異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。

THNo.85にレビューを書きました。あと2021年1月に読んだ本

 TH No.85 特集:目と眼差しのオブセッション 特選品レビューでマイケル・ドズワース・クック 『図書室の怪 四編の奇怪な物語』のレビューを書きました!よろしかったら読んでみてください!
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 さてTH、私のレビューなんかは置いておいて、岡和田晃氏の連載「山野浩一とその時代」がともかく面白く、最近購入したNW-SFとつき合わせながら楽しんでいる。多ジャンルに及ぶ山野浩一の行動範囲の広さで、関連人物も多岐にわたってユニークな人物が集結していて非常に刺激的なのですよ。で、1970年7月1日発行のNW-SF創刊号を読んでみた。
NW-SF』創刊号
 まずは表紙を開くと裏に

NW=No Wonder
NW=New World
NW=New Wave
SF=Speculative Fiction

と大きめの文字で書かれ、次のページに山野浩一のNWーSF宣言が高らかに出てくる。時に山野浩一30歳、その確信に満ちた若々しい気概のストレートに伝わってくる誌面である。
「夢遊者の宇宙旅行種村季弘
 古典から宇宙への旅を描いた作品の系譜を追う短いエッセイ。月と狂気の話から、精神異常への言及もあって田中英光「月光癲狂院」がちょっとだけ登場、
「内宇宙への道はどれか?」J・G・バラード
 NWーSF宣言に続いて、これがくるのが普通だか、そうはならず種村季弘をはさむのが山野浩一流かな。運動をそのまま輸入するわけではなく、あくまでも自分で咀嚼していこうという考え方のあらわれではないかと思われる。
大麻ゴッコするもの、よっといで」相倉久人
 大麻解禁文化の系譜に属するものかな。有名な音楽評論家だが、こうした内容でこの雑誌に掲載されていたのも面白い。
風太郎の魔界」平岡正明
 山田風太郎についての評論だが、書誌的な要素が強くなるほど作品を網羅しており、読み応えがある。書誌的な作成は現在より手間がかかったはずで、大変熱のこもったもの。面白かった。
「アイ・アイ」河野典生
 ハードボイルド作家であるとともに、イマジネーション豊かな幻想小説でも名を残した作者はニューウェーヴSFとシンクロしたセンスを有していたと思う。ジャズにも通じ、NW-SF創刊号にぴったりな存在。詩に近い散文の本作は、活字創作におけるリズム感というものの考えさせてくれる。
怪人二十面相の墓」嵐山光三郎
 編集者、エッセイスト、TVタレントの印象が1980年代文化育ちには強いが、フィクションも多く書いている。本作は本人に近い人物が廃坑となった炭坑街を訪れた時の出来事が描かれている。出来映えは申し分ないものの題材的に今の時代には難しいものとなってしまっている。ともかく、NW-SF創刊号にこの人が寄稿していたのは面白いし、いわゆる読みやすいごく一般的な小説が入ることでバランスを考えていたのかなとも思われる。そこはまだ方向性への試行錯誤があったのかもしれない。
・書評 山野浩一
ハインライン異星の客』とシルヴァーバーグ『時の仮面』の評だが、面目躍如というかかなり辛辣(特に前者)。もちろんその批評眼は実に的確で、時代を越えていることがあらためて感じられる。
「オム」鏡明
 非常に前衛的な作品。ジョン・ヘンリー、ハンマーといったキイワードも出てくるが、これは労働力として導入された蒸気ハンマーに戦いを挑み勝利した人物、という比較的新しい時代に生まれた英雄伝説である。今では日本語wikiにもあるくらいに有名なもので、音楽の題材としても知られているが、50年以上前にこれを持ってきている著者の常人離れしたセンスの鋭さを感じる。
「消えた男のための狂詩曲」山口隆
 科学的なイメージが散りばめられた実験的な作品で30ページほどのボリュームがあるので、細部に興味深いところがある(冒頭のSの字の歩行の下り、生き物が続々と上陸するところ、観察者が反転するところとか)ものの少々重たい。編集後記には新人で京都の学生とあるが、その後どうなさったのだろうか。
また編集後記には「筒井康隆氏の原稿が遂に間に合わず」とあり、「あらためてお願いする」とも書かれているが、ざっと眺めたところその後載ったことはないのではないかと思う。載っていたら日本SF史も少し変わった流れになったかもしれない。
『他人の顔』安部公房
 さて、山野浩一にまた強く興味をひかれたのは前田龍之祐氏の卒業論文が非常に示唆に富んだ内容だったからである。

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 思想関連の書物を読み慣れていなので、十分咀嚼できていないのだが(特に第三章)、山野浩一の歩みを明確な論点で追う、貴重かつ大変優れた論考であり、山野浩一について考えていくきっかけを得ることができた。ほんとうに感謝である。
 で、この論文で重要人物として出てくるのが安部公房。実はこれまであまり読んできていかなった。これから読んでいきたいと思う。
 『他人の顔』については、人間関係に関するモードがやや時代の変化を受けているところはあるが、いわゆるSF的な手法と違うアプローチで個人と社会の関係をとらえる形になっていて、この事は今後も考察していく必要があると思われた。ただ思索の方向性に個人的に馴染めない部分が(以前も感じてしまったのだが)、どうしてもある。短編の完成度が高い、という論評も見かけたので、短編を次は読んでみようと思った。
それからナイトランド・クォータリーも読んだ。
『ナイトランド・クォータリーvol.23』
 怪談[KWAIDAN]特集。
◎フィクション
「十六櫻」ラフカディオ・ハーン コンパクトであることも含め、伝統的な和のモチーフ、怪異、因縁など怪談というものの本質的が出ている見本のような作品である。櫻が散るようなイラストレーションもまた素晴らしい。
「琴」フィオナ・マクラウド ヒロイック・ファンタジーへの影響につい記載されているが、本作でもその要素がありまた、場面場面が非常に美しい。
「愛蘭民謡ーTraslation By Ladv Gregory」
グレゴリー夫人 訳/松村みね子
ゲール語と英語をハイブリッドさせたようなキルタータン英語で綴られた、と解説にあるので労作なのだろう。最初の「詩人の愚痴」には自らが他の生き物に転じる想像からわびしさの中にそこはかとないユーモアがある。後の「女ごころのかなしみ」には不実な恋人に対して悲嘆にくれる<わたし>の強い絶望感が表現されている。
「ハンラハンの幻視」ウィリアム・バトラー・イエイツ
 詩情と非日常の恐ろしい世界が描かれている。訳者解説で、イエイツがケルトの民の幻視能力を論じていたというのが面白い。
「ハワード家のしきたり」P・R・オリアリー
 ちょっとした日常の嫌な感じをうまくすくいとったようなモダンホラーで楽しめる。
「古樫荘」アンジェラ・スラッター
 本誌お馴染みのスラッター。小品だが、題材のためなんとも重い空気を漂わせている。
「絞首台の救い主ーあるスペインの物語ー」カール・ハンス・シュトローブル
 二十世紀初頭ドイツ作家の怪奇譚で、濃密な空気を漂わせる前半から意外なオチにいたる。ポーの影響が強いというのはなるほど。
「ランドールの円形舞踏」エレナー・スコット
 とある村の古墳で行われる儀式を密かに調べる学者。1892年生まれの作家の1923年発表作。学校の先生で発表作も少ないようだが、ストレートな筋立てで楽しめた。
「腐肉喰らいの神の楽園」レアード・バロン
 訳者待兼音二郎氏によると低迷気味の狼男ものに新風を吹き込む、女性視点の作品。暴力夫から逃れる女性とレズビアンパートナーというシチュエーションで、高まっていく緊張感と怪異が交錯していくところが良い。
「ファイブ・スターの幽霊」ピーター・M・ボール
 コインランドリーに現れる幽霊の話。奇妙な話系列だが、孤独な空気感がマッチしたいい味の小品。訳者待兼音二郎氏による「"信頼できない語り手"が物語に投げかける陰翳の深み」で、本作の一人称小説の語りが他の有名作品と並べ解説され興味深い。
「夢を孕む女」山田一夫
 井村君江松村みね子片山廣子」、小野塚力「山田一夫片山廣子について」と合わせて事実上、松村みね子小特集みたいになってる。松村みね子の主婦としての名前が片山廣子。芥川に大きな影響を与えたらしい。山田一夫は明治生まれの作家で、芥川の研究者であり、本作は芥川と片山廣子の関係をもとにしているとのことで非常に興味深い。
「精霊語彙集」高原英理
 基本的なプロットは複雑ではないが、描こうとしているのは言語の持つ力と人間といった深淵な要素を包含するようななかなか難しい作品だ。しかし強く印象に残る。他作も挑戦しなくては。
「罪」高橋桐矢
 スマートな都会的怪談といった感じかな。
「何もしていないのに」徳岡正肇
 スマホを題材にした現代ホラー。冒頭の「何もしていないのに壊れた」に爆笑。全体も切れ味の鋭いショートショートの快作。
◎エッセイなど
・悲しき異類婚姻譚『怪談雪女郎』田中徳三監督の思い出より 浅尾典彦
・江戸怪談、もしくは八雲が出会った異郷の妖精譚
深泰勉
 怪談については小説・映画とも明るくないので、非常に参考になる。
鍛治靖子インタビュー 氏の幅広い視点が伝わってくる好インタビュー。引き続きいろいろな翻訳家の方を取り上げていって欲しい。
イングランドケルト的怪談を求めて 深泰勉
 エンヤ、プリズナーNO.6ダリル・ハンナ、ダンセイニ卿、ドクター・フーといろんなキイワードが登場し、ケルト的なものの影響の大きさがうかがえる。
・「怪談」というウイルスVS神智学という文化外交ー片山廣子(松村みね子)を中心に 岡和田晃
 幅広くしかも深い論考でまだ十分消化できていないのだが、片山廣子を手がかりに幻想文学の歴史を伝える非常に示唆に富むもので、読み応えがあった。
・ケネス・モリスとバッハ的宇宙の幻影 中野善夫
 フィオナ・マクラウドの訳者でもある氏の音楽論で非常に面白い。ポリフォニーとホモフォニー、勉強になったし、ちょっとバッハを聴いてみよう。
・斎藤大地インタビュー
 ゲームはわからないのよね。ゲーム実況は一見ネタバレにつながりやすく思われるが、それを見てからプレイする視聴者がいること、構造のシンプルさから、ホラーゲームがつくりやすいというあたりはちょっと面白く思えた。
・音の聴こえない文字、姿の見えない音楽ー浪漫主義前後の「恐しき音楽」随想 白石達生
 これもクラシック系の話題だが、時代背景や室内楽など場の状況をふまえて、音楽における<魔>について解説されており、これまた面白い。QRコードつきで関連の音楽がSpotifyで簡単に聴けるのもいい。
・[アンソロジーに花束を]第六回 マルチアンソロジスト 安田均
 作家でゲームに明るく、アンソロジストかつ俳優や奇術師といった顔まで持つマルチタレント、マーヴィン・ケイ(もちろんマーヴィン・ゲイではなくKaye)の話。いやーユニークな人物がまだまだ埋もれているのだなあ。
・「異教」や「異類」との習合が「怪談」を育む-未訳アンソロジー『黒い鶴』(アルマ・カツ序文)を中心に 岡和田晃
 現代の西洋怪談のアンソロジー『黒い鶴』は従順な存在としてステレオタイプに描かれてきたアジア女性のイメージを捉え直す視点を持ったアンソロジー。シオドラ・ゴス『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』、山内淳『西洋文学にみる異類婚姻譚』も合わせて紹介される、タイムリーな内容。
・富ノ澤鱗太郎はなぜ小泉八雲を翻訳したのか 片倉直弥
 八雲の後続世代富ノ澤鱗太郎の分析から日本文学史の一端を知る。

『2000年代海外SF傑作選 』橋本輝幸選
 現在海外SF情報を最も早く網羅的に把握している紹介者の一人橋本輝幸氏による傑作選なので、『2010年代』と合わせて即購入。もちろん内容も素晴らしい。
「ミセス・ゼノンのパラドックス」エレン・クレイジャズ
 日常会話から非日常的なスケールの世界にあっという間に入っていく、ちょっと落語っぽい粋な小品。導入として最適の作品。
「懐かしき主人の声(ヒズ・マスターズ・ボイス)」ハンヌ・ライアニエミ
 犬猫ペットのペアが飼い主を取り戻そうと頑張るなんともキュートなポスト・サイバーパンクの傑作。
「第二人称現在形」ダリル・グレゴリイ
 ドラッグにより別人格になってしまった時の家族と本人の関係を描く、いかにもイーガンを連想させる作品。気分を良くするのではなく「何も感じさせなくする」ドラッグというのが何ともリアル。壮大なスケールの小説ではないがクールな苦みのある、いい作品だ。長編も共通するテーマらしくノーチェックだが読まなくては。
「地火(じか)」劉慈欣
 経済成長の影にある労働者の願いと苦しみが伝わる、モチーフとしては高度経済成長期、SF第一世代を思わせるもの。が、終盤の転調がいかにも現代。
「シスアドが世界を支配するとき」コリイ・ドクトロウ
 多発同時テロで世界が破滅する中でシステムエンジニアが奮闘する話。フリーな文化を希求する理想郷としてのネットへの夢が潰えかけようとする時代にそれでも、という熱い思いが垣間見える。ただコロナ禍の中では少々違って読めてしまうところもある。
「コールダー・ウォー」チャールズ・ストロス
 解説にもあるように著者の「ミサイル・ギャップ」と同傾向のポリティカル・スリラー。この路線、割と好きなのだが、ユーモア感覚が悪ふざけ的でピンとこない人や嫌う人がいるのもまたわかる。
「可能性はゼロじゃない」N・K・ジェミシン
 チャン「地獄とは神の不在なり」を連想させる奇跡的なあるいは偶発的なことが起こるようになってしまった世界。非力な人間の心の機微が描かれる。こうした終末的な世界は、今ではさほど違和感なく読者に伝わる気がするが、元々日本の末法的な考えと結びついてきたのか最近定着したのかとかつらつら考えたり。あと奇跡が起こりやすくなるということでメッツがワールドシリーズ制覇してるのにはメッツファンとして苦笑(ニックスも同じ扱いなのね。さすがNY育ちのノリ)。
「暗黒整数」グレッグ・イーガン
 3回ほど読んでいるし、傑作だと思うし前日譚「ルミナス」も傑作なんだけど、数学SFの極北といった趣なので、アイディアのコアな部分は掴みがたいところはある。今回思ったのは、その難しい部分を越えた構図のわかりやすさ。つまりオタクが自分の強みを生かして世界(政治どころかこの宇宙というレベル)を密かに守るという図式。上記の「シスアドが世界を支配するとき」とも共通する定番の親しみやすさだよね。
ジーマ・ブルー」アレステア・レナルズ
 レナルズあまり読んでいないが、アートをネタにしてるのは少々意外だった。
『2010年代海外SF傑作選』橋本輝幸選
「火炎病」ピーター・トライアス
 未読『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』シリーズの作者。本作は病に苦しむ家族への思いあふれるエモーショナルな前半が後半意外な展開となるコントラストがなかなか良い。
「乾坤と亜力」郝景芳
 作者は科学でも経済でもアカデミックな経歴を持つ多彩な人物だが、技術系のストレートなSF。オーソドックスだが、現代的なユーモアがいいフレイヴァーになっている。
「ロボットとカラスがイースセントルイスを救った話」アナリー・ニューイッツ
 公衆衛生を守るロボットがコストの削減から野良ロボットになってしまってという話。途中までは予想の範疇なのだが、さすがパンク時間SF『タイムラインの殺人者』の作者だけあって、カラスがからんでからの展開は予想外。やはり曲者作家である。
「内臓感覚」ピーター・ワッツ
 こちらも別な意味で一筋縄ではいかない作者だが、彼の著作ではややユーモアがある方かな。
「プログラム可能物質の時代における飢餓の未来」サム・J・ミラー
 カイジュウもののディストピア小説なのだが、破滅的な世界と共に個人の内面がシリアスな作品でいかにも新世代といった印象。NYのゲイ作家で、個人的に贔屓としているディレイニーやディッシュの系譜であり、これからに注目したい、
「OPEN」チャールズ・ユウ
 シュールながらほのかなユーモアがあり、楽しい。
「良い狩りを」ケン・リュウ
 前に読んだ時は終盤の急展開がつくりものっぽく感じ、世評の高さの割にもう一つと思っていた。が、これ虐げられた者たちの戦いの話で、ちゃんと全体がつながっていることに気づき、評価される理由がわかった。やっぱり再読大事。
「果てしない別れ」陳楸帆
 近未来、脳卒中で全身麻痺になった主人公がファーストコンタクトに駆り出される。先端科学のSFを得意とする著者らしい作品。ビターでほのかな幸福を感じさせるラストはいかにも現代の作家のもの。
「""」チャイナ・ミエヴィル
 ネット検索困難というのがなるほどうなずける<不在>をテーマとしたさすがミエヴィルというユニークな作品。
ジャガンナートー世界の王」カリン・ティドベック
 ぐちょぐちょしたちょっと気色の悪いバイオSFアイディアに懸命にサバイブしようとする生命達の健気な姿が描かれるいかにも酉島伝法な作品で、実際もう発表時にツイートしてて笑った。
「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」テッド・チャン
 人工生命体の可能性をテーマにその研究者たちの人間模様をからめた傑作だが、人工生命体の進む方向が羅列気味に提示されてしまうのがちょっと惜しいかな。ないものねだりは承知で、それぞれの方向性を一つ一つ踏み込んだ話を読みたかったかも。つまりは長編でいうことになってしまうが。

以下羅列。
侍女の物語』(グラフィックノベル版)マーガレット・アトウッド/ルネー・ノールト
 ディストピアSFの名作のコミック版。原作のトーンが見事に反映され、またコミックの特性が生かされ、原作の世界が立体化されている素晴らしい作品。さらに作品の認知度が高まっていくだろう。
『標本 マイリンク疑似科学小説集』グスタフ・マイリンク
 ビブリオテカ・プヒプヒの同人誌、長いこと積んでしまっていたが、ようやく読了。
「標本」あやしい医師ダラシェコのところで行方不明になった人物を探そうと忍びこんだところ・・・。短いが映像的なところが良いね。
土星の輪」土星を観察していた老学者の8件したことは。オチはこれ笑っていいのかどうなのか。
「菫色の円錐」ソーントン卿がチベットで発見したもの。いやーこれはバカSF(の先駆)だな。
「蝋人形展覧室」これも「標本」と同じくダラシェコがらみの話だが、今回もダラシェコ自身は出てこないのがちょっと面白い。グロテスクなイメージと奇怪なユーモアが混在した味わいはなかなかユニーク。
 全体にグロテスクなイメージと奇怪なユーモアのあいまった独特な味があって面白かった。装丁も素晴らしい。
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『ゴーレム』読まないとなあ。
バグダードフランケンシュタイン』アフマド・サアダーウィー
 連日自爆テロの起こる街で、死体が消えてと、いう小説で、混乱した社会で、いろいろな思いをかかえた人々の関係が描かれる。名のないフランケンシュタインの怪物も登場して重要な役割を担うが、それ以外の登場人物の関係に軸足がある作品である。なので、日本から遠く離れ、固定したイメージでとらえられがちなイラクの、人々の生活や苦悩が立体的に読者に伝わってくるのもよみどころか。また終盤意外な展開あり、名のない者がどうなるかのサスペンス、ミステリ的に読める要素もはまっている。