異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

2026年3月はSF月間だった!SF資料館に行った!他読んだ本と観た映画などもろもろまとめて

 
 いやー「いつもSFだろっ」とツッコミがありそう。いやまあそんなことはおっしゃらずどうぞどうぞ。
 はい!名古屋のSF資料館に行ってきたよ!

sciencefiction.ddns.net
 やっておられる渡辺英樹さんはこちらが高校生の頃からいろいろ教えていただいてて。現在も時々お邪魔する名古屋SF読書会ではお世話になっています。が、渡辺英樹さん睦夫さんご兄弟とじっくり長時間お話しするのは初めて。ついつい調子に乗ってSFやロックの話で超舞い上がってしまい、ほとんど写真撮ってない(苦笑)。いやホントに楽しい時間でした。ありがとうございました。またお邪魔させていただきます!いちおうその少ない写真、というわけであまりに足りないのでSF資料館のyoutube<SF資料館よもやま話>をリンク。楽しいので是非皆様もご覧ください!
星ヅルマグカップ💛
スタージョン全集♪
youtu.be
 さて名古屋では徳川美術館にも行ったよ。庭もよかったんだけど、ひな祭り特集の可愛すぎる犬仲間たち見て。


 さて3月の読書。
◆『プロジェクト・ヘイル・メアリー』アンディ・ウィアー

 基本的に明朗なタッチのプロジェクトSFという枠組みから外れる事はないのだが、現代的な趣向や意外な展開があって飽きさせない。アイディアについては分からないところも多いが、科学的思考で解決が提示される王道のハードSF。SFを読み始めた時に楽しさを思い起こさせてくれる。近年では非常に困難になったタイプの作品ですが、アクロバティックなところや現代化がしっかりとはまっていて作者の技量には唸らせられた。
 で、映画も観ましたよ。ていうか映画公開に間に合わせて読んだということ。こういう原作のある宇宙SFはなかなか活字だけだとイメージするのが難しく、その分映画化の意義も大きい。となると、造形だとかスケール感だとか映像センスで印象が決まるわけだが、その点大変良かった。元々ストーリーはわかりやすい起伏があり映画化に向いているものでアドバンテージがあった気もするもちろん原作のダイジェスト、とならざるを得ないところもあって、その辺はやむを得ないところか。(その後柳下毅一郎さんらがやっているyoutubeのBLACKHOLEの特集も観たが、いわれてみると結構改変はあった。そういう意味では原作の印象を損なわず巧くポイントをとらえ映画化しているということなのかもしれない)元々ビートルズネタの作品で取り上げられる曲を事前予想したが、蓋を開ければ選曲は大分渋く、馴染みの薄い曲ばかりだった。ベタな選曲を慎重に避けていて、その分雰囲気を壊すこともなかった。なるほどその手で来たか。

◆『不死の島へ』クリストファー・プリースト われわれのいる世界と共通性を有しながら異なる世界を扱った<夢幻諸島>シリーズが、その構想へ直接つながっていく1981年の長編。基本的にグレートブリテン島を連想させる<夢幻諸島>の諸島内で起こる様々な出来事を扱う後年の作品とは趣が違い、主人公はわれわれが現在(とはいえ昔の作品なので当時ともいえる)の世界(つまりロンドンやイングランド)と<夢幻諸島>とをさまよう。何もかもがうまくいかない現実世界と不死になる権利を得た夢の(しかしどこか謎の多い)世界。<夢幻諸島>をどう表現するか手探りのようでもあり、後に確立される現実と幻想が錯綜し読者を幻惑する手腕はまだ生硬。その分、主人公の苦悩が生々しくも感じられる不思議な読後感であった。ともあれクリストファー・プリーストファンは必読の重要作だろう。
◇SFマガジン2012年8月号

 日本作家特集だが、興味のあるもののみ。
⚪︎フィクション
「はじまりと終わりの世界樹」仁木稔
 冒頭、熱帯で二名の人物によって会話が交わされている。一名が自らのプロフィールを語っている。ナチスも関わる問題で亀裂の入った両親、数奇な運命を辿った双子のこと。舞台は作者の一連の歴史改変シリーズ≪HISTORIA≫なので、作品内では異なる歴史が流れている(技術進歩としては近未来だろうか)。作品が発表された時代的にはイラク戦争の問題が影を落とし、万能細胞がニュースになり始めた時期(山中伸弥のノーベル賞受賞前だ!鋭敏なセンスに舌を巻く)。政治、文化、先端技術が織り込まれた複雑な物語は、十余年経ち迷走を深める現代からみて驚くべきことに全く古びていない。勝者のない混沌は、『虐殺器官』の先を描いているといえるだろう。
⚪︎ノンフィクション
・『惑星ソラリス』理解のために 忍澤勉
 2012年6ー8月号に続けて掲載されたソラリス論のまとめての感想。昨年のTV放送で(ようやく)タルコフスキー「惑星ソラリス」をちゃんと観たので、これをようやく読んだ。非常に細部まで丹念に検証されていて読み応え十分。タルコフスキー映画も一部しか観ていないのでわからない部分はあったが、非常にパーソナルな作品とわかる。未読だが、この論考は「終わりなきタルコフスキー」にも反映されているようだ。たしか「SF評論入門」所収のソラリス論とも関連があったはず。原作が曲解された映画としてイメージが定着した映画「惑星ソラリス」をめぐってレムとタルコフスキーの和解がこの論で行われたのだ、といいたかったが、そのような人間中心主義的な視点ではレムが絶対に納得しないだろうとも思った。
◆”Let All the Children Boogie" Sam J. Miller 

Xでのやり取りをきっかけにちょう久々に洋書を読んだ。当ブログ犬のお気に入り作家サム・J・ミラーのデヴィッド・ボウイオマージュ中篇。洋書能力はいたって低いので断片的な感想のみ。作者は1979年生まれとリアルタイムボウイファンよりは少し下の世代になるがStarman、The Passengerを聴き込んできたんだなあと感じるような作品。StarmanとOver the Rainbowが似ている点の指摘があって、これは大きく見逃していたなあと思った。他にWhen Doves Cryの歌詞も入ってたり、ラジオ文化への思いがあったり、ボウイオマージュ以外の要素も結構ある。ちなみにBlue Moonも重要なモチーフっぽいが、下記の映画「ブルームーン」では(映画自体が独特のものだったので)本作を解読する情報は(今のところ)増えていない。
 さて映画。プロジェクト・ヘイル・メアリー以外にも観たよ。またSF。
・「オビ・オバ 文明の終わり」(1985年)
・「ガガ 英雄たちに栄光あれ」(1986年)
 ピョトル・シュルキン監督。どんな人か全く知らなかったが、「ポーランド暗黒SF≪文明の終焉4部作≫」とかいわれちゃうと気になってくるじゃないですか。

unpfilm.com
 迷った分、まだ2作。他2作もなんとか観たい。で、徹底的に鬱展開のディストピアもの「オビ・オバ」、オフビートでグロテスクユーモア炸裂の「ガガ」と全く異なる作品。裏びれた未来像と冷え切った空気感に満ちた画面はなかなかインパクトがあった。いずれも強烈な諷刺のセンスがあって監督自身にも興味を覚える。
・「ブルームーン」(2025年)

eiga.com
 最後に非SF映画。主人公はロレンツ・ハート。1895年生まれの名作詞家で、作曲家リチャード・ロジャースとコンビでロジャース&ハートとして活躍。しかしロジャースの方はその後オスカー・ハマースタイン2世とのコンビ、ロジャース&ハマースタインとしてさらに大成功、歴史的にはこちらのコンビの方が有名、ということのようだ(この辺もBLACKHOLEの受け売り)。で、映画の舞台はロジャースがコンビを変えていく微妙な頃合い。古いミュージカルだとか、この辺の時代が最近気になってきているので観た。ということで予備知識ゼロで行ったが、大胆な構成に驚愕。これは同じような体験をしていただきたいので具体的には触れない。とにかく出演者の演技力が核となるタイプの作品で連想したのは「おとなのけんか」(2011年)。とはいえ、「ブルームーン」の方ははイーサン・ホーク一人への負荷がより大きい。それでも脇役の絶妙な存在感といい、完全に成功している。とにかくいいものを観たなあという気分。音楽も素晴らしく、ピアノで絶えずスタンダードナンバーがかかっているところとかがいいんだよね。まだやっているようなのでおすすめ。