異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。(単なる読書系ブログです)

未来少年コナン観た

 NHKで再放送されている名作アニメ「未来少年コナン」、なかなか放送を追うのは難しいので(時間的にも性格的にも)、youtubeにあることに気づき、とりあえず観はじめたら、(いつもの今さらなのだが)さすがの出来に全部観てしまった。
 世代的にある程度は観ていたのだが、断片的でしかなく、トータルの印象はあまりなかった。実は多少少苦手な部分があったことが今回確認されたが、それもこの作品の長所でもあり、作品の受容というのは難しいものだなあとも思った(万人に受けることはそもそも不可能なのね)。
 たとえば、コナンやラナがあまりにピュアな存在であることで、自分にとっては必ずしも感情移入しやすい対象ではなかった。またコナンが一見普通の少年の絵柄なのに実はスーパーヒーローであり、人々のピンチを信じられない能力で打開してしまうことにどうもストーリー展開的についていけなかった。
 しかしこれらはこちらのないものねだりだとわかった(随分と時間がかかってしまったが(苦笑)。大きなポイントは少年を主人公としたアニメであることだ。つまりこれは少年(それも小学生くらい)の夢である。なので、全能感に満ちているのは当然で、それがまずこの作品世界の基本法則なのだ。そうなると主人公は必ず危機を脱するし、当初悪役であっても魅力があったり弱さを抱えた登場人物たち(子供でも伝わるような)は必ず会心し味方になる。苦手としていた要素に、コナンやラナが肉体的に痛い目に合うシーンが多い、ということもあったことにも今回気づいたが、これもそうした世界であることを考えれば納得がいく。(現代においてそうしたシーンがそのまま表現される是非はともかくも)つらいシーンがあってもいつかハッピーエンドが待っていると思えば、むしろそれはストーリーのいい意味での駆動になる。実際、そうした苦難の後にコナンは何度もエモーショナルなパワーで状況を打開していくのである。
 前記のようにアニメであることも大きい。実写ではないので、ありえない(ある意味アニメではお決まりの)アクションシーンが数多く登場する。というよりもそここそが見せ場であるといってもいい。今や一般常識ともいえる宮崎駿流のコミカルでダイナミックなキャラクターのアクションシーンが随所に現れる。もちろんレトロ感覚にあふれた飛行メカの魅力や先進性も特筆ものだ。
 またそうしたアニメーションの動きの楽しさだけでは作品は成り立たない。ストーリーや設定も非常に練られていて、非常に起伏に富み視聴者を飽きさせない(原作は未読なので比較はできないがより陰鬱な作品らしい)。本当に完成度が高い。
 これも既に指摘されていることだが、ピュア過ぎる主人公二人の周囲のキャラクターの配置が絶妙で、むしろそちらに感情移入させるように出来ているのも巧い。あと低年齢層アニメなのに実は音楽は割とジャズ~ファンク系というか子供子供していないのもよく考えられている。音楽も素晴らしいと思う。
 全体の印象として宮崎駿はアニメの特性というものをよく知っているなあという感じだ。アニメの持つ力を、細かく整合性をつける部分と大胆にすべき部分を知り尽くして表現しているとあらためて感じる作品である。