異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。

TH No.83にレビューが掲載されます! あと2020年7月に読んだ本

発売中のTH No.83 『音楽、なんてストレンジな!〜音楽を通して垣間見る文化の前衛、または裏側』で、特集で韓国ロック黎明期を描いたイ・ジン『ギター、ブギー、シャッフル』、特選品レビューで陳楸帆『荒潮』を紹介しました。今回は音楽特集ですよ~♪よろしくお願いします!
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さて読了本は諸般の事情で少なめ。
『死美人』ローレン・ヘンダースン
 90年代に女性主人公のハードボイルドのムーブメント<タルト・ノワール>があったらしく 新潮文庫で数冊出ていてその一つ(4人の作家が仕掛けたようだが、(ホノルル生まれがいるものの)英加で米以外なのがちょっと面白い)。まあまあかな。
アレフ』J.L.ボルヘス
 「不死の人」 〈不死の人々の都〉を探すローマ軍司令官の手記。不死についての形而上学的な論議が目をひくが、冒険・SF小説めいたところがあって、結局読むことや書くことに結びついていくところがボルヘスらしく面白い。
「死人」 そのままミステリ雑誌に載ってもおかしくない作品で、ミステリ好きということがわかる。
神学者たち」 神学、異端についてなかぬか難しい面もあるが論議など興味深い面も多い。
「戦士と囚われの女の物語」数奇な運命を辿った古の兵士と自らの祖母の符号を見つめるボルヘスらしい射程の大きい視座には驚かされる。
「タデオ・イシドロ・クルスの生涯(一八二九ー一八七四)」
宿命についての一編。短いが鮮やか。
「エンマ・ツッツ」これもミステリタッチな作品で復讐劇。
「アステリオーンの家」ミノタウロスのことなのね。幾何学的な迷宮のイメージ。
「もう一つの死」とある人物の死にともないその足跡について各者の記憶に矛盾が生じ、その原因を神学的なレベルで考察する、なんというか超ミステリといった印象の作品。
「ドイツ鎮魂曲」実在のナチス党幹部の手記というスタイルのもの。解説に死刑を待つとあるが、日本語wikiを参照すると死刑になっていない。ほほう。
アヴェロエスの探究」今度はイスラムの学者が題材。なんでも知ってるという感じだな。これまた難しい作品だが、古代ギリシアとの交点を探るなど欧米の視点からは生まれない、"周縁"の知性ならではという感じがした同じく"周縁"から物を見ている人間として勇気づけられる。
「ザーヒル」これまた難しいが、愛する美女の死と硬貨から連関する思索が広がっていく。
「アベンハカン・エル・ボハリ―、おのが迷宮に死す。」ミステリといえるかも?いやメタミステリか。コーンウォールでナイルの王について語り合う、という作品を書くアルゼンチン作家という跳躍感覚がすごいな。
「二人の王と二つの迷宮」迷宮はいかにもボルヘスな題材だが、短い歴史絵巻のような感じは意外と珍しいかも。
「待ち受け」謎めいた男がある仮名を使い、その本人に襲撃されるというこれまたボルヘスらしい作品。
「門口の男」失踪した裁判官の運命が描かれる、といっていいのかな。裁かれるものと裁くものの転倒とか、異教的な側面とかが含まれている。
アレフ」これも愛する者の死が描かれ、詩作のディスカッションや気に入らない人物の詩論を聞かされる苦痛がやや戯画的に描写される中に、やや唐突に無限を覗く扉が開かれるようなこれまた一筋縄ではいかない作品。ウェルズ「水晶の卵」の影響があるとボルヘス自ら明かしており、なるほど。
自己解説としての「エピローグ」、それから巻末の詳しい解説も読む手掛かりを与えてくれる。