異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

2025年10月に読んだ本

 読書量低下に加えてブログ更新も停滞気味。
◆『神州纐纈城 』国枝史郎

 古典だが初読。因果と耽美、美文に大きな魅力があり、伝奇小説に大きな影響を与えたというのもよくわかる。ゴシックからの影響など、同時代(初出1925-26年、刊行1933年)での西洋文化の受容はどうだったのか考えさせられる。
 以下SFマガジン拾い読みが続く。
SFマガジン2011年6月号

新海誠パオロ・バチガルピ特集。
○フィクション
 バチガルピの短篇2作。
「砂と灰の人々」 遺伝子技術の進んだ未来世界で稀となった<本物の犬>を拾った若者たちの放浪生活が描かれる。特集解説で言及される作品を読みアドヴァイスしてきたエリスンの「少年と犬」の(大きな)変奏だろうか。なおエリスンの「ジャンル作家のレッテルを貼られるな」に従い非SF長篇3本に取り組んだが、全て没になったとのこと(何かを読むことが大変困難なエピソードだな)。
「ギャンブラー」 近未来のアメリカ、閲覧(拡散?)の少なさに悩む、ラオス出身の生真面目なネットニュース記者が主人公。センセーショナリズムで肥大したネット社会、環境問題など現代と地続きの未来の課題をつきつける作者らしい熱さのある作品。ヘンリー・デイヴィッド・ソローへの言及もあった。最近はどのような作品を書いているのだろう?
SFマガジン2023年2月号

 AI特集。
○フィクション
 特集関連作品。
「わたしのかきかた」文:野崎まど/絵:深津貴之
 AI絵本ということで、AIを使って制作されたもの。メイキングも含め、新時代にあれこれと思考をめぐらせることができる。
「純粋人間芸術」安野貴博
 この号の後に議員として当選した人だが、アートとAIをテーマしたものとしては良くも悪くも普通。短い作品で、当然ながら作品から政治姿勢を占うのは難しい(分量があっても難しいか)。
 以下特集外作品。(「開かれた世界から有限宇宙へ」は既読)
「忘れられた聖櫃-ボットたちの叛乱-」スザンヌ・パーマー
 2019年2月号(前記)の同じシリーズ。だいたいどんな感じだったわかっていてさらに流し読み(失礼)。
「家だけじゃ居場所(ホーム)になれない」L・チャン
 シンガボール出身作家。シュートショートの長さで、淡々とした描写の中に管理社会の恐ろしさとわずかな光が描かれている。
SFマガジン2024年4月号

 BL特集。
○フィクション
 特集関連作品。
「聖域」榎田尤利
 BL作家で流麗な筆使い。ただ、高度に進化したテクノロジーで満たされない心というのは本誌だと少々書かれ過ぎたテーマだよな。
「監禁」莫晨歓(モーチェンホワン)
 そのまま読むと特に珍しくないBL小説と読めるが、2014年から中国では小説投稿サイトでの性描写が厳しく制限されるようになったらしく、反応はさまざまだったらしい。
テセウスを殺す」尾上与一
 こちらもBL作家らしく、やはり上手い。人格転移が技術的に可能となった未来で犯罪者を追う特殊部隊の話。カチッとはまったSFミステリで楽しめる。
 特集外作品。
「幽霊屋敷のオープンハウス」ジョン・ヴィズウェル
 持ち主が入居者を探している幽霊屋敷と親子のユーモラスな怪異譚。可愛らしく切ないあじもあって良い。
「さいはての美術館」ユキミ・オガワ
 東京在住の英語作家。翻訳は勝山海百合氏が行っていて、2025年星雲賞受賞短編。本文は雑誌5頁の作品だが美しく濃密で、漠然としたイメージだけでも楽しめなくはないが、話がつかめず結局訳者のブログを参考にした。なかなかヘヴィな話ともとれる。
 https://umiyulilium.hatenablog.com/entry/2024/03/31/121415
SFマガジン2024年10月号
 ファッション&美容SF特集。
〇フィクション
「あなたの部分の物語」 暴力と破滅の語り手
 インパクトのある筆名が以前から気になっている作家。男性器が転送され管理されるようになった未来で俳優が遭遇する奇妙ドタバタ劇。男らしさというものがねじれていく斬新な発想は見事だが、多少未整理な感じだ。
「美徳なき美」ジュヌヴィエーヴ・ヴァレンタイン
 特集にちなんだ人体改造技術の進んだ未来のファッションモデルの話。過酷なファッション業界に過剰適応した主人公と生糸生産のため品種改良され人間に隷属するような生命形態になってしまった蚕が重ね合わされているのだろうか。不勉強なためベースとなっているらしい「宝石姫」を知らず図りかねる部分があるが、紹介文によると童話関連の作品が他にもある作家とのこと。
※2025年12月30日追記 これまではずれなしの斜線堂有紀作品があったので読んだ。
「お茶は出来ない並んで歩く」斜線堂有紀
 ロリータファッションに没入していく人々の文化が描かれ、外科技術が当たり前のものとして利用されいる。無粋なのでファッション用語は全くわからないが、その心理がホラー風味かつリアルに表現されている。今回も当たりで、やはりはずれなし。しかも毎回ヴァリエーションにも富んでいるんだよね。
※2026年1/4追記 ノンフィクションにも面白いのがあったのを忘れていたので記述。
・「もう一つの日本文学 SF翻訳家インタビュー【第1回】伊藤典夫」邵丹
 新連載。インタビューとあるが、インタビューを中心に中国出身の文学研究者である著者が、翻訳や多言語・世界文学といった視点から日本SFを振り返る論考。堅実な内容で大変意義深いのだが、2回目がその後ない様子なのが気になる(この1回目と同レベルのものだと、学術的な形式で手間がかかりそうなので書くのに時間がかかりそうではあるが…)