2026年2月に読んだ本
やはり低調(というかもうこの程度のペースなのでは)
◆『水脈を聴く男』ザフラーン・アルカースィミー
オマーンの文学作品。水が貴重な地域で、「水脈を聴く」ことができる男の歩みがつづられる。特殊能力を持つ人物の孤独や社会との行き違いといったテーマは既視感をともなうものでもあるが、静謐で幻想的、染み渡るような文体で紡いでいく。派手さはないが、人々の暮らしの息づかいが伝わる作品となっている。
◆『頂点都市』ラヴァンヤ・ラクシュミナラヤン
超格差社会をめぐる、連作短篇のディストピアSF。題材としてはすごく新鮮というほどでもないが、インド作家という地域性と現代らしい視点から、一味違ったものとなっている。2020年デビュー作ということでぎこちない点などもみられるが、「エチュード」などは強いパッションが感じられる佳品で、今後の活躍が期待される。
◇SFマガジン2012年7月号
特集スチームパンク・レボリューション。監修の小川隆による特集解説にはジェフ・ヴァンダーミアの名前がたびたび出てきて、<ネオ・スチームパンク>でも重要人物ということなのかな。
⚪︎フィクション
「マッド・サイエンティストの娘たち」シオドラ・ゴス
この後<新☆ハヤカワ・SF・シリーズ>で刊行されているシリーズの原型らしい。ヴィクトリア時代のロンドンを舞台に様々なフィクションの主人公の関係者が集う、スチームパンク王道の作品。ほぼ登場人物の紹介だけの話だが、フェミニズム的視点もふまえユーモアたっぷりで楽しい。
「リラクタンスー寄せ集めの町」シェリー・プリースト
『ボーンシェイカー』と同設定の小品。紹介といった趣旨での掲載はよくあり、読みやすくはあるが、一場面といった感じでこれだけではなんとも。
「銀色の雲」ティム・プラット
雲を掘って銀を集める飛雲船というのが出てきて、どうやらこの世界は浮遊性や雲素を集めて飛んでいるらしい。銀が大きな力を持つというのは『バベル』でもあって、スチームパンク的な想像力に銀は重要なのだろうか。
「ぜんまい仕掛けの妖精たち」キャット・ランボー
ぜんまい仕掛け作品の製作に没頭する婚約者と自分をよく思わないその父親に苦しむ青年。これは特に目立つアイディアがあるわけではないけど時代的なムードとストーリーがよい感じ。紹介は進んでない作家だけど。
「ストーカー・メモランダム」ラヴィ・ティドハー
ブラム・ストーカーが主人公で虚々実々の様々な登場人物がからむ。この賑やかさがスチームパンクの楽しさだよねえ。ブックマンというワードが出てくるが、関連があるのかな?(ブックマンシリーズ未読)
「奇跡の時代、驚異の時代」アリエット・ドボダール
<シュヤ宇宙>ものの作者だか、これはまた別のアステカで産業革命が起こったという設定の短篇でどうやらこの系列の他作品もある様子。
特集外作品
「河を下るダンス」ロバート・F・ヤング
作者らしいセンチメンタル全開の小品だが、構成や文体がしっかりと溶け合って独自の世界を形成している。あまりこういうものだけだともたれるが、たまに読むには良い(まあヤングはこの系統じゃないものも書けるんだけどね)。簡略でもいいのだが解説がないのはちょっと惜しいかな。
◇SFマガジン2006年7月号
太陽系探査SF特集。
⚪︎フィクション
「青き深淵へ」ジェフリー・A・ランディス
有人天王星探査SF。近年この類の正統派宇宙探査ものが読みづらくなってしまった(一定のフォーマットから逸脱しないため、どれも似たような感じの印象を受ける)が、この作家の作品が一番楽しく読める。描写が巧いせいかなあ。短いがしっかりとまとまった良い作品である。
「暗黒のなかの見知らぬ他人」サラ・ゼッテル
有人小惑星探査のミッション中にトラブルが発生、クルーの中には自殺者も出る絶望的な状況、という宇宙サバイバルもの。追い込まれたクルーたちの様子がリアリスティックに描かれる。翻訳された長編もあまりに話題にならなかった印象もあるが、非常に緊迫感のある作品で面白く、技量はたしかと思う。 「ロキ」ラリイ・ニーヴン
とある星での海中に暮らしていた生物の長い進化の歴史が綴られる。そんなにはまった記憶はないニーヴンだが、変わった生物を題材にファンタジイとハードSFを融合させるという得意分野で筆が冴える。これも短いくまとまっていて楽しめる。
「ワイオミング生まれの宇宙飛行士」アダム=トロイ・カストロ&ジェリイ・オルション
この号と次号の分載。別所に感想を記載予定(同名のアンソロジーを購入済なので<長いこと積んでるがそれはどうか)。
⚪︎ノンフィクション
・センス・オブ・リアリティ 金子隆一
金子隆一と香山リカのコーナーが同じ名前で1ページずつなんだな(今まで気づいてなかった)。金子隆一の方のコラムで鳥にも言語があるという話題を20年も前に扱っていてさすがだなと思った。(去年くらいにシジュウカラの"言語"を解明した鈴木俊貴氏の話を知ったばかりなので)


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