異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

丸屋九兵衛トークライブ Q-B-CONTINUED vol.7 with サンキュータツオ【帰ってきたモンキー Return of the Monkey King】!

 申年初めてのQ-B-CONTINUED、ということで猿にちなみ西遊記特集、ちょっと遅れてまとめ。今回は場所が代わってやや見つけるのが難しいRedBullStudios。
 挙手で判明したのは初めてのお客さん多いとのことでタツオさんから
「今までのお客さんどうしての?早速離れたの?」とのツッコミ(笑)
 さて、孫悟空は世界的に有名なのか。丸屋さんのお知り合いドミニカ系アメリカ人デイヴィッド・バチスタ氏(中国の古典を原書で読める方!で、著者から送られたと思しき中国歴史ファンタシーとジュノディアスの「オスカーワオ」を自慢気に持つお写真が素敵)によるとアメリカでは三国志水滸伝より西遊記(Journey to the West)が知名度があるとのこと。本が読まれているわけではないが、映画が知られていると。
 ドニー・イェンはイケメンなのにThe Monkey Kingですっかり顔のわからないメーク。しかもシリーズ次作では1作目で敵役の牛魔王を演じていた役者が孫悟空だというアバウトさ。
 日本では堺正章夏目雅子のテレビドラマの西遊記が知られるが(調べてみると40年近く前だったりする・・・時の経過コワい)、これによりイメージが誤って定着したものもある。例えば沙悟浄は日本では河童のイメージだが本来そうではない(そういえば河童は日本の妖怪だもんなあ)。
 さて西遊記についてだが唐の時代に玄奘三蔵が天竺に行って仏教の経典を持ち帰ったという実話が元。宋の時代に書かれるようになり、酒場で講談などが盛り上がっていた(瓦舎というものがあったらしい)。宋代は中華料理の基礎が出来たり文化的な発展が大きい時代だったが、そういった夜の街(不夜城)が世界で初めて登場し、木材の伐採も激しかったらしい。そして元の時代にまとめられ、明の時代に書籍化された。永楽帝は大ファンだったらしい。長い時代かかっているので、道教儒教・仏教が混然一体となったものになっていて、中国で愛されることになっている。
 ここでキャラクター金角と銀角の話が少し。老子の弟子gone badだそうです(笑)
 さて順番に主要キャラクターの話。
 まずは玄奘aka三蔵法師(602~664年)。英語名 Triptaka(triが三。サンスクリット語か)。20代で旅に出たのだが、話が出来たころの時代ではおじさんイメージで虎を連れていた。虎については西に向かうからで、これは四神から。話では国を挙げて送り出されたことになっているが、実際は国を出ることは許されていない時代だったのでアウトローであった(帰国時には重要な書類を持って帰ったので歓迎された)。なぜ孫悟空の觔斗雲で玄奘を乗せて行かないかについては、九回も前世があってカルマがあって重くて運べないから(これは「パタリロ西遊記」にも出てきた気がする)。九回の前世で一回も射精がしていなくて徳が高い。なのでその肉を食べると長寿になるので妖怪が狙っている。九回の前世で同じように旅をしているが必ず同じ妖怪に食べられて失敗。その妖怪が沙悟浄。十回目で初めて味方になった。
 で沙悟浄aka沙和尚について。元・天上軍<捲簾大将>。英語名 Sandy。九個の骸骨がついているネックレスはみんな玄奘。英国では上記の昭和「西遊記」ドラマがカルトクラシックなので、岸部シローが一部でSandyと呼ばれているらしい。<捲簾大将>天の帝の親衛隊隊長。手を滑らせて器を割ってしまったので下界へ落された。ここで中華圏などの変なおもちゃのコレクション「いんちきおもちゃ大図鑑」という本が紹介。西遊記ロボットも登場。そこでは沙悟浄のは落ち武者のような髭もじゃのおじさんのイメージ。タトゥーの写真もあり、髭もじゃで似たような感じ。丸屋さんの推測では元の時代にいた中央アジアなど非漢民族の仏教僧侶のイメージがあるのではとのこと。古い西遊記の絵では水中の生き物のイメージで、原文で「青黒い顔で目がギョロギョロ」とありヨウスコウワニあるいはヨウスコウイルカが元ともいわれる。一方、沙の字は砂で玄奘が苦労したのは砂漠であり、宋時代の西遊記では沙悟浄の原型と思われる深沙大将(じんじゃたいしょう)が出てくる。ゼイラムっぽいとは丸屋さん(たしかにかなり怖い)。虎の後に深沙大将会っていてその後に猿(悟空)と豚(豬八戒)。玄奘に弟子入りして頭を剃ったら、いきなり和尚っぽくみえたのであだ名が沙和尚。
 次に豬悟能aka豬八戒。元・天上軍<天蓬元帥>。英語名 Pigsy。こちらは本当に水軍、天の川水軍を指揮する海軍提督。イメージ通り女癖が悪く酔って宮廷女官にからんだという前世があり、地上に落されたが誤って人間ではなくメス豚の胎内に入り、その母親の腹を噛み破って出てきたというエイリアン的なキャラクター。生まれた瞬間、豚兄弟を皆殺し。映画エイリアンの登場シーンが俳優に知らされていなかったのでみんなガチで驚いていたというこれまた重箱隅的小ネタを挟みつつ、さらに兄弟殺しということでウィツイロポチトリにも通じるという展開。さらにウィツロポチトリがシャアやプリンスシャーキンにもちょっと似ているのではないかというこの辺は丸屋さんらしい連続アクロバティックな流れ(笑)。ここで息子と知り合いという丸屋さんがサモハンキンポー(洪金寶)一家の名前について。洪天明、洪天祥、洪天照ということで天の字が共通。玄奘の弟子も本来は悟の字が共通していて、豬悟能が正しい名。あだ名の八戒とは五葷三厭から。食べてはいけないもので、五葷はニラ、ニンニク、ネギ、タマネギ、ラッキョウでおそらく精がつきそうなもの。三厭は犬(哺乳類):信じる心が強いもの、ガン(雁)(鳥類):礼儀正しいもの、ボラ(魚類):忠義の心に篤いもの。丸屋さんの記憶ではボラに代わりヤツメウナギだったとのこと。こっから例によってヤツメウナギの生命の神秘の話へ脱線、バッカルコーン!(笑)。ここで前半終了。

 さて後半。以前「米粒写経ガラパゴスイッチ」で西遊記のネタが語られた時の導入ネタ「パンツの中に絶滅危惧種のサルを隠していた男」の話から。このインドから運ばれそうになったゴラム似のホソロリスに先立ってThe Monkey、The Monkey King、The Beautiful Monkey King、The Great Sage, Epual of Heaven(齊天大聖)が中国とインドを行き来したのである、というのが『行きて帰りし物語」という副題の訳。
 で孫悟空aka孫行者。名前の変遷は下記のように石猿→美猴王→孫悟空→齊天大聖。英語名はもちろんMonkey。
 呼び名の変遷がある。最初は石猿といわれ、水簾洞という猿たちの楽園を見つけ猿の王様美猴王になって何百年か過ごすが虚しさを感じて修行して仙人になろうとして弟子入りした時にもらった名前が孫悟空。その後齊天大聖。そもそも孫というのは猻(けものへんに孫)が猿の意味があって、けものへんを取ったみたいな流れではないかとのこと。また美猴王の猴の字も猿の意味があるらしい。一般に(TVドラマのイメージで)「石から生まれた猿」という印象があるが、実は石そのものでたまたま猿の形になっていたところに猿の魂が宿った。材質はダイヤモンド(笑)。ここで昔の西遊記の竈が爆発している絵(こんな感じ 
https://twitter.com/qb_maruya/status/713928171901493249)
。閉じ込められた竈が爆発したけどダイヤモンドだったので大丈夫とか倒れているのはたぶん最高級の竈の持ち主老子らしい(笑)。横にいる二人が金角と銀角(リンクではわからないけど)。この時の恨みで孫悟空に復讐したのではないかと。その猿型ダイヤモンドである孫悟空英語版タイトルThe Monkey and The Monk(猿とお坊さん)について(The D.O.C.
and The Doctor
に似てると。そこから丸屋さんが字幕監修をした映画Straifht Outta Comptonの話に入り、The Day Eazy-E Diedという著者のサイン入り小説の表紙(この日がEazy-Eの命日だったので・・・)。でトークショーにあたっていつも計算ネタを入れるという丸屋さん。N.W.A.仲間Ice Cubeの'I Got to Say It Was a Good Day'という何気ない平和な一日を描いた歌詞から実際のある日を特定した人がいることに感動した丸屋さん、孫悟空の年齢を特定してみようと思い立ったとのこと(1992年1月20日らしい(笑)。まずは孫悟空の本来の寿命が342歳。これは342歳で一回死ぬので。それで黄泉の国に行くが閻魔大王を殴ったり死者台帳を塗りつぶしてもどるが、天上界にその事が知られ問題になるが捕まえるのも大変だから懐柔しようという話が出て天上界で弼馬温(馬の世話がかり)となる。ただ仕事内容に気づいた孫悟空は半月でやめてしまうが、天上界の半月は15年。もう一度天上界から別の役職を与えられて天上界に呼び戻され100年。蟠桃園(桃を食べようぜ大会=桃を食べると1000年寿命が延びる?)で大暴れ、全部桃を食べてしまい天帝と戦ったりして、お釈迦様の手の中から出られず五行山に閉じ込められて500年。そこから三蔵法師に出会うがその時957歳。三蔵法師孫悟空の出会いが史実で玄奘が長安を出発した629年だとすると、孫悟空は紀元前328年生まれ。中国では春秋戦国の戦国時代、インドはマウリヤ朝成立直前。釈迦の入滅は紀元前500年くらいとすると実は大して大先輩でもない(笑)。また如意棒はもっと古い。古代中国皇帝兎が黄河の川底を固めるために使ったという8トンぐらいの重さがあるもので、兎は紀元前2070年頃の人物で如意棒もその頃からあるはず。如意棒はその後竜王が持っていて、武器としてもらった。普段は小さくして耳の中に入れているが、質量保存の法則で(笑)8トンだからバランスとれんのかと丸屋さん。孫悟空自身も伸縮自在ということで(ある意味必然の)ウルトラセブン「悪魔の住む花」(ダリー)の話へ。インドのヒンドゥー教説話ラーマーヤナの主たるキャラクターの一つであるハヌマーンも伸縮自在らしい(インド南東部にあるハヌマーン像41㎜=2.28ガンダム(長さでは1ガンダム=18、重さは1ガンダム60トン(笑)。ハヌマーンは猿であり神(ラーマーヤナにもオールドスポック的な感じカメオ出演してるらしいぞ)。ラーマーヤナで主人公であるラーマの弟が瀕死の重傷を負って、効く薬草を取りに飛んで行ったはいいがどれか分からないので山ごと運んだという。いたずら好きなハヌマーンは果物と間違えて太陽を食べてしまったりもしている。その時一回死んで復活しているが、一つだけ呪いがあり「自分の能力を忘れてしまう」。そしてタイのウルトラマン版のハヌマーンの話に(著作権の問題があって日本では観られないようだが、ちょっと気になるよね)。タイは仏教国でハヌマーンヒンドゥー教圏だけでなく仏教圏でも愛されている。ハヌマーンはやんちゃで猿軍団の長で巨大化可能、飛行可能。また超能力を持たない主人公ラーマを守るということで孫悟空の元はラーマーヤナなのではないか。さらに冒頭登場したドニー・イェン関連で、そもそもカンフーの元について。Kalaripayattu(カラリパヤットゥ)というインド南部格闘技、蛇や猫のボーズをする蛇拳や猫拳を連想させるもの。さてこのカラリパヤットゥを中国に持ち込んだのが達磨。南インドの第三王子で仏教の教えに目覚め出家して中国に渡り禅宗のみならず格闘技も伝え、それが少林拳にもとなった。ということで顔もわからないメイクになったドニー・イェンだが、カンフースターが西遊記孫悟空を演じるもの妥当なところがあるのでは。中国では孫悟空は物語で愛されるがゆえに神様として信仰されている存在でもある。仏教の教典を求めるストーリーのキャラクターが道教の神であるという不思議はあるがこれも中華圏におけるインド文化の影響の大きさを物語っているのではないかとのこと。ともすると大航海時代からの西洋による影響的な視点から語られがちな世界史だが、紀元前から世界各地の交流はあったということがわかると。ということでインド起源の猿の神様が中国で別のキャラクターとして生まれ変わり、インドまで旅をして今度は中国で別な神様となる。何往復もしている孫悟空は中国にとってもインドにとっても<帰ってきたモンキー Return of the Monkey King>ということでトークはお開き。
 この模様はYoutubeにも上がっています。
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 その後のお茶会も楽しく参加させていただきました。また次回楽しみにしてまーす!