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異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん

『銀河ネットワークで歌を歌ったクジラ』 大原まり子

読書(日本SF)

銀河ネットワークで歌を歌ったクジラ

“宇宙をあまねく旅している子男ガードゥスの率いるサーカス団が、4年ぶりに辺境の農園惑星フルフトバールにやってきた。今回の興業最大の呼び物は、地球に生まれ10世紀を経た今、言葉を喋り、宇宙を翔ぶクジラ。子供時代に別れを告げつつある多感な少年ジョシュアはクジラと出会い、大人の世界を垣間見るのだったが……リリシズムあふれる表題作をはじめ、SFの多彩な側面をみせる6短編を収録する本格SF作品集。”(amazonの紹介より)

 1984年の大原まり子初期短篇集。表題作を読んでいたのみで実質的には初読。
「銀河ネットワークで歌を歌ったクジラ」 10代の頃に読んだ時は甘く気恥ずかしく感じられたが、すっかりオジサンになってしまうといい距離感で読め、やっぱり世評に違わない傑作と思う。歌、少年少女などディレイニー作品を連想させる。
「地球の森の精」 一見大人しめのタイトルだが背筋の寒くなるホラーSF。これも傑作。
「愛しのレジナ」 歪んだ愛の形が描かれ、これもゾクっとなるような描写が素晴らしい。
「高橋家、翔ぶ」「有楽町のカフェーで」「薄幸の町で」 大原まり子はその後同時代的なもの(事物や人物)を意図的に織り込んで現代小説としての側面を強める作品を発表するようになるのだが、この後半3作に既にそういったアプローチが現れている。意匠としては鈴木いづみ作品を彷彿とさせるが、虚無感に反し織り込まれた同時代的なものの重さが大きい鈴木いづみとは比重が異なるように思われた。