異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

ハリーハウゼン映画をいろいろ観てみた

 CSでやっていた人形アニメーションの巨匠ハリーハウゼン映画特集を録画して少しずつ観たので感想を年代順で書いておく。
「水爆と深海の怪物」(1955年)
 カラー化したものを観たが、なかなかきれいに着色できるんだなあというのが第一の感想(アマゾン評を読むと元々カラーで撮りたかったハリーハウゼンが白黒になったことを悔い、カラー化させたということらしく、だからきれいなのかもしれない)。これくらいの時代差があると、映像にもクラシカルな味が感じられるようになるね。
「シンドバッド7回目の航海」(1958年)
 もとは「シンバッド」だったらしい。ランプの精が子どもだったのはちょっと意外。サイクロプスギリシャ神話だな。ランプの精はアラジンだし、原型のシンドバッドの話とも大分違いそうだし、かなりいろいろな神話を欲張って盛り込んでるあたりはやや粗雑さを感じざるを得ないが、ハリーハウゼンのイマジネーション豊かな怪物の造形やアクションそして動きのスピードには驚かされたし最終的に大怪獣決戦的な流れになったりするあたりに堂々たるオリジナルの偉大さを認識させる。
ガリバーの大冒険」(1960年)
 原作を踏襲してはいるが(主人公が医者だとか、巨人の国で少女の世話係がいるところとか正直忘れていた)、良くも悪くも”古き良き”ファミリー映画といった趣きの演出。ハリーハウゼンのアニメーションは楽しいが、怪物とかが出てくる作品ではない分、ファミリー向けの健全さとか西洋中心的な異文化観とか当時のフォーマットがそのまま出ていて古臭く感じられてしまう。
「SF巨大生物の島」(1961年)
 再見。技術、お決まりのロマンスなど時代を感じさせる点が多々あるが、だれ場なく次々と飽きさせない展開でやはり完成度が高い。未読である、ヴェルヌの原作も気になる。
「恐竜百万年」(1966年)
 紀元前百万年という1940年の映画のリメイクらしい。原始家族フリントストーン The Flintstonesが1960年から(ギャートルズの最初が1965年のようだ) で、原始人ものが当たるとふんでのリメイクなのかな。リメイクということもあってなのか、原始人の描写に当時のステレオタイプな表現のしょうもなさがにじみ出ていて、(いくら娯楽映画とはいえ)げんなりさせられるものがある。衣装やメイクも感覚的にも古めかしい。まあこういう原始人映画はグリフィスもショートフイルムを撮っていたようで、ルーツは意外に古く、また「国民の創生」のグリフィスからの流れで根底に差別的な要素が内包されてきたのかもしれない。一方でルーツからある流れということは基本的に多くの人が惹かれる題材であり、その後も真面目なアプローチに移行しながら撮影されていることも考え合わせると今後も定期的に作られることが予想される。26年も経ってのリメイクのせいもあってか、原始人ものだからセリフで説明できない弱さもあり、話もなんだかよく分からない(苦笑)ちなみに出てくる恐竜は当然ながら毛なしである(人間と戦う恐竜はティラノサウルスにしては小さい気もするが、その辺は恐竜の種類は出てこないので無問題かな(笑)特撮は頑張っている。
「シンドバッド黄金の航海」(1973年)
 なんと前作から15年後、アニメーションの以外は当然ながら70年代のタッチに。あまり評価は高くないようだが、ストーリー自体は前作より起伏に富んでいるんじゃないかなあ。ただ前作同様、いろんな文化や神話をかなり雑に取り入れている手つきは現代の視点からは気になる。アニメーションの方は様々な手法で多彩な映像表現を創り出しており素晴らしい。
「シンドバッド虎の目大冒険」(1977年)
 冒頭の悪の化身がなんか悪い仮面ライダーっぽい(笑)。ちょっとロボットっぽい青銅の雄牛(字幕で。英語だとMinotonらしい)も出てきたり(青銅の雄牛も本来は拷問用具でちょっと違う)、テレパシー(telepathiaみたいな発音?)が使えたり、賢人キャラMelanthiusの家は明らかにマッドサイエンティストの実験室だしなんか当時のSFの流行りを感じる。なんだが、当時同じ年公開のスターウォーズと比較されてしまったようだが、たしかにストーリーも水準の出来ではあるが、昔ながらで全体にゆるく(穴居人とヒヒが話が通じやすいというのはどうかと思われる)、特殊効果も古めかしいし比較されると分が悪いのは否めない。雪の冒険シーンがあるのもまた比較されやすいだろう(まあSWでは1980年の帝国の逆襲のHothになるが)。それはSWがいかに革新的だったかをよく示していることてもある。いすれにしてもやはりキャストや表現のそこかしこに白人中心主義が見られ、それもまた現在では作品の評価としてはマイナス要素だろう。あとHyperboreaが出てくる。