異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

令和版アニメ「うる星やつら」第1期終了

 令和版アニメ「うる星やつら」について記事を書いてきたが、無事第1期が終了したので感想を。
funkenstein.hatenablog.com
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 とはいえ、そもそもこの<第1期>という呼称もなかなかの曲者で。
 というのも元々4クール(約3か月)放送予定であったようなのだが、2クール目までは続けて放送され、それ以降(3、4クール)を続けてやるのか情報がなかった。なので、2クールが終わった時点で、<第1期><第2期>という呼称が発表された形になる。
 こんなことをなぜ書いているのかというと、そうしたアニメ文化のフォーマットを全く知らない人間だという立ち位置をまずは記しておきたいからである(そもそも<クール>の期間も知らなかった)。

 
 ということでようやく感想。
 とにかく昔の作品で、原作の持ち味を生かして作成するのが可能なのか、また予定通り4クール制作されるのかが最大の気がかりだったので、<第2期>の予定が出たところでホッと一安心というのが率直な感想だ。
 視聴率や作品の評価はわからないが(芳しくない評もみられるようだし)、グッズやショップの売り上げ含めたビジネスとして一定の成果があったのだろう。

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  肝心の中身であるが、こちらも第1期トータルで満足度の高い内容だった。
 しつこいようだが、原作の持ち味を昭和版よりも忠実に再現していて、あらたにアニメ化する意義が十分に受け取ることができた。
 もちろん一部(特にジェンダー的な視点で)価値観の古さや時代とのずれはあったが、そこも過度に手を入れることなく、作品そのものを提出しようとする制作陣の意図が感じられた。あとは世の中の受け取りに委ねられるわけだ(このような娯楽作品で堅苦しい言い回しになってしまうが)。
 強いていえば、昭和版にあったような、(たとえば大胆なパロディのような)なにが飛び出してくるかわからないオモチャ箱をひっくり返したようなワクワク感はなかったのかもしれない。当ブログ主は当時それに乗り切れなかったのは少し残念だったが、以前にも書いたように基本的に<原作厨>なので「当時面白がっていた人達は、令和版を物足りなく感じるだろうなあ」くらいの感想である。
 あとはラブ要素(いわゆる<あたラム>)の塩梅がどうだったかについて。もっとラブ要素が多い方がよかったのではないかという意見もみられるし、それもわからないではない。「うる星やつら」の最大かつ根本的な謎の部分はアイドル的存在であるラムがなぜ浮気性のダメ男あたるを追いかけ続けるのかということにある。あたるがラムに優しくすれば、そこの違和感はなくなり、物語が安定する。
 しかしどうであろう。当ブログ主は「うる星やつら」をドタバタコメディだと考えている(当ブログ主はドタバタコメディとラブ要素の比率が7:3ぐらいがちょうどよいと思うが、どうも一部のニーズは6:4ぐらいなんじゃないかなあ)。なので、恋愛関係的な部分があまりに安定してしまうとその先はない、つまりは終わりである。そもそも原作は終了しているのではないかということだが、ちゃんとオープンエンディングでまだまだドタバタが続くのが暗に描かれているのである。果たして読者は終わりを望んでいるのか。ハッピーエンドよりもむしろまだまだ話が続いてくれるのを望んでいるのではないか。
 高橋留美子はそのバランス感覚が絶妙である。「らんま1/2」もほぼ同様の結末であった。結局ドタバタの日常に帰っていく。これは物語が終わって欲しくない、でもメインの二人の不安定な関係がハッピーエンドを迎えて欲しいという矛盾した欲求を、ほどよいところに着地させる。さらにはその先の物語に読者の想像をつなぎ止めることによって、二次創作や(今回のような)時代を超えたリメイクへの流れをつくる。おそらくそこまで狙っていたわけではないだろうが、意図せず道をつくってしまうのが天才の天才たる所以だ。
 またコメディであるためには影がささないように全体を配慮する必要も出てくる。「うる星やつら」で問題となったのはしのぶである。高橋留美子は当初の構想と違って結局ラムにヒロインの座をゆずることになってしまったしのぶをどう扱うかに悩んでいたようだ。そしてその筋道を見出すことで、完結させることができたというのもファンの間では知られている。

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 というわけで以前感想を書いたあとの2クール目の原作選びも大いに納得がいくものだった。コメディなので、面堂僚子と飛麿の話、竜之介親子の話、ラムたちの悪ガキ時代と対抗する後輩スケバンの話などは不可欠。第1期最終話が賑やかなミスコン話なのも妥当。さらに不遇のキャラクターしのぶをめぐるエピソードも欠くわけにはいかない。しのぶを放置せず、全体が多幸感に満ちていることがコメディとして必要不可欠だからである(当然因幡も登場するだろう、あたラムでもあるエピソードになるし)。その辺りもまた原作への深い理解を感じ取れる。
 数年前「うる星やつら」映画をまとめて観たときの感想として、時代とあまりにリンクし過ぎていてリメイクはほぼ不可能だと思っていた。しかし今回きちんとしたクォリティで見せてくれたし、順調に<第2期>の予告も出た(予想より先になったが。秋ぐらいかと思っていた)。まずはスタッフ、声優陣に感謝したい。