異色もん。

ドラえもん、もやしもん、くまもんに続く第四のもん。いつか鎌倉の老人になる日まで。

2020年2月に読んだ本

『息吹』テッド・チャン
 前代未聞の<呼吸>SFのタイトル作をはじめ、期待通り傑作揃いだった。恒例の森下一仁さんのSFガイド、昨年ベストに挙げた。(24時まで投票できますよ!)
『病短編小説集』
 「病」をテーマにした小説の歴史を短編で俯瞰できる丁寧なつくりのアンソロジー。「病」がいかに社会との関わりの中で規定されているのかが印象に残る。「黄色い壁紙」は別格として、「サナトリウム」「十九号室」が面白かった。
冬至草』石黒達昌
 これまで読んだ『新化』『人喰い病』と相通じる秀逸な科学的アイディアに加え、より奥行きがある作品が並び、素晴らしかった。画期的な医療技術が必ずしも世界を変えないところが著者らしい「希望ホヤ」、北海道という舞台が生かされたタイトル作、幻想風味の強い「月の・・・・」、あっと驚くSFミステリ「デ・ムーア事件」、死と病を見つめたシリアスな医療小説「目を閉じるまでの短い間」、研究不正というテーマを斬新な視点で描いた「アブサルティに関する評伝」とどれも傑作。もっと早く読んでおけばよかったな。
『コンパス・ローズ』アーシュラ・K・ル=グウィン
 著者らしい粒ぞろいの短編集。基本的に駄作のない作家だという印象がより強まった。秀逸なアイディアの「アカシヤの種子に残された文章の書き手」「時間の欠乏という問題の解決法のいくつか」、性差別の残る現代日本そのままで背筋が寒くなるディストピア小説「ニュー・アトランティス」、作者らしくスタトレをパロっていて笑える「船内通話器」など素晴らしい作品が並ぶが、情景描写や普通小説「マルファ郡」の心理描写もまたいいんだよな。そして最後に南極探検を扱った「スール」を持ってくることによって、タイトルが、抑圧された女性たちの羅針図となろうとしていることがわかる。さすがである。