異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

2018年1月に読んだ本(それから参加したイベントなども)

もう2月か・・・。読んだ本やイベントの話など。
黒死病ーペストの中世史』ジョン・ケリー
 14世紀のヨーロッパを席巻したペストの広がりを丹念に追った研究書。病原体の特定ができていない時代の大量死についての貴重な記録がまとめられていて発見が多い。病の深刻さも去ることながら繰り返されるユダヤ人殺害の歴史に暗澹たる気持ちにさせられる。ちなみに最近ナショナルジオグラフィック黒死病感染経路に新説うんぬんの記事が出ていたけど、2005年原書刊行、2008年翻訳刊行の本書にも同様のことが既に書かれていると思うよ。

1月12日には丸屋九兵衛さんのトークイベントSoul Food Assassins4+Q-B-CONTINUED21が開催され、例によって参加してきた。特にSoul Food Assassinsの方は映画「オール・アイズ・オン・ミー」公開記念ということで、2Pacが遅れてきたブラック・パンサーという面を持っていることがわかった。ダブ・ポエトリー(レゲエでポエトリー・リーディングをする)のリントン・クウェシ・ジョンソンがブラック・パンサーであったことにも驚かされた(British Black Panthersなんてのがあったとは!)。もちろんQ-B-CONTINUED21のキングスマン2公開記念ロンドン・英国文化特集も丸屋さんらしい異種混淆文化分析が面白かった。こちらに太田出版のレポート。
www.ohtabooks.com

このイベントに合わせて丸屋さんの本も2冊読んだ。
『丸屋九兵衛が選ぶ2パックの決めゼリフ』
 括目せよ!第1章が「時には準宝石のように」だぞ!
 閑話休題。2パックが出自からもブラック・パンサーの影響を受けているのはよくわかるが(母・実父・継父みなブラック・パンサー)、激しく短い生涯のため、ともすると偏ったイメージ(特に暴力的な)がつきがちな彼のシェイクスピア好きで読書家、元々NY出身の俳優志望で人好きのする青年と多様で意外な人物像が浮かび上がってくるのが最大の読みどころだ。北カリフォルニアと南カリフォルニアの文化の違いというのも本書ではじめて知った。とにかく2パックにより興味が沸き起こってくる一冊である。もちろん決めゼリフだけにブラックカルチャーでのさまざまな言い回しの紹介も楽しい。
『丸屋九兵衛が選ぶヒップホップの決めゼリフ』
 こちらは2014年に出た本。実は一時G-funkやEminemを聴いたぐらいのうすーいヒップホップリスナーなので、言い回しのさまざまな面白さに加えていろんなヒップホップアーティストの関係みたいな部分がこれからいろいろ聴くための手がかりになる感じだ。特にLil Wayneはちゃんと聴いておきたいところ。あとがきにはこの本で2Pacのフレーズが紹介されていないことを後悔されていて第2弾を考えているとつづられていて、なるほどそれが3年後に実現したのだなあということもわかった。
ついでに
『ブラック・パンサー』レジナルド・ハドリン
 名前だけ同じで政治集団とは関係ないアメコミの方も読んでみた(まあネーミングとしてはつくる側になんらかの意図はあったのかもしれないが・・・)。こちらは進んだ技術と豊かな資源で欧米に追随せず自立を保つ架空のアフリカの国の王がヒーローでもあるという作品の翻訳。痛快アクションで楽しかったが、付録的な原型の古いコミックが時代を感じさせていろいろ興味深かった。映画のおかげで翻訳されたのだろうけど波及効果はありがたい。
Gil Svott‐HeronのThe Revolution Will Not Be Televisedがサンプリングされたちょっとかっこいい曲が予告編にあって、映画自体も期待したいな。
youtu.be


『隣接界』クリストファー・プリースト
 シミルボンに投稿済み
shimirubon.jp

 さて奇妙な世界の片隅でのkazuouさん主催の怪奇幻想読書倶楽部第12回読書会にも参加させていただいた。
kimyo.blog50.fc2.com
今回は迷宮・巨大建築ものとポー。楽しくいろんなお話をさせていただいた。迷宮・巨大建築ものは基本的にはあまり読んでいないのでいろいろ新しい情報を与えていただいた。ポーもこの機会に創元の全集を読み始めることになり、ちょうどいいきっかけになったしやっぱり偉大な作家であったことが今まで以上に理解することができた。
ということで
『迷宮1000』ヤン・ヴァイス
を読んだがこちらもシミルボンに投稿済み。
shimirubon.jp
で、創元推理文庫のポオ小説全集は初期は難物と聞いて3、4を読んでみた。いずれも面白かったし、本格ミステリ、怪奇、ファンタジー、SFなどなど多様なタイプの小説を残し随所に現代にも通じる視点があることに驚かされた。小説の神に愛された人だと思う。

 そうそうようやく評判の
『堆塵館』エドワード・ケアリー
 読んだよ。評判通り面白くて一気読み。ゴミから財をなした謎めいたアイアマンガー一族とその大きなお屋敷の話で、一族は誰もペアとなる<物>があり、主人公の少年はその<物>の声が聞こえるという設定、19世紀末ロンドンが舞台と道具立てがまず秀逸でしかも息もつかせぬストーリー展開。次にいきたいところだが他にもいろいろ読みたいものがあって・・・。

 それから生頼範義展にも出かけた。
上野の森美術館 - 展示のご案内 - 生賴範義展
もちろんこの人の表紙やポスターで育った世代だからねえ、まとめてみると感慨深いものがある。SFアドベンチャー表紙の女性シリーズは懐かしくて全集といわないまでも活字でいいから完全リストが欲しいくらい。文庫や本のタワーのところがレア本もあったりして妙にテンションが上がったりもしたが(笑)。
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