異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

新橋文化でいろいろ観た

 新橋文化に2週続けて行って、観てきた。

マンハント』 有難いことに新橋文化ではしばしばお目にかかるフリッツ・ラング、1941年の作品。第二次大戦直前、ヒトラー暗殺を企てとして追われる英語大尉。その裁判は開戦の口実にされる、ということで逃亡劇が繰り広げられる。アクションありサスペンスありロマンスありで見せ場たっぷりだが、多少盛り込み過ぎの印象も。地下鉄のスリリングな尾行シーンなどはあくまでもシンプルなものにとどまっているものの随分後の映画に影響を与えていたんじゃないかなあ(例えば『フレンチ・コネクション』とか)。しかし個人的に印象的だったのは、同時代のロンドンの街頭のシーン。(スモッグ真っ盛りの時代のはずの)霧のロンドンは街灯に照らされる追跡者はその影の中に鋭い眼光を宿し、その柔らかな光の中で恋する娘の瞳はあくまでも切なく揺れる、その対比が深く心に刻まれる。ヒロインは少々シャーロックのモリー似で幸薄な感じが映画によく合っていた。バランスの悪さはあり、大傑作とはいかないが、随所に楽しみを与えてくれる作品だ。to be continuedといったラストは少々意外だったが、製作年は第二次大戦の行方はまだまだ不明であるからまあやむを得ない内容だろう。

『フリークス』 これは1932年の作品でかなり古いんだね。トッド・ブラウニングという名はぼんやり知ってはいたものの、よく知らず、チラシを読むと子の作品まではホラー映画監督として成功していた人なんだとか。成功した『魔人ドラキュラ』を超える怖ろしい映画を作れという依頼に答えて、監督自身のサーカス芸人体験を基に作られたものだという。見世物小屋としての側面が強い時代のサーカスでの障害者たちの生活を描き、それぞれが自前の小屋を持つ人気芸人だったらしく、手足が無く口だけで煙草を吸う人がいたり皆存在感がありインパクトは大きく、もちろん監督自身もそこを強く意識して描いているのだが、そうした表現が劇映画としての面白さとも融合しているところが凄い。まずは監督の視点がフリークスの側にあり表現にためらいがなく自然であり、そこから終盤の虐げられた者たちの怒りの爆発につながっていくのだ。この情念あふれる終盤がカッコいいんだよねえ。金曜日までやっているのでお時間がある方は是非。

『M(キネコ版)』 これは観るのは2度目(とはいえ初回が劇場だったかTVだったかDVDだったか思い出せない…)。いわずと知れたフリッツ・ラングの代表作の一つ。1931年の作品。ベルリンの街を恐怖に陥れた連続幼女殺人事件。犯人のため強盗が出来なくなったギャングたちは警察と別に独自に犯人を捕まえる策に出るという話。犯人とそれを追う警察官みたいな個人同士の小さな話ではなく、街全体を舞台に組織同士が計略を企てるという大きな図式になっているのが今回は面白く感じられた。俯瞰的というか。それからこれまた街が主人公というくらい風景がいいんだよなあ。古い映画に出てくる街はいいよ。あと犯人役のピーター・ローレの演技は迫真だなー。非常に怖い。これも必見すよ。