異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

映画『スライ・ストーン』

 スライがファンクやロックを変えた革新的で偉大なミュージシャンであることに全く異論はないのだが、素晴らしい楽曲は短い期間に集中しており、近年のスライにあまり興味は覚えない(Funkadelicがらみの曲は悪くないが)。が、映画『スライ・ストーン』何やら驚きのあるドキュメンタリーだという噂を知り、たまたま時間が空いていたので観てきた。なるほどこれはなかなかの拾い物。観てよかった。(内容に触れるのでこれから観る予定の方は読まない方が)


 60年代後期~70年代中期にロック・ファンクシーンで一世風靡したスライ・ストーンはその後低迷、問題行動を繰り返すうちに主と舞台から消えついには居場所すら分からなくなる。そんなスライにどうしても会いたいというオランダの映画監督とスライマニアの双子。さあ果たして彼らはスライに会うことができるのか。

 追っかけるオランダ人たちは当ブログ主よりも若い世代と思われ、後追い世代もいいところ。特に双子はいかにもオタク然としる。家まで押しかけているのはあんまり映らない監督の方なんだけど、熱意といえば聞こえはいいが、スライの妹がネットオークションに出したスライ自身のバイクの写真から家を探り当てるなどストーカーといわれても仕方のないぐらい執拗に追い回している(隠し撮りもしているし)。なんだかなあ、と思って観ているとこれが後半思わぬ展開になる(もちろんミステリ映画ではないのでネタばらしというほどではないのだが、予備知識なしで観た方が驚くと思うのでここから字の色を変えます)

 結局周囲の人々に自分たちが熱心なファンであることを理解してもらい、ようやく会うことができる。そして何とかコメントを取ることに成功。そこで分かったことは、スライが生活苦にあえいでいたのは長年のマネージャーであるジェリー・ゴールドスタインが搾取していたせいだったのだ。スライは訴訟をおこそうとしたが、契約書を紛失していて困っていた。ところがその契約書のコピーを双子のオタクが持っていたのだ!なんとうざい追っかけオタクたちがスライを救うことになったのである(スライは2015年に勝訴5万ドルを勝ち得たそうである)。いやーいかにもオタク時代にふさわしいオチである。
 

 全体を通じて印象的だったのは、いろいろありながらも切れ者であり続けたこと(マルコムXとのエピソードなどニヤリとさせられる)、また表舞台からは消えても音楽の人であり続けていること、さらには様々な問題で人々を失望させながらも近しい人々には愛され続けていたことだ(娘のリスペクトぶりには泣かされる。つい親側目線でね・・・)。しかしまあ契約問題というのは大変なんだねえ。