異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

1980年あたりのロックを振り返って(Robert Frippなど。非プログレ目線(笑)

 と何だかぼんやりしたタイトルになってしまったが、最近Robert Frippのソロなどを聴いたりしているわけです。3/2の脱法ラジオを楽しみにしている80年代音楽育ちのブログ主はピーター・バラカン近田春夫の両氏(と昔のミュージックマガジン)に大きく影響を受けてきてプログレは気難しいジャンルと敬遠してきていて、中でも堅物の代名詞総本山であるKing CrimsonのRobert Fripp尊師は近づきがたい頂点のような人と考えていた。とはいえBrian EnoはSF方面から重要人物ととらえていたため(なにせ高校時代に出入りしていたのがスタジオ・アンビエントだからねい)、実際にはまったのは30代だけど,
Fripp&Enoなんかは結構好になったりまあだんだん年を重ねるとともに(良くも悪くも)こだわりなく苦手も嫌いも無くなってきてFrippがらみでもいろいろ自然に聴けるようになっていた。
 なにはともあれ。King Crimsonは21st century schizoid manは歴史的名曲とは認識していても、全体にシリアスさが重過ぎて苦手意識を持っていたこのグループとRobert Frippに急に面白さを感じたのが後から聴き直した80年代King Crimson。この記事を書いてしばらくしてから、当時からTalking Headsは好きだったのでもともとAdrian Belewが好きなだけだったんじゃないの?と自問したりもした。が、Adrian Belewはいても90年代以降のKing Crimsonはやっぱり面白いとも思えず、やはりあの時代に固有な何かがあったんじゃないかなあという気がした。
 前回の記事ではブラックミュージックとの関係に注目したが、当時の背景にはまた別の要素があることに気がついた。ポイントは歌詞である。Elephant Talkのマシンガンのように単語が飛び出し散発的なイメージが連鎖するような歌詞は当時様々なミュージシャンが行っていた。例えばそのTalking Heads

Talking Heads - I Zimbra (HQ)
Talking Headsは何といっても1980年に不思議な歌詞とアフロ音楽を融合した画期的な名作"Remain in Light"を送り出しロックの歴史を変えたグループで、英語版wikiを読むと、メンバーのJerry Harrisonによるとその"Remain in Light"のベースとなったのがこの曲I Zimbraらしい。歌詞はHugo Ball(フーゴ・バル)1886年生まれのダダイストである。こういう単語を羅列するような歌詞のロック的なルーツはBob DylanのSubterranean Home Sick Bluesと思われる、Dylanがどこからアイディアを得たのかはよく分からないが聴いているものにはダダイズムのような芸術運動を連想させるものがあっただろうと思う。ダダイズムと同時代的に関連の強い芸術運動にシュルレアリスムがあり、例えば80年代のTalking Headsはビデオなどでシュール的な方向性を意識していた印象がある。

Talking Heads - Once In A Lifetime (Full Length Version) (1980/ 2013) (HD)
まあ何をもってシュルレアリスム的というかについては難しい問題が正直あり、日本語wikiでは日本語で日常的に使用される「シュール」がバズワードとして切り捨てられているが、その後の文化との比較でいけば非日常的なものへの関心が高く相対的にはシュルレアリスムに対し親和性のあった時代だったのではないかと思う。
 そして興味深いのはRobert FrippとDavid Byrneの当時の共演作があること。

Under Heavy Manners ~ Robert Fripp (featuring David Byrne)
これまた1980年。"Remain in Light"と同じ年、この動画は歌詞入りなのでこれまた単語の羅列のパターンなのがよくわかる。ちなみにByrneはAbsalm el Habibという変名で参加。また手法はDiscotoronicsとされていて、やはりこの時代のFrippがダンスミュージックを意識しているといえる。(ちなみにあまり関係ないかもしれないがPrinceのSign 'O' The Timesのミュージックビデオも歌詞が流れていく単語重視したタイプだったことを思い出す。1987年で少し後だがイメージ的に共通するものがある)
 あらためて振り返ると1980年近辺の人的交流は非常に興味深くて、"Remain in Light"と共にアフロ音楽とロックを高度に融合させた傑作として1982年Peter Gabriel Ⅳがあるが、それに先立つ1978年Peter Gabriel ⅡをプロデュースしているのがFrippで80年代King CrimsonのベーシストTony Levinはさらにその前のⅠに参加している。もちろんAdrian Belewは"Remain in Light"での活躍も有名である。さらにFrippはPoliceのギタリストAndy Summersと共演しており、PoliceはDe Do Do Do, Da Da Daがダダイズムと関係があるかはわからないが、(高校教師上がりのStingのセンスと思われる)英語圏以外の言語や造語を盛り込むなど言葉遊びの好きなグループでありかつユングを直接題材に取ったアルバムSynchronicityがあり、Peter Gabriel ⅣのThe Rythm of the Heatはユングとアフリカ音楽の出会いを描いたものらしい。ぐるぐるどんどんつながってくる。というわけでシュルレアリスムダダイズム、言語実験、アフリカ音楽あるいはダンス音楽、ユングなどなどの影響の強い奇妙なロックが好景気のもとでエアポケットのように花開いた時代だったといえそうだ。勇み足ついでに書けば言語実験的な時代の雰囲気がHiphopに影響を与えたりしたことはないだろうか。いや因果関係が逆でHiphop的な要素を取り入れダダイズムの回顧を経由した結果がああいった単語の羅列になったのだろうか。
 それにしてもセッション的仕事の多そうなBelewやLevinはともかく、Robert Frippの仕事の多さには(今更ながら)驚かされる。FrippにEnoとくればもちろん先日亡くなったDavid Bowieまでつながってくるしね。興味は尽きない。(続く、かどうかは不明(笑)