異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

『エイルマー・ヴァンスの心霊事件簿』 アリス&クロード・アスキュー

エイルマー・ヴァンスの心霊事件簿 (ナイトランド叢書)

楽しい≪ナイトランド叢書≫のシリーズ。今回はこれまた嬉しい心霊探偵ものだ。

「侵入者」 バーストーリーでエイルマー・ヴァンスの語る事件の有様を聞き手であるデクスターが記述するという黄金のパターン。キター!って感じだよね。しかもやめとけ的な<降霊の儀式>まで出てくるという。
「見知らぬ誰か」 「侵入者」で最後に触れられていた<緑の袖のきみ>の話をするかと思いきや、ちょっともったいぶって別の話。自然の中に取り込まれていく魅力的な娘というイメージが印象的。
「緑の袖」 エイルマー・ヴァンスの心をとらえた<緑の袖のきみ>。お馴染みのパターンだけど映像がパッと現れるところがいいんだよね。
「消せない炎」 手書きの詩集に隠された秘密。これが集中No.1かなあ。書物がモチーフになっているし夫婦による共作ということも背景に感じられるところがある。
「ヴァンパイア」 タイトル通りの内容。(ここでの美女は「遠い南国の美女という雰囲気」「イタリアにしかいないような(中略)赤毛」と表現されていることをメモっておく)
「ブラックストックのいたずら小僧」 これはポルターガイストもの。ひねりが効いている。
「固き絆」 大佐の娘とパイプオルガンにまつわる因縁。これも映像的なところが素晴らしいなあ。
「恐怖」 他の作品でもその要素があるんだが館もの。ミステリ的なところも入ってるんだよね。

 言及し忘れたが、解説にもあるように「消せない炎」から語り手デクスターを相棒にする心霊探偵スタイルが固まり、またデクスターに千里眼の能力があるというのもいいアクセントになっている。描写は映像的だが、どれもロマンス要素があるところとストーリーテリングの見事さで同時代の心霊探偵ものと比べておどろおどろしさが控えめで洗練されているように感じられそこが長所だろう。連載されたのが1914年のひと夏だけだったという儚さも味がある。