異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

読書(海外文学)

12月に読んだ本、怪奇幻想ベストと映画ベスト

『奪われた家/天国の扉』コルタサル コルタサルの「真の処女作」といわれる初期短編集。 「奪われた家」内面的には充足している兄妹で暮らす家に忍び寄る影。不安の描出が巧みで多様な解釈ができるわずか数頁の傑作。 「パリへ発った婦人宛ての手紙」『悪魔…

2018年11月に読んだ本

『オスマン帝国 イスラム世界の「柔らかい専制」』鈴木董 当ブログ主が現在最もはまっているのがTVドラマ「オスマン帝国外伝」なのだが、おかげでオスマン帝国自体にも興味が出てきた。で、丸屋九兵衛さんの選書フェアで並んでいた本書を読んでみた。奴隷上…

2018年10月に読んだ本

『記憶よ、語れ』ウラジミール・ナボコフ ナボコフの自伝。激しく社会変動し戦争の世紀でもあった20世紀、個人としても貴族の家系で祖国を追われるなど歴史の波にのまれてきた傑出した作家がなにを見つめたか。そうした様々な歴史的な出来事との関わり、ある…

2018年9月に行ったイベント、美術展、コンサート、映画など

まだ9月少し日にちが残ってるけど。 9月8日<「アルジャーノンに花束を」の翻訳者が語る その半生と翻訳の魅力>というイベントに参加してきた。 www.asahiculture.jp 名翻訳家である小尾先生の半生が語られるということで、期待通り大変素晴らしい内容だっ…

2018年7月に読んだ本、読書会

7月はなんだか読了本が少ないな・・・。 まずは参加した読書会の話でも(笑)。 第15回怪奇幻想読書会に参加。 第1部は課題図書フィニイ『ゲイルスバーグの春を愛す』。フィニイは数年前に初めて読んだくらいで、ここのところ入手困難な状態の本が多く同書と…

2018年5月に読んだ本、とSFセミナー

今年もSFセミナーに参加。 最初の新進作家パネルではマイペースに独特な奇想から創作をしていくような石川宗生さんの作家というより現代アーティストといった佇まいとオタク文化とアイディアの組み合わせから創作をしていく草野原々さんのハイテンションなキ…

2018年4月に読んだ本、と読書会

あっちこっちつまみ読みしたが・・・全体としては低調モード。 あ、読書イベントには参加して面白かった。 『ドン・キホーテ』 前編一・二 セルバンテス 遅々として進まないが、なんとか読了したいシリーズの一つ(笑)。いや面白いですよ。周囲がドン・キホ…

2018年3月に読んだ本

『鉄の夢』ノーマン・スピンラッド 途中まで読んだ状態で数年放置していたがようやく読了。アメリカに渡ってB級SF作家になったアドルフ・ヒトラーが書いた「鉤十字の帝王」とその解説からなる、改変歴史ものの入れ子構造で有名な作品。もちろんこの「鉤十字…

2017年12月に読んだ本

うーん今月も多くないなあ。 今月も怪奇幻想読者会に参加させていただいた。 奇妙な世界の片隅で 怪奇幻想読書倶楽部 第11回読書会 開催しました今回は吸血鬼特集ということで『吸血鬼ドラキュラ』はまだ読了できていないが、下記のように吸血鬼関連を読んだ…

2017年11月に読んだ本

変わらず低調・・・。度々参加させていただいている、kazuouさん主催の怪奇幻想読書会 kimyo.blog50.fc2.com でウェルズがテーマだったのでこれを機会に積んでいた本含めいろいろウェルズを読んでみた。『未来を覗く H・G・ウェルズ ディストピアの現代はい…

2017年10月に読んだ本

変わらず低調・・・(京都SFフェスティバルに行ったりして読書関係としては楽しかったのだが)。『泰平ヨンの現場検証』スタニスワフ・レム 世評高い作品で泰平ヨンの記述の不確かさが導入となっているようなあらすじからメタフィクションっぽさが前面に出てい…

2017年9月に読んだ本

今月もあんまり読めなかったなあ・・・。『人形つくり』サーバン 支配-被支配の関係性が根幹となる2中編からなり、教師や生徒が登場人物など共通点が多い。自然の力を有するような少年の不気味さが印象的な「リングストーンズ」、不穏さが徐々に高まりサスペ…

2017年7月に読んだ本

『黒檀』カプシチンスキ 長期間に渡りまた非常に広範囲に及ぶアフリカのルポルタージュ集。危険をおかすことも厭わず外からの視点を超え現地に踏み込み記録し得ぬものを記録しようとする情熱と筆力がすごい。残した作品が世界各地にも広がっていたことにも驚…

2017年6月に読んだ本

『狂気の巡礼』ステファン・グラビンスキ 科学的な比喩や考察がところどころにあるのがいい。オカルト風ミステリ「チェラヴァの問題」、時間SF風味の「サトゥルニン・セクトル」、ネイティヴ・アメリカンを題材にとった「煙の集落」など物語性の強い後半パー…

2017年5月に読んだ本

『ラヴクラフト全集2』 数少ない長編「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」より、船舶による冒険の時代が感じられコンパクトにスケールの大きいホラー世界が展開される「クトゥルーの呼び声」の方が面白かったかな。(これもまだ2までで歩みを速めないとなあ…

2017年3月に読んだ本

昔買って積んでいた文芸誌を結構拾い読みした。 『新潮』2015年9月号 川上未映子「苺ジャムから苺をひけば」 腹違いの姉がいることを知った少女。技巧的には文句なしだが、手堅過ぎるのと子どもたちが妙に大人びているのが気になりいまいち。 金井美恵子「孤…

2017年2月に読んだ本

『剣の王―紅衣の公子コルム3』マイクル・ムアコック 実はコルムまだここまで。最後は豪華キャラクターで盛り上がりを見せたなあ。ジャリーの飄々とした狂言回しぶりがよい。さて後半3部作はいつになるか・・・。『マンボ・ジャンボ』イシュメル・リード『中…

『マンボ・ジャンボ』イシュメル・リード

{} P-Funk mythology(当ブログの関連記事1、関連記事2)の原点ともいわれる作品で、個人的にはもっと早くに読むべきだった本。遅れてしまったが読了。 ダンスが止まらないという奇妙な感染症ジェス・グルーをめぐり監視・抑圧を強めていこうとする白人勢力…

2017年1月に読んだ本

『ストップ・プレス』マイクル・イネス 殊能将之氏のホームページでの秀逸な紹介から13年余り、翻訳刊行されてから11年余り、ふと思い立って読み始めたらミステリ慣れしていない当ブログ主にも(年末年始の休みを使うことによって)意外にすんなり読めた。癖の…

12月に読んだ本

あけましておめでとうございます。 備忘録以上の内容ができるめどがまだ立っていませんが、まあとにかくだらだらとは続けようとしておるブログでございます。 おつき合いいただければ幸いでございます。さて12月に読んだ本の羅列。 『宇宙探偵マグナス・リド…

2016年 10月読了本

『日本沈没』小松左京 恥ずかしながら初読。意外と破滅物が苦手なので・・・(バラードの破滅物は別)。海底探査ものの要素が強いのかなあ。メカの描写が緻密で、よくこういうものがベストセラーになったなあという気もする。地質学的というか地形を俯瞰的にと…

THE POET SPEAKSギンズバーグへのオマージュ @すみだトリフォニーホール

というわけで先週行ってきた。 www.parco-play.com ギンズバーグの詩をテーマに現代音楽の巨匠フィリップ・グラスにパンクの女王パティ・スミスがコラボレーション、翻訳に村上春樹・柴田元幸が加わるという豪華な顔合わせ(とはいえフィリップ・グラスに関し…

トークショー柴田元幸さん×松浦弥太郎さん「パティ・スミス、フィリップ・グラス、そして“うたう”ビート詩人ギンズバーグへ」に行ってきた 

いろいろ読書イベント好きの当ブログ主。今度はギンズバーグだ!とはいえ長年興味はあったもののビートニクについてはわからないことがずっと多くてねえ・・・。ようやく2014年のビートニク映画祭(自分のブログ)から身近なものに感じられた。で少しずつギン…

丸屋九兵衛トークライブ Q-B-CONTINUED vol.7 with サンキュータツオ【帰ってきたモンキー Return of the Monkey King】!

申年初めてのQ-B-CONTINUED、ということで猿にちなみ西遊記特集、ちょっと遅れてまとめ。今回は場所が代わってやや見つけるのが難しいRedBullStudios。 挙手で判明したのは初めてのお客さん多いとのことでタツオさんから 「今までのお客さんどうしての?早速…

『フランク・オコナー短篇集』

1903年生まれのアイルランド作家(本名Michael O'Donovan、ペンネームの本名もいかにもアイルランド系だ。O'が入っているし、Donovanもアイルランド系に多かった記憶がある)。村上春樹が<フランク・オコナー国際短篇賞>を受賞しているように、優れた短篇作…

『素晴らしきソリボ』 パトリック・シャモワゾー

"カーニバルの夜、語り部ソリボは言葉に喉を掻き裂かれて死ぬ──クンデラに「ボッカッチョやラブレーにつづく口承文学と記述文学の出会い」と激賞された、クレオール文学の旗手の代表作。これは読む小説ではなく、聴く小説だ。お喋り文体に乗って、愉快で奇っ…

『カステラ』 パク・ミンギュ

“現代韓国文学の人気作家・パク・ミンギュのロングセラー短編小説集。洒脱な筆致とユーモアあふれる文体で、主人公の若者たちを取り巻く「就職難」「格差社会」「貧困の様相」etcを描きながら、彼ら彼女たちに向ける眼差しを通して、人間存在への確かな信頼…

『ラテンアメリカ五人集』

“少年時代に抱いた友人の母親への恋心を、二十世紀メキシコの激動の時代と共に追想する、パチェーコ『砂漠の戦い』。犬に噛まれ、大怪我をしたことから鬱屈した青春を送る少年と仲間との交遊を描いた、バルガス=リョサ『小犬たち』。マヤの神話や伝説が語ら…

『オルシニア物語』 アーシュラ・K・ル・グィン

<この世界のどこかにオルシニアという名の国がある。12世紀のなかば、“オドネ”という邪神を信仰する野蛮な異教徒からこの国を守り、神の教会の忠実な守護者として敬愛されるフレイガ伯爵の城館で起こったある真冬の夜の出来事をはじめ、17世紀、オルシニア…

『クリスマス・キャロル』ディケンズとドクター・フー ニュー・ジェネレーション“クリスマス・キャロル“

(本作とSFドラマ“ドクター・フー ニュー・ジェネレーション”の内容に触れていますのでご注意を) AXNミステリーでやっていた“ドクター・フー ニュー・ジェネレーション”14話中の第13、14話を観残していたので録画したやつを続けて観た。これググると11代目…