異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

12月に読んだ本

あけましておめでとうございます。
備忘録以上の内容ができるめどがまだ立っていませんが、まあとにかくだらだらとは続けようとしておるブログでございます。
おつき合いいただければ幸いでございます。

さて12月に読んだ本の羅列。
『宇宙探偵マグナス・リドルフ』ジャック・ヴァンス 老人かと思って侮ってると・・・みたいな人を食った設定がヴァンスらしい。ともかく解説にもあるように類い稀な異世界描写能力にユーモアミステリの要素が加わったヴァンスの中短編はファンには堪らないものがある。最高。

『たたり』シャーリー・ジャクスン 『丘の屋敷』のタイトルでも知られる著名な作品。意外なことにオーソドックスな屋敷ものホラーの図式が踏襲される前半から次第に作者らしい妄念に囚われた人物がフォーカスされるところがなんとも恐ろしい。変なマーダーバラッドみたいなのが登場するが元ネタはあるのかな。作品の謎に言及し作者の狙いを考察した解説も面白かった。ついつい独特な空気感ばかりを強調してしまいがちだが、意外にテクニカルな面も見逃せないのかもしれない。が、終盤のバタバタと話が片付いていく辺り(序盤に出てこなかった登場人物たちで展開していく)はあまり計算されているとも思えないところもあってなんとも独特で、序盤に歪んだ家の描写があるがまさに作品全体が歪んでいるところにこの人の持ち味がある。

『奥の部屋』ロバート・エイクマン じわじわと忍び寄る恐怖の表現が巧みだが、同時にどことなく寂しさを感じさせるところがどの作品にも感じられる。どれも傑作だが、「学友」「何と冷たい小さな君の手よ」「スタア来臨」が良かった。

この世界の片隅に』上・中・下 こうの史代 映画版の表現の豊かさに驚かされて、原作も読んでみた。たしかに原作には映画版にない部分があって、本質的に異なる要素があるのは否定できない。ただメディアの違いもあってどうすべきだったのかについては難しい。とにかく素晴らしい原作があっての映画であるのは間違いなく、漫画表現の奥深さを思い知らせる名作である。

『麻薬書簡』ウィリアム・バロウズ 表紙にはギンズバーグの名があるが、前(上)にきているのがバロウズようにメインはバロウズ。なのでちょっとギンズバーグのことを知りたくて読んだので多少がっかり。バロウズにさほど明るくない状態では書簡ものはまだ早かったか、細部に発見もあったが全体としてはちょっとピンとこなかった。

『ゲイルズバーグの春を愛す』ジャック・フィニイ 描写のうまさが素晴らしくノスタルジックな短篇がやはり持ち味だとあらためて思うが、一番印象に残ったのは売れない作家の悲しみが描かれた「おい、こっちをむけ!」。作家の生の声がそこにある。フィニイは大して読んでいないのだがその懐古趣味にはパーソナルなものがあるんじゃないかと勝手な印象を持っていた。が、たとえば舞台はいろんな場所が選ばれているんだよな。ということは単純にパーソナルともいえない気もして、その辺は他の作品を読んでみてまた考えたい。

『丸屋九兵衛が選ぶ、ジョージ・クリントンとPファンク軍団の決めゼリフ』丸屋九兵衛 われらが丸屋氏がP-funkの歌詞世界の魅力をしっかりと解説してくれる、P-funkファンには解読の非常に重要なカギをたくさん与えてくれる大変ありがたい本。Pファンクの底なしのSF/ファンタジー言葉遊びの世界をこれほどまで深く掘り下げた本はないのではないだろうか。いやP-funkファンどころか地球を救うfunkの効能を知るため一家に一冊必携の書であろう。またポピュラー音楽全体でもここまで歌詞を掘り下げて解説したものは珍しく、こうした側面から様々なアーティストへの理解が深まるきっかけになるといいと思う。