異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

劇場で観た映画2016年5月~10月

 これまでTVで観た映画も書いていたのが嘘のようにものぐさになり、気づいたら既に5月から観た映画についての記事を書いていないぞ。このままでは備忘録の機能も果たせないので慌てて箇条書き。

「プリンス/サイン・オブ・ザ・タイムス」 Prince急逝に伴う上映で初見。一番好きな時代なんだけどなんとなく観ていなかった。人気絶頂向かうところ敵なしだったThe Revolutionを突然解散、個人名義でアルバム"Sign of the Times"を発表しその時の少しだけドラマ仕立てになっているライヴ映画。急造に近いと思うバンドだということを微塵も感じさせないクォリティの高さに圧倒される。特に素晴らしいのがShiela Eで、ドラムにダンス躍動感あふれるパフォーマンスに目を奪われる。数多いる殿下配下の女性ミュージシャンのなかでも別格の存在であることがわかる。死のショックが癒えない時期の上映で、殿下へのファンの思いが劇場に一体感を生み素晴らしい雰囲気だった。終了後は涙があふれた。

「Bad Brains/Band in DC」 上記の「プリンス/サイン・オブ・ザ・タイムス」と同じく渋谷HUMAXシネマだったかな。グループの影響力の大きさと平坦ではなかった道のり、奇行は目立つが替えのきかないフロントマンHRと周囲のあつれきなどが印象に残った。生で観たい気もするがその時のHRの状態で楽しみるかどうかは賭けに近い感じかもなあ。

「ハイ・ライズ」 原作を読んでから観た。原作自体は1990年代の「楽園への疾走」「コカイン・ナイト」「スーパー・カンヌ」などに通じる閉鎖したコミュニティで人間の行動が変容していく作品群に直結する内容で、映画も原作に基本的に忠実。わかりやすくするためにトビー少年の視点が生かされるのも「太陽の帝国」を思わせ、非常に原作のエッセンスを上手く抽出している印象。特に感心したのはヴィジュアルで、原作が書かれた時代らしい建築や小道具のデザインに寄せていることで、これはなかなか大変だった思われるが(ただ単に当時の再現をすると現代から見ると変なものに映る可能性があり、現代的にアレンジされた1970年代中盤という難しい線)、原作の雰囲気を損なわないことに成功している。

そして黒沢清2本。去年「岸辺の旅」があって、さらに今年も2本。ファンとしては嬉しい限りである。
「クリーピー 偽りの隣人」 サイコパスに詳しい元警部が対処にあやまり重傷を負って、転居し大学教授になっている。ある日過去の未解決事件の謎を解明するように部下に持ちかけられる。一方転居先の隣には奇妙な親子が住んでいた。いわゆるミステリなんだけどところどころに現れる黒沢清らしい空間描写がたまらないんだよなあ。特に何気ない日常の中におぞましい空間がいきなり顔の覗かせるところの恐ろしさといったら!香川照之の演技も凄い。

「ダゲレオタイプの女」 全編フランス語、スタッフもフランスで選抜ということでフランス映画。不勉強ながらダゲレオタイプというのが古典的な写真技法だということを知らなかったのだが、それを使った写真芸術家のところにアルバイトで採用された若い男が次第に芸術家の過去を知っていくという話。結局どこを切っても黒沢清という作品だった。芸術家の娘を演じるConstance Rouseauがミステリアスな美貌で非常に役にマッチしていた。同じ姿勢を長時間保ち、美しい写真に永遠を封じ込めるという技法へこだわりを見せる芸術家の偏執には映画を撮ることに対する視点がオーヴァーラップしている感もある。またミイラ取りがミイラになるといった構図はく「クリーピー」とも重なる。これまた面白かった。

※三つも忘れてたんで追記
ズートピア」 難しいテーマをハイレベルの映像とストーリーで自然にまとめられていることに驚かされた。評判通りというより評判以上、特に後半の展開は良い意味で予想を裏切られ、素晴らしかった。(本当に人種差別的なところの深い問題まで踏み込めているのか、という意見も見たがそこは商業ベースとして成功させているところがOKと考えてしまう。根が俗物なのかもしれない)

「MR.DYNAMITE」 パンフレットにもあるように重要な70年代までを焦点にしたJBのドキュメント。効果的にライブ曲を挟みながら歯切れのよい編集されていてよかった。今後JBを知りたい人にスタンダードなりうる内容。プロデュースに同時代のミック・ジャガーがいるのでリスペクトしながらネガティヴな面も紹介されバランスもよい。伝説化されたタミー・ショウの裏側を話すミックのチクリとやりつつ負けを認めているところにそれが現れていた。ミックは初ソロのミュージックビデオタイアップお遊び的な映画Running Out of Luckでも遭難した言葉の通じない国で自分と気づいてもらうためにレコード屋でセルフモノマネをするシーンがあったが、今回も思いきりJBと比較映像になってて、そのあたりの分かってる感がいい。

スーサイド・スクワッド」コミックの方の予備知識はなし。もう一段クレイジーな展開を期待していたところもあったが、まあ楽しめた。うーん評判は芳しくないのも似た路線の「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」をTVで観た今はよくわかるけどね・・・。