異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

『幻獣辞典』 ホルヘ・ルイス・ボルヘス

幻獣辞典 (河出文庫)

 ボルヘス凄いなあ、と思いつつも実はまだちょっとしか読んでいない。これも以前から興味があったのだが、ついつい後回しになってい早20年余(苦笑)。とうとう文庫になったので購入し読んでみた。

 幻獣といっても一角獣や竜のようないわゆる獣らしいものだけではなく、悪魔や天使や謎めいた人物だったり分身や霊魂といった存在も含まれている(とはいえ無制限というわけでもなく、人間が動物になるという伝説は入れていないとのこと。そういうのは多いせいだろうか)。さらにはC・S・ルイスやポオの作品に登場するもの、ウェルズ『タイム・マシン』のエロイとモーロックまで出てくる。そして各項目の中で古今東西の文献からそれぞれの「幻獣」の姿が立ち上がってくるのだが、そこはさすがキングオブ博覧強記のボルヘスだけあって引用元は時代・地域を問わず驚くほど多岐にわたっており、さらに素晴らしいのはイマジネーション豊かで詩情にもあふれそれぞれが美しい短篇小説としても読めることである。また多岐にわたる引用元はこちらの好奇心を刺激してくれ、今後本書を何度も参照することになるだろう。
 流麗な訳文も心地よい。特に本書のパロディになっている解説はお見事という以外にない。