異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

2026年1月に読んだ本

◆『シナバー 辰砂都市』エドワード・ブライアント
 オールドSFファンにはその名を知られた幻の作品。退廃的な美しい未来都市の連作、ということで『ヴァーミリオン・サンズ』と比較言及されてきたが、全体的な印象としてはよりオーソドックスな展開を示す。時代的な価値観などで古びたところや作品のバラツキもあるが、「クーガー・ルー・ランディスの伝説」「ヘイズとヘテロ型女性」「シャーキング・ダウン」など後半のやや長めの作品にユニークなセンスがみえる(LDG論争でディッシュがクサしたのは気の毒)。ただ高い技量を誇る、というまでのタイプであるかは疑問で、その分、訳されたことに感謝したい(世代的にまたLDG論争が気になってきていることもあって)。
◆『溺れる少女』ケイトリン・A・キアナン

 繰り返し旋回するような独特の語りを用い、神話や伝承あるいは事故や事件、様々なジャンルの創作物を引用するスタイル。ヘヴィではあるが内省的で陰鬱なトーンに魅力があり、特に虚構が立ち上がり人々に影響を広げていく過程のアプローチがロジカルなところが大きな特徴となっている。これは小説を書くことについての小説なのだろう。
◆『肉は美し』アグスティナ・バステリカ

 人肉食が制度化されたディストピアが描かれショッキングな描写も少なくないが、むしろ主人公の陰鬱な心理描写で読ませていくところもある。終盤が近づく中どう話をたたむのか疑問になっていたが、着地点でそうきたかと軽く衝撃。なかなかインパクトのある作品である。
◇SFマガジン2020年2月号

 雑誌は気になったもののみ。この号は中短編2作のみ。
「故郷へのまわり道」グレッグ・イーガン
 宇宙サバイバルもの。基本的に完成度の高い作品ではあるが、あまりにも王道のハードSFで、イーガン作品であることに逆に驚いている読者の感想をネットでも結構見かける。全く同感。
「本の泉 泉の本」高野史緒
 古本幻想小説というか。本好きには日常的な光景が作品内に封じ込められ、美しい。他にも本関連の短編があって一冊になっているようだ。
◇SFマガジン2025年2月号

 中短編3作の感想。
〇フィクション
・「アフター・ゼロ」グレッグ・イーガン
 地球温暖化が加速した近未来、それを食い止めるプロジェクトを経年的追っていく。シリアスなテーマが現実に近いテクノロジーや社会の動きと共に描かれる。トンデモプロジェクトが人気を集めるエピソードの皮肉が効いてる。「故郷へのまわり道」と共通し地続きのアイディアを利用しているタイプの近年作か。同じく近年作でも「堅実性」は細かく科学的背景が語られない飛躍した発想の作品で、双方のものがあるのだな。
・「陽の光が届かなくなった街」ナオミ・クリッツァー
 こちらは太陽の光が届かなくなって立ち行かなくなった世界の話。崩壊後に、社会を再構築する試みが描かれている。正直内容はそれだけで驚くようなものが待っている作品でもないのだが、分断ばかりが目立つ昨今の日本や世界情勢の中でも、こうした視点は重要であろう。
・「やけにポストの多い町」大木芙沙子
 非デジタル化で知られるとある田舎町は通信手段にポストが利用されていた。非デジタル化というとスピリチュアルな領域に踏み込みがちだが、そこがひとひねりされ不可思議な世界が描かれている。終盤ある程度背景が説明されるところは評価が分かれるところかもしれない。