異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

2018年2月に読んだ本、と観た映画・美術展

2月はとりわけあっという間に過ぎてしまったので(当然)、全部まとめて。

横浜駅SF』柞刈湯葉
 失礼ながら意外にもアイディア豊富で話のバランスも取れていて面白かった。ちなみに昨日も現実の横浜駅はまだ工事を続けていた(笑)。

『誰がスティーヴィ・クライを造ったのか?』マイクル・ビショップ
 シミルボンに投稿。
 
shimirubon.jp


『ポオ小説全集2』
 「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピム」集中半分の分量を占めるポオ唯一の長編。まさしく波乱万丈なんでもありの起伏に富んだ展開で意外なラストも含めとてつもないエネルギーに満ちた作品。現在となっては差別的な部分があるのは記さないといけないとしても、細部の書き込みは執筆時の状況がよく反映されていて貴重な記録にもなっている。
「沈黙」一読ではなかなかとらえきれないが東方やアフリカのイメージが強い。ポオの幅広いセンスが感じられる。
「ジューリアス・ロドマンの日記」アメリカ開拓記これまた当然差別的な内容であるが、それを除けばストーリー・テリングは巧みでいろいろ当時の状況がつかめる小説ではある。
「群集の人」掌編だが空虚な現代人の内面を虚構の手法で切り取ったかなり先取のセンスが感じられる作品。
「煙に巻く」軽妙な味のミステリといったところかなあ・
「チビのフランス人は、なぜ手に吊繃帯をしているのか?」ちょうバカバカしいユーモア小説。でも楽しいよね。
小林秀雄訳であるボオドレエルの解説当然文章が現代ではやや硬いので読みやすくはないが時代を感じさせて悪くない。

『カブールの園』宮内悠介
 アイデンティティに揺れる日本ルーツの米国在住者を描く(いわゆるSF要素はほとんどない)一般小説2編。いずれも傑作だが特に「半地下」が素晴らしい。

『地下鉄道』コルソン・ホワイトヘッド
 シミルボンに投稿。
shimirubon.jp

映画は1本のみ。
「悪女 AKUJO」
 秘密組織で育成された女暗殺者は育ての親である男に恋心を抱きやがて結婚するが、男を敵対する組織に殺され復讐に成功するも逮捕され、子どももいる彼女はミッションを10年間に果たせば自由の身にさせてやるという約束の基に今度は国家に雇われる。しかしてそのミッションは・・・という話は後半多少バタバタした感じに展開するんだが冒頭と終盤のアクションは斬新だったので一見の価値あり。

美術展いくつか行った。
<ルドルフ2世の驚異の世界展>@渋谷Bunkamura
ハプスブルク家神聖ローマ皇帝で1583年に首都をウィーンからプラハに移したことで知られる。アルチンボルドブリューゲルやサーフェリーなどの絵画、ケプラーガリレイの貴重な書籍もよかったが<驚異の部屋>の舟形杯、象の形をしたからくり時計が素晴らしかったなー。最後の立体アルチンボルドも楽しい。
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ブリューゲル展>@東京都美術館
 さてそのブリューゲル、初心者には有名どころだけでも三代と沢山いてわけわからん!ということなんだがわかりやすい展示で今回大変ありがたかった。それにしてもピーテル1世(まあいわば元祖)にピーテル2世(長男)、ヤン1世(ピーテル元祖の息子、ピーテル2世の弟)にヤン2世(ヤン1世の息子)とここまではいちおうついていけるとして、ここにヤン・ピーテル・ブリューゲルとゆー奴が登場したりする(ヤン2世の息子、つまり元祖の孫の世代)。そんな状況に元祖に対し「ボス2世」と称されることもあったというさらに混乱をぶち込むスタイルの解説文が好き(<絵の話をしろよ)。

プラド美術館展>@国立西洋美術館
 上野に行ったのでこちらも合わせて観てきた。とにかくベラスケスが大好きなのです。圧倒的だと思うのですよ技量が。現代に直接通じる画風でスッと入ってくるし。自分の中ではNo.1の画家。音声ガイド行く前は聞かないつもりだったんだがミッチーだったので聞くことにした(笑)。ガイドを聞いたりしながら、ベラスケスはエリート主義者というか上昇志向が強くて近くにいると嫌な人物だったかもなあとも思ったり。でもそういったことは評価には関係ないな。本質を見つめることができてそれを表現する力があったのは作品から明らかだもんね。