異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

大晦日に観た映画『愛の花』『オール・ザ・キングスメン』

あけましておめでとうございます。
今年も更新ペースゆっくりマイペースなままのブログですが、よろしくお願いします。

大晦日は渋谷シネマヴェーラで古い名画を観てきた。とはいえ昔の名画を観るようになったのはここ数年で、予備知識なしで観ていることが多い。


(以下 どちらも内容に触れますので未見で予備知識を入れたくない方はご注意)


『愛の花 The Love Flower』
 D・W・グリフィス監督、1920年の作品。映画史において偉大なる功績のあった人ということや『国民の創生』『イントレランス』といった名前は知っていたが実際に作品を観るのは初めてかなあ。『もうひとりのグリフィス』の方は観たことがあったりして(笑)
 退屈な植民地の生活に飽き飽きしなじる妻と上手くいっていない中年男。二人の間には夢見がちな若い娘(がいる。夫に業を煮やしてか妻は不倫して愛人を家に連れ込むが、使用人が報告し修羅場の挙句に男は愛人を誤って射殺してしまう。元々地元の警察に弱みを握られている(らしい)男は娘を連れ船で逃げ出す。

 夢見がちでいかにも<不思議ちゃん>風の娘の描写が前フリで、実はこの娘が愛する父親のために体を張って八面六臂の活躍をするというアクション映画だった。いやー意表をつかれた。映画史上初の水中撮影は偉業達成の高揚からか、やや長めで複数回登場するが(笑)、美しくダイナミックに撮られていると思う。狙ったわけではないオフビートさのためもなくはないが全体としては割と楽しく観ることが出来た。

『オール・ザ・キングスメン All the King's Men』
 ロバート・ロッセン監督、1949年の作品。これはまた随分年代が違い、内容も異なる硬派な作品。モデルとなった人物がいて(ヒューイ・ロング)、原作はピューリッツアー賞を取っているらしい(2006年にショーン・ペン主演で再映画化されているが、リメイクではないとwikiに書いていある)。
 貧しい人達のためになる政策を推進する運動を行う男は不器用ながら誠実な人柄で知られていた。新聞記者である主人公ジャックは上司の命令で取材に赴いたがやがて男と行動を共にする。
 純粋な動機から後ろ盾のない男スタークが大衆の支持を集め政治家として成功するうちに、独善的で横暴な権力者に変貌し周囲と軋轢を起こす様が容赦なく描かれる。本作には単純に正義あるいは悪といえる人物は存在しない。ジャックは裕福な階層の出身だが折り合いの悪い義父の金銭的な援助を断り、理想主義を体現すると思われたスタークを信じ協力し続けるが、理想のためと自らを偽り汚い仕事にも手を染めてしまう。ジャックの恋人は豊かな暮らしを諦めることが出来ず、主人公を裏切り力を持つスタークに惹かれ愛人になってしまう。良心的資産家と思われスタークを食い止めようとするジャックの周囲にも暗い過去があるなどだ。登場人物は立体的な描写で存在感があり、複雑な人間関係も手際よく描かれ、重厚な見応えを感じさせる作品で全く古びていない。