラ(車)に置き換え『乗せてくれよ』といったのは美しかった」と評し宇多丸さんが「P-Funkの宇宙観から、より自らの生活感に引き寄せた」と解説したのが面白かった。時代に伴う適切なアップデートということだろう)
自伝でもHip hopを強く支持、非常に一生懸命研究している様子が伺える。
 まず丸屋さんが英語翻訳・音楽業界に深くかかわるようになったのP-Funkがきっかけとのこと。P-Funkは「ラップより遅いが語りがやたら多い」ので、丸屋さんは基本的に英語をP-Funkで学んだということ。(unionではコラージュ作品のようなこの曲が例として挙げられていた。ちなみにこの曲は元々あった音源に自分の語りだけを入れてジGeorgeが1曲に仕上げたもので、その辺のクレバーな(ちゃっかりした?)ところはGeorgeらしい)


Parliament - The Landing Of The Holy Mothership

また90年前後にP-Funk系のコスプレをしていてコンサート会場でミュージックマガジンの人に声をかけられた。またBootsyのコンサートにいつもそのコスプレでいることから初来日時にもステージに上げられるなどお馴染みな存在となっていて、会う機会もあったのでBootsyのアルバム"The One Giveth, the Count Taketh Away"のコンセプトに習って、アーサー王の最後の部分を自らに当てはめた英語のオリジナル・ファンク・ストーリーを作ってBootsyに見てもらいほめられ、英語や文章に自信を持ったのがはじまりとのこと。またP-Funkコミックの関西弁翻訳を送ったのがBMR採用のきっかけ、ということでP-Funkと丸屋さんの縁は深いとのこと(コミックの話題はB&Bでも出ていて、たしかBootsy's New Rubber Band"Blasters's of the Universe"についていたコミックということだったと思う)。※コミックについてウィリアム・テル風と以前記載していたが、間違いだったので削除しました(2016年11月28日訂正)

 さてこのGeorge Clinton、音楽グループのリーダーとしては少々変わっていて、ヴォーカルではあるが歌は下手、楽器はできない、楽譜は読めない書けない、曲は書けるもののコーラス理論がわかっていないためにできるのはバリトンベースとそれ以外といったわけ方程度。とないない尽くしのお方なのだが、不思議なカリスマ性で(とても人格者ともいえないのに)人心掌握力があり、造語能力とコンセプト作りに長けていることで成功した(ただ床屋なので散髪はできる(笑)。「ニュージャージーで最も危険なストレート・パーマ屋」といわれ、<危険>とはギリギリまでストレートにするの意)丸屋さんは項羽と劉邦でいけば、劉邦であると(個人戦・組織戦とも強い項羽はPrince。当然ケン・リュウ蒲公英(ダンデライオン)王朝記』への言及あり!)。ちなみにTemptationsのリーダー(※Otis Williamsだろうか)も滅多にリードをとらないとのことで、黒人コーラスグループのリーダーシップの在り方なのかもしれないとのこと。
 さてここから2回のトークショーの話が中心になるが、上記のように音楽紹介の英語面での弱さから、P-Funkのストーリー的な側面への掘り下げ不足ということがこれまであり、それを補うところが丸屋さんの真骨頂。ということで、コンセプト的そしてストーリー的また歌詞的な面白さの紹介に焦点が置かれ、具体的な曲などへの言及はBootsyのアルバムの一部とParliamentのアルバムについてであった。
 それを順を追って整理していこうと思うが、総論的な意味で興味深かったのはまずBootsyとGeorgeのセンスの違い。Bootsyがネタにしてきたのはゴジラ、キャスパー、赤ずきんちゃん、ロビンフッド、キリスト、アーサー王、Countracula(※Count von Count セサミストリートの数字を数える人気キャラ。Count Dracula(Count = 伯爵)を計算の方とひっかけての名前。話し方にどことなく中~東欧訛りっぽい感じがある気がするがどうだろうか
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(〔模型などの〕輪ゴムを巻く)という例もあり、Bootsyのバンド名とも一致するではないか!)。ともかく全体に陽性なBootsyらしいコンセプトになんだなと感じる。
 一方Georgeの場合TVドラマ『アウターリミッツ』(冒頭の言葉「TVの故障ではありません・・・」が"Mothership Connection"のアルバム冒頭曲で「ラジオの故障ではありません・・・」としてパロディ化されている)。
The Outer Limits intro
"There is nothing wrong with your television set. Do not attempt to adjust the picture. We are controlling transmission. …"
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Parliament"P. Funk (Wants to Get Funked Up)"
"Do not attempt to adjust your radio, there is nothing wrong.
We have taken control as to bring you this special show.
We will return it to you as soon as you are grooving...″

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他にクローン人間、フランケンシュタイン博士などシリアス・ダーク寄り。
 またコンセプトという意味ではなんといってもParliamentFunkadelicはそうした要素が薄いのだが、宇宙を題材にしているParliamentに対しFunkadelicの題材はアメリカであるという丸屋さんの指摘は膝を打った(※ご指摘の通り軍や国家をパロディにしたものが多いのだ。そういう意味ではFunkadelicも十分コンセプチュアルといえるかもしれない)。

さて長くなってしまったので、実際のアルバム等については後半で。