異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

『ピース』 ジーン・ウルフ

ピース

ピース

 「アメリカ中西部の町に住む老人ウェアは静かに回想する、自分の半生を、過去の不思議な出来事を、説明のつかない奇妙な事件を・・・・・・ 時間と空間を錯綜して語られる、魅惑と謎に満ちた物語の数々。邯鄲の夢と幽霊の館、千夜一夜物語アイルランド神話、死者を縛める書と聖ブレンダンと猫と鼠の王、腕のない女と石化する薬剤師― ≪新しい太陽の書≫シリーズ、『デス博士の島その他の物語』のジーン・ウルフが魔術的技巧で綴る究極の幻想文学が約40年の時を経てついに邦訳。」(帯より)

 一読では全体像は捉えられず、散りばめられた仕掛けは謎めいてばかりいるが、ひとつひとつのエピソードや場面は実に魅力的で、巧みな語りに幻惑されっぱなしの読書体験は幸せの一語。最後の一文もまた素晴らしい。
 ウルフのこれまで邦訳された作品は精緻に構築された人工的な世界が舞台のものが目立ちそれが特有の美しさを生んでいた印象があるが、「ピース」には自身の生まれ育ったアメリカの歴史を垣間見るようなところがあって、また新たな一面が感じられ、それも興味深かった。
 と、余韻にひたりつつ解説を読んで愕然。ええええ、そんな話なのか!と、うっちゃられてしまうのもまたウルフ体験。また読み返してしまうのもこれまたウルフ、である。