異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

2022年6月に読んだ本

 ジェイムズ・アラン・ガードナーをまとめて読んだりしてました(まとめ読みはあまりしないので珍しく。ただまあ大した分量ではありませんな(苦笑)。
『プラネットハザードー惑星探査員帰還せず』(上・下)ジェイムズ・アラン・ガードナー
 原題Expendable。expendable=消耗品扱いの惑星探査要員が、惑星メラクィンに降り立つ。そこは探査に向かった者が悉く行方不明となってきたいわくつきの星だったのだ。著者ジェームズ・アラン・ガードナーといえば『90年代SF傑作選』にも収録された「人間の血液に蠢く蛇 その実在に関する3つの聴聞会」が(詳細は忘れてしまっているが)、蛇のイメージをうまく使っていてなかなか面白かった記憶がある。本書でも精子(宇宙航行の描写)とか主人公の皮膚のあざとか生々しい要素を宇宙SFに取り入れているところに共通するものがある。ただ序盤に感じられた、消耗品扱いの苦悩は後半につれ薄らぎ、ほどほどのサスペンスとアクションで事態が収束していく。刊行当時拾い物という評価が多かった記憶があるが、まあそんなところで特別目立った作品でもないかな。先日読んだアン・レッキーの<アンシラリー>とミリタリーもののフォーマットは共通している(出世云々のところなど)。
『ファイナルジェンダーー神々の翼に乗って』(上・下)ジェイムズ・アラン・ガードナー
 『プラネットハザード』と装丁が似ているが、特にシリーズものというわけでもないようだ。成人するまで一年毎に性が入れ替わるという不思議な宗教的世界の若者たちの日々が描かれる。後半過ぎまで派手な展開は少ないが終盤、著者らしい生々しさを伴うアイディアを含みながら、意外な謎解きで楽しませてくれた。展開がもっと早くても良かったかなという印象もある。が、動きのある展開の『プラネットハザード』よりあらすじは地味なものの、こちらの方がむしろ面白く感じられた。で、その面白さは『ファイナルジェンダー』の舞台の集落の描写にあるともいえて、結局はある程度分量は必要だったのかもしれない。とりあえず2作とも作品の質は高く、ユニークな視点を有している。カナダの作家ということで、その視点の一因かもしれない。
もう1冊読んでた。
『緑の星の下でー緑の太陽シリーズ<1>』リン・カーター
 バローズの火星シリーズを下敷きにした異世界冒険もの。著者はファンタジーの研究家として知られているかな。バローズへの思いを吐露した著者解説は資料としてなかなか興味深いが、内容は異世界なのに当時の価値観によるフィクションのコードがもろに出ているありふれた通俗ファンタジー。ただまあベテランの手による娯楽作としてストーリーそのものはすんなり読めてしまうので、シリーズものとしてこの後どう展開するのか気にはなってしまう。読む余裕はないけど(苦笑)。