いちおう子供向け叢書であるはずのミステリーランドから出た『神様ゲーム』だが、お構いなしのオチで読者の度肝を抜いてその曲者ぶりをいかんなく発揮した著者の同じ設定による続篇。2015年本格ミステリ・ベスト10の第1位を獲得するなど各種ミステリランクの上位を占めたようだ。まあ元々続きが期待されていたからね。
小学五年生の桑町淳は市内の殺人事件に関して、“神様”を自称する同級生鈴木太郎に犯人が誰であるかを聞く。肝心な質問をはぐらかしたりすることも多い鈴木だが、どう考えても不思議な力があり、どうやら犯人を正確に当てることができるようなのだ。何しろ彼は“神様”なのだから。
いわば狂言回しとしてこの鈴木太郎が古典においての預言者のように主人公たちに啓示を与え、犯人を探させる。ハウダニットにあたるだろうか(あくまでも基本線)。一種の倒叙ミステリを小学生たちが進めていくというパターンになるというのがなかなかユニークで、“神様”という設定はそのために用いられたのかなあなどと思ったりもする(あるいは素直に“神様”と認識して読めばいいのだろうか。いやそりゃあ宗教小説には読めないな)。<偶然性>の扱いはミステリでは難しいと思うが、大胆に使用されているのにこの人の場合あまり腹が立たないというか楽しめてしまうんだよな。本書は連作短篇集で、全体でも仕掛けがいくつかあるのも嬉しい。どれも面白いが「少年探偵団と神様」「バレンタイン昔語り」が特によかったかな。虚構性が強く荒唐無稽な世界が展開されながら、どこか薄ら寒い後味が残るのもこの人ならでは。
ちょっと確認すると、鈴木太郎は神降(かみふり)市から本作品の吾祇(あぎ)市に引っ越したと書いてあり、『神様ゲーム』は神降市が舞台で鈴木太郎は小四なんだよね。だから『神様ゲーム』の後に本書の話が起こっているということのようだ。