異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

THに投稿しました。あと2020年4月に読んだ本、観た映画

 「TH vol.82もの病みのヴィジョン」特選品レビューでテッド・チャン『息吹』について「不安は自由のめまい」を中心に書きました。本屋も閉じたりしている昨今ではありますが・・・よろしくお願いします!
 
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 で、私事のもろもろで時間がないわけでもないが、読書は進まず。いろんなものをランダムに少しずつ読んでいる感じ。
 ということで以前から気になっていた雑誌を。
「ナイトランド・クォータリー vol.20」
 特集:バベルの図書館、ということで全体を読んでみた。

高山宏インタビュー
 不勉強にも氏の本は未読だが、「マニエリスム談義」は抜群に面白く、該博な知識に基づいたエッジの効いた会話と切り口に圧倒される。

・図書館映画から生まれるふしぎ、書から生まれる映画幻想
 深泰勉
 図書館や焚書や読書関連をテーマにした映画をクトゥルーものまで含め紹介。毎回知らない映画をいろいろ紹介してくるのでありがたい。またまたナイジェル・ニールの「火星人地球大襲撃」に言及あり。なかなか観るのが難しそうだけど観てみたいなあ。

・夜の図書館ー映画「龍宮之使」制作秘話 浅見典彦
 大阪の文化財をロケした戦前クトゥルーものの映画とのことで、これも気になる。

・非在の書棚より 朝松健
 異端審問に関する伝説的な本の翻訳にあたっての話。いやーこれ怖い。

岡和田氏の論考はいずれも面白かったが、スケールの大きなボルヘス世界を実証的に解き明かした<「バベルの図書館」の解釈学>が特に良く、『ブラック・トムのバラード』(ヴィクター・ラヴァル)の書評もラヴクラフト識者の評価が知りたかったのでありがたい。

・「手触りのある音」白沢達生
 楽譜の話がこの特集で出てくるのが楽しい。クラシックには明るくないのだが、その分いろんなエピソードが新鮮だった。音楽史が楽譜の発見で変わったりということもあるんだなあ。

・「おかえりなさい」橋本純
 森で迷子の少女と出会う。これも楽しい作品だ。

・「post script」樺山三英
 ボルヘスの「バベルの図書館」に正攻法で挑んだ奇想が楽しいが、現代の混迷状況にある高度情報化社会に深く切り込んでいる。

・「深夜圖書館」井上雅彦
 新シリーズ<ミライ妖カイ幻視行>開幕。どうやらSF的なアイディアが出てくる妖怪ハンターものなのかな。いつも新鮮なアイディアがあってさすがだよな。

・「夜の図書館」ゾラン・ジヴコヴィッチ
 ちょっとした怪談風だが、いい作品だ。

・「シュザンヌ・ドラジュ」ジーン・ウルフ
 解説にあるように、ほんと何気ないちょっとした中年男の回想なんだが、それだけではないはず。はじめの方の「自分ほど現実的な人間はいない、と自負していると」という下りに記憶と自覚というウルフらしいテーマを個人的には感じる。実は非日常的な事が起こっているのに語り手が気づいていないというような。(と書いた後、岡和田氏の解説を読む。むむむたしかにウルフだけに・・・)

・「奇妙な大罪」M・ジョン・ハリスン
 短い作品だが、嫌われ者の伯父がヴィリコニウムで暮らした日々がしみじみとした哀感を感じさせる。noteを読むと背景にはいろんなテクストがあるようだ。

・「バーナバス・ウィルコックスの遺産相続」サラ・モネット
 コンパクトにまとまった切れ味の良い怪異譚。キャサリン・アディスン名義の小説も翻訳されているようだ。

・「ギブソン・フリンの蒐集癖」ピート・ローリック
 古本クトゥルー。静かな本好きあるあるな前半からエグい後半への転調に意外性があった。作品のあとについている翻訳者(待兼音二郎)の作者紹介も参考になる。

・「空を見上げた老人」フランク・オーウェン
 中華ファンタジーの掌編。甘い、とも評されたようだが悪くない。

・「デミウルゴスについて」ジェイムズ・ブランチ・キャベル
 <マニュエル伝>の一部の訳載、キャベルのフィクションに対する考え方の一端を(なかなか難しいが)知ることができる。(『ジャーゲン』まだ途中だが・・・)

・「生ける本、ソフィア」アンジェラ・スラッター
 よく登場する作家、今回は最後尾で本自身が語る形になっていてニヤリ。

ヨット・ロックの本を読んだ。日本ではAORとして知られるジャンルがアメリカでTV番組をきっかけに再評価されているらしい。シミルボンに投稿しました。
shimirubon.jp


SFマガジン2003年6月号」
 昨年亡くなった翻訳家の小川隆氏が提唱した(都市のスプロール化現象をイメージして)ジャンル横断的フィクションのムーブメント<スプロール・フィクション>。断片的にしか読んでいなかったのだが、とりあえず第1回目の特集を読んでみた(ついでにほかの読み切りも)。

・「ドッグズ」アーサー・ブラッドフォード
 恋人の飼い犬と寝ている、という驚くべき導入部から始まる。奇妙で先が読めないのに日常的という好みの作品。

・「ブレイクスルー」ポール・パーク
 コミュニケーション障害をめぐる問題をえぐるシャープな作品。重い内容でもある。

・「わたしの友人はたいてい三分の二が水でできている」ケリー・リンク
 ステレオタイプ化された女性のイメージがブロンドに集約され、クローンや宇宙人へと連想がつながって
いく。

・「死んだ少年はあなたの窓辺に」ブルース・ホランド・ロジャース
 両親が育てた死んだ嬰児の話。ほのぼのとした読後感。

・「十月が椅子に座る」ニール・ゲイマン
 死と少年の孤独が重なった見事なブラッドベリオマージュ。さすがゲイマン。

・「栄曜邸の娘の魂が抜けた話」林巧
 ちょっとした仕掛けのある中華ファンタジー。著者についてはどうやらアジアファンタジー系の本やホラーが何冊か出ているようだ。

・<ことのはの海、カタシロノ庭>piece18 単純な形
藤原ヨウコウ&小林泰三
 藤原ヨウコウによるイラストと作家によるショートストーリーの企画。オチに笑った。

・「青銅の人形」草上仁
 RPGっぽい世界を題材にした短編。

レディ・プレイヤー1」(2018年)
 CSでやっていたのを録画視聴。ゲームには詳しくないが、音楽・映画の懐かしいネタ満載のウェルメイドな作品で楽しかった。まあ著作権とかを思うとスピルバーグじゃないとできないちょっとズルいネタではある感じもしたが(笑)。『シャイニング』未読なんで読まないとなあ。