異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

『オットーと魔術師』 山尾悠子

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山尾悠子の初期短篇集でコバルト文庫から出ていたもので、時代的にはライトノベルじゃなくて“ヤングアダルト”かな。入手困難で現在なかなかの値段がついているが、以前に買ったのでもう少し安かった。とはいえ20年近くは積んでいた(苦笑)。

「オットーと魔術師」 濃密な異世界構築、といった印象の強い著者もこんなものを書いていたのかという軽妙で可愛らしいファンタジー。
「チョコレート人形」 ロリコンの天才科学者が理想の6歳のアンドロイドを作るというドタバタSF。細部に時代を感じさせるところもあるが、そのまま今でも通じる内容である。オープンなラストもよい。
「堕天使」 現代社会にやってきた堕天使の話。星新一っぽさを感じる。
「初夏ものがたり」 限られた時間だけ願いを叶えるビジネスを営む謎のタキ氏が登場する四話のシリーズ。全体の半分を占め本書のメインともいえる。短い中にミステリ的な要素がしっかりとはまっていてどれも完成度が高いが、ブログ主としては(世代的に)昭和らしい西洋文化への憧憬がどの話にも漂っているところがなんとも懐かしく感じられた。

 文体こそライトだが中身は濃い。嬉しい一冊だ。